
告ってフラレて話せなくなるなら
告白なんかしないよ
友達のままでいいよ
■読切り3編を収録。それでは表題作をご紹介しましょう。
大学に入り、憧れの一人暮らしを始めた江梨子。しかしその部屋・その生活は、理想のオシャレな毎日とは程遠い、しょっぱいものだった。早く引っ越そう!なんて思っていたある日、前の住人宛と思しき手紙が、郵便受けに入っているのを発見する。どうやらそれは、前の住人・永瀬将彦の遠恋していた恋人からのものらしい。そして部屋では、同じ差出人からの、彼宛の手紙を大量に発見。その手紙の数々を読んでいるうちに、江梨子はだんだんと「永瀬」の事が気になりだして…!?
アルコ先生の短編集だぞー!ということで、こちらは2007年の作品になります。「好き」という気持ちをギュッと詰め込んだ作品が、3編収録されています。まずは先に紹介をした表題作の「Loveletter from」。ある日突然幼なじみの事を好きだと自覚してしまう女の子を描いた「ジオラマ」。そして、それぞれ異なった恋愛状況にいる3人の主人公たちが、クリスマスの夜にちょっとした“前進”を見せる「月は夢を見るか」。どれも恋愛をテーマとした作品で、決して甘々ではないものの、乙女たちの純だけど決して簡単じゃない心を、時に幻想的に、時にかわいらしく描き出していきます。どれもガチンコ勝負のストーリーで、ネタ的な要素は少なめとなっています。まぁなんとなく表紙見ればそういった感じは伝わると思いますが。

特にお気に入りだったのは、2話目。恋心に気づき、慌てふためくヒロインの様子がとてもかわいらしかったです。
3話目は3人の思いと情景が交錯するような、少々変わった作りの作品となっています。こういう描き方もできるのかと驚いたのですが、そのぶんモノローグは少なめだったような。前回「終電車」のレビューの時に書いたかと思うのですが、アルコ先生の作品の魅力の一つが、そのモノローグの使い方。長ったらしく詩的なモノローグでないのに、妙に心に残るんですよね。わかりやすい言葉たちが、細切れにされて各所に配置されているのですが、難しい形容の仕方をしないからこそそれが逆にリアルさを出しているようにも見えますし、その配置の仕方が、同時に浮き立った少女達の心理状態を表しているように見せているのかな、と。実際恋に揺れる心なんて、そんなに整然としているものではないと思うんですよね。
1話目はなんともシネマチックなお話で、そういえば岩井俊二の「ラブレター」とかもこんな感じだったっけな、なんて思い出しつつ物語を楽しむことができました…。それに対し2話目は身近なラインを攻めたもので、非常にウブでかわいらしく、同時に甘い物語に。また3話目は、3人のヒロインをクロスさせるという特殊な構成と、どれも先生の持ち味を発揮しつつも、それぞれ違った形にしてきており、終始新鮮な気持ちで楽しむことができます。話の長さもそれなりに確保されているので、物語にしっかり波も作られてますし、正直これをお薦めしない要素が見つからない。これはお買い得だと思います。
【男性へのガイド】
→恋愛一辺倒なので、そういうのに興味がない人はダメかもしれませんが、登場する男の子は結構隙のあるタイプが多いので、男性にも親しみやすくあるかもしれません。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→面白かったです。アルコ先生の短編はスゴいと改めて認識。いや、長編も面白いのだけど、そのギャップがまた素敵です。
■作者他作品レビュー
アルコ「超立!!桃の木高校」
作品DATA
■著者:アルコ
■出版社:集英社
■レーベル:マーガレットコミックス
■掲載誌:別冊マーガレット
■全1巻
■価格:390円+税
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