
大丈夫
いつか ふりかえっても
痛くない 想い出に変わる
忘れられる
■中3の受験生・亜希は、同じバスケ部仲間の間瀬をずっと想っている。好きで好きで、ずっと隣にいた3年間。これから先も、ずっと間瀬と一緒にいたい。いつか伝えたい、けれど伝える勇気がない…。そんなタイミングを逸したまま迎えた、最後の冬、亜希は違う中学の男子・光一から告白される。勇気を出して好きだと伝えてもらったことが嬉しくて、一度だけ彼とデートをすることになったのだけど…!?
渡辺あゆ先生が別冊フレンドで連載していた作品で、先生にとっては初の複数巻となったタイトル。渡辺先生を一気にレギュラー定着させた作品と言えるかもしれません。内容は、バスケ部を舞台に、二人の男の子の間で揺れる女の子の気持ちを描いた恋物語。中学の時からずっと、同じ部活の間瀬に想いを寄せるヒロインの亜希は、想いを伝えることができないまま悩んでいたある日、違う中学のバスケ部でエースの光一から告白をされます。勇気を持って素直に思いを伝えてくれたことが嬉しかった彼女は、彼の頼み通り1度だけ会うことを了承。休日にデートに出かけます。最初はお互い緊張していたものの、それなりに会話もでき、気がつけばお別れの時間…というところで、亜希は大切にしている髪ゴム(間瀬からのプレゼント)がないことに気がつきます。そんな彼女の様子を見て、懸命に髪ゴムを探す光一でしたが、見つけたところにトラックの積荷が落ちてきて下敷きに。入院を余儀なくされてしまいます。後日、そのケガの影響でスポーツ推薦の話がつぶれてしまったことを聞いた亜希は、罪悪感で一杯に。その間に間瀬から告白を受けるも、後ろめたい気持ちがある彼女は、その告白を断ってしまいます。そして迎えた高校の入学式、そこには亜希と間瀬、そして光一の姿があり…という流れ。

稀代のいいヤツ・光一くん。いや、もっと色々怒ってもいいと思うのよ?ヒロインよりもよっぽどしんどい目にあってるんですから。
罪悪感から、ずっと想ってきた相手ではなく、告白された相手の気持ちを優先して行動。しかしそう簡単に思いを断ち切れるわけもなく…というストーリーなのですが、こうして自分の気持ちを騙しつつ、状況判断により頭で考えたこと優先で行動するというのは、結構ありがち。こと人間関係においては、やけに責任を負いたがる時期じゃないですか、この頃って。ましてやケガさせて進路を断ってしまっていますからね、なかなかヘビーな重りでございます。なんとなくこれだけ見ると、ドロドロしたような暗いお話なのかな、と思われるかもしれませんが、そこまで重苦しい雰囲気はありません。はじまりはこんなですが、基本的に登場人物たちはみな全力でもがき、青春汁を振り絞りまくっているので、見ためは思いのほか爽やか。バスケ部という運動部要素も、その重苦しさ解消に一役買っているのかもしれません。
最初の枷は重いものの、展開されるストーリーは「10代の恋の物語」という説明文が示す通り、大げさな方向には進んで行きません。描かれることも、ヒロインが自分の気持ちに正直になれるのか、という1点のみですので、コンパクトにまとまって読みやすくなっています。読み手によっては、ちょっとまとまりすぎじゃない?と思う方もいるかもしれませんが、そうなった所以は光一が真面目すぎたからかなぁ、と。もっと歪んだ性格だったらもうひと盛り上がりしたかもしれません。ただそれだと爽やかでないので、これでいいんじゃないでしょうか。スタンダードに切なく純粋な心を描き出した、青春恋愛ものの良作だと思います。
【男性へのガイド】
→女性向けではありますが、男二人の気持ちは結構理解できる部分があるかも。スタンダードな恋愛ものを読みたいという方は。
【私的お薦め度:☆☆☆ 】
→コンパクトにまとまった読みやすい作品。絵柄はちょいと安定しませんが、それもまたご愛嬌。
■作者他作品レビュー
*新作レビュー*渡辺あゆ「L♥DK」
作品DATA
■著者:渡辺あゆ
■出版社:講談社
■レーベル:KC別フレ
■掲載誌:別冊フレンド
■全3巻
■価格:400円+税
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