このエントリーをはてなブックマークに追加
Tag [名作ライブラリ] 2010.02.17
07179095.jpg渡辺あゆ「キミがスキ」(1)


大丈夫
いつか ふりかえっても
痛くない 想い出に変わる
忘れられる



■中3の受験生・亜希は、同じバスケ部仲間の間瀬をずっと想っている。好きで好きで、ずっと隣にいた3年間。これから先も、ずっと間瀬と一緒にいたい。いつか伝えたい、けれど伝える勇気がない…。そんなタイミングを逸したまま迎えた、最後の冬、亜希は違う中学の男子・光一から告白される。勇気を出して好きだと伝えてもらったことが嬉しくて、一度だけ彼とデートをすることになったのだけど…!?

 渡辺あゆ先生が別冊フレンドで連載していた作品で、先生にとっては初の複数巻となったタイトル。渡辺先生を一気にレギュラー定着させた作品と言えるかもしれません。内容は、バスケ部を舞台に、二人の男の子の間で揺れる女の子の気持ちを描いた恋物語。中学の時からずっと、同じ部活の間瀬に想いを寄せるヒロインの亜希は、想いを伝えることができないまま悩んでいたある日、違う中学のバスケ部でエースの光一から告白をされます。勇気を持って素直に思いを伝えてくれたことが嬉しかった彼女は、彼の頼み通り1度だけ会うことを了承。休日にデートに出かけます。最初はお互い緊張していたものの、それなりに会話もでき、気がつけばお別れの時間…というところで、亜希は大切にしている髪ゴム(間瀬からのプレゼント)がないことに気がつきます。そんな彼女の様子を見て、懸命に髪ゴムを探す光一でしたが、見つけたところにトラックの積荷が落ちてきて下敷きに。入院を余儀なくされてしまいます。後日、そのケガの影響でスポーツ推薦の話がつぶれてしまったことを聞いた亜希は、罪悪感で一杯に。その間に間瀬から告白を受けるも、後ろめたい気持ちがある彼女は、その告白を断ってしまいます。そして迎えた高校の入学式、そこには亜希と間瀬、そして光一の姿があり…という流れ。


キミがスキ
稀代のいいヤツ・光一くん。いや、もっと色々怒ってもいいと思うのよ?ヒロインよりもよっぽどしんどい目にあってるんですから。


 罪悪感から、ずっと想ってきた相手ではなく、告白された相手の気持ちを優先して行動。しかしそう簡単に思いを断ち切れるわけもなく…というストーリーなのですが、こうして自分の気持ちを騙しつつ、状況判断により頭で考えたこと優先で行動するというのは、結構ありがち。こと人間関係においては、やけに責任を負いたがる時期じゃないですか、この頃って。ましてやケガさせて進路を断ってしまっていますからね、なかなかヘビーな重りでございます。なんとなくこれだけ見ると、ドロドロしたような暗いお話なのかな、と思われるかもしれませんが、そこまで重苦しい雰囲気はありません。はじまりはこんなですが、基本的に登場人物たちはみな全力でもがき、青春汁を振り絞りまくっているので、見ためは思いのほか爽やか。バスケ部という運動部要素も、その重苦しさ解消に一役買っているのかもしれません。
 
 最初の枷は重いものの、展開されるストーリーは「10代の恋の物語」という説明文が示す通り、大げさな方向には進んで行きません。描かれることも、ヒロインが自分の気持ちに正直になれるのか、という1点のみですので、コンパクトにまとまって読みやすくなっています。読み手によっては、ちょっとまとまりすぎじゃない?と思う方もいるかもしれませんが、そうなった所以は光一が真面目すぎたからかなぁ、と。もっと歪んだ性格だったらもうひと盛り上がりしたかもしれません。ただそれだと爽やかでないので、これでいいんじゃないでしょうか。スタンダードに切なく純粋な心を描き出した、青春恋愛ものの良作だと思います。


【男性へのガイド】
→女性向けではありますが、男二人の気持ちは結構理解できる部分があるかも。スタンダードな恋愛ものを読みたいという方は。
【私的お薦め度:☆☆☆  】
→コンパクトにまとまった読みやすい作品。絵柄はちょいと安定しませんが、それもまたご愛嬌。


■作者他作品レビュー
*新作レビュー*渡辺あゆ「L♥DK」


作品DATA
■著者:渡辺あゆ
■出版社:講談社
■レーベル:KC別フレ
■掲載誌:別冊フレンド
■全3巻
■価格:400円+税

■購入する→Amazonbk1

カテゴリ「別冊フレンド」コメント (0)トラックバック(0)TOP▲
コメント


管理者にだけ表示を許可する

この記事にトラックバック
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
タグカテゴリ
月別アーカイブ
リンク
プロフィール

Author:いづき
20代男、Macユーザー。野球はヤクルト、NBAはマジックが好きです。

文章のご依頼など、大事なお話は下記メールアドレスへお願い致します。


■Twitter
@k_iduki

■Mail
k.iduki1791@gmail.com
※クリックでメール作成
RSSフィード
▽最新記事のRSSを購読

a_m.jpg
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

Power Push
2012年オススメはコチラ→2012年オススメ作品集


かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
東村アキコ先生が贈る、美大受験期の自伝漫画。東村アキコ作品らしい勢いの良さだけでなく、急転してのシリアスな締めなど、一冊に笑いと感動が詰め込まれた贅沢な作品。




王国の子
びっけ「王国の子」(1)
レビュー
稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描く“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリー。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある一作。




シリウスと繭
小森羊仔「シリウスと繭」(1)
レビュー
2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




トーチソング・エコロジー
いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(1)
レビュー
売れない役者が、役者仲間を亡くしたと思ったら、お次は隣に高校の同級生が越してきて、さらには何やら自分にしか見えない子どもの姿が見えるように…。どこかゆるさのある不思議なテイストのお話なのですが、いくえみ作品で実績のある「ある者の死と、残された者の感情」を描き出す類いの作品ということで、この先きっと面白くなってくることでしょう。




BEARBEAR
池ジュン子「BEAR BEAR」(1)
レビュー
高校生には到底見えないロリっ子ヒロインが好きになったのは、遊園地のクマの着ぐるみ。着ぐるみの中身は同じ学校の子で、結局付き合うことになるものの、その後も変わらず相手はクマの被り物をしているという、シュールな光景が繰り広げられます。なんとも奇妙な相手役、かつなんともかわいらしいヒロインの、初々しいやりとりに終始ニヤニヤ。




かみのすまうところ。
有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。