
ゆったり着心地のいいワンピース
大人はリネン
子供はガーゼで
おそろいで作ろうかな
■2巻発売です。
売り出し中のクラフト作家・川乃は、大好きな手芸の仕事にできて幸せな毎日。今まではバイトをしながらの生活だったが、ネットショップも軌道に乗ってきて、ようやくそちらに専念できるようになった。ところが突然、夫と別居した姉が子連れで実家にも戻ってくる。姉は一度決めたらなかなか曲げない、頑固な性格の持ち主で、しばらくはこちらに居座りそうで、早速就職活動を始めた。その間、川乃は家にいるからと姪のここみの面倒を押しつけられる。平穏だったのが一変、ここみに振り回される毎日に…。その上フラれた元カレに再会してしまい…!?
1年以上ぶりの2巻発売ですよー!待ったよ、待った!ということで、「リネンとガーゼ」のご紹介です。ヒロインは、売り出し中のクラフト作家・川乃。大好きな手芸をそのまま仕事にした口で、ネットショップで自分の作品を売りお金を稼いでいます。その仕事も軌道に乗ってきて、今までしていたバイトもこのたび辞め、仕事に専念できる環境を整えました。ところがその矢先、夫と別個した姉が子供を連れて実家に戻ってきます。そのまま就職活動を始めた姉に代わり、川乃は姪のここみの面倒をみることに。元々自分の意見を言えない大人しい性格の彼女は、わんぱくなここみにすら言い負け振り回される毎日。それまでの平穏な生活はあっという間に消え去り、慌ただしい毎日を送ることになります。

優しさ満載。だけどそれだけではない。甘すぎず、苦すぎず。そのバランス感が心地よい。
歳下の親戚の面倒を見ることで、生活から何からすべてが一変するというのは、例えば「flat」(→レビュー)などもそうなのですが、日常風景を描きつつもその中に確実に変化が見てとれるところが素敵。なんてこの作品は、日常の平穏みたいな描写はごくごく一部で、終始振り回されながらの展開なのですが(笑)この作品で描こうとしていることは、今まで自分の殻に閉じこもりがちだったヒロインを、元気一杯の姪が引っぱりだし新たな世界を見せると言うもの。実家に暮らし、自分ですべてこなす手芸を仕事とし、店は主としてネットショップ。その年の割に、川乃の住む世界はあまりに狭いです。元々大人しい性格で、自分の言いたいことを伝えられない性格の持ち主である彼女にとって、その環境はまさにうってつけでしょうし、十分に幸せではあったはずです。しかしいつまでもそれで済むわけではなく、ときにその性格が災いして、ツライ想いをすることもしばしば。彼女の場合心の痼りとして残っているのは、かつてのバイト先にて想いのたけをすべて伝えられずに終わってしまった、元カレの存在。何事も自分のやりたいこと、正しいと思ったことに向かって全力疾走のここみに引っぱられるように、彼女も伝えることの大切さと、思いのほかそのハードルが低いことを学んでいきます。そして導かれるように、元カレと再会。そこから先はヒロインの頑張り次第になるわけですが、後悔の残る二人を再び引き合わせたここみは、なんとなく天使のように映ったり。
手を焼かせ、腹を立ててしまうこともあるけれど、ときに思いもかけない気遣いや思いやりを見せてくれる子供というのは、本当に可愛いもの。普段手を焼かせるからこそ、報われた際の喜びというのは大きくなるのかもしれません。とはいえ川乃とここみは姉妹でも親子でもなく、あくまで姪と叔母。適度な距離感を保った中で、その優しい関係性の構築を見せてくれるため、甘さにうんざりということがありません。個人的にはそれがありがたい。また姪との関係に終始するのではなく、元カレとの関係も平行軸として描かれるため、あくまで“ヒロインの中での物語”であるのがポイント。全体で関係性の良さを感受してお終いとはならないあたりが、媚びていない感じがして良いですね。その上で、この作品を良いと思うかどうかは、煮え切らないヒロインにどれだけ感情移入できるかなのかもしれません。私は川乃が好きですし、少なからず「あるある」要素もあったりで、楽しく読めています。
【男性へのガイド】
→あっさりめのストーリーがお好きな方は。煮え切らないヒロインがムカつくとか、元カレなんやねんとか思うこともあるかもしれませんが、キツい味付けはされていないので基本的には読みやすいかと。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→これも雰囲気で押すタイプの作品と言えるのだろうか。個人的には大好きな一作でございます。あ、1巻は実質総ページの半分しか収録されていないので、ご注意を。ただし雰囲気を感じとるには十分だとはおもいますけど。
作品DATA
■著者:あいざわ遙
■出版社:集英社
■レーベル:りぼんマスコットコミックスcookie
■掲載誌:cookie(平成19年9月号~連載中)
■既刊2巻
■価格:各400円+税
■購入する→Amazon