
「なんか浦賀に異国の黒い船が来てるってー
ちょっと見に行ってくるわー」
「ちょ 上さま!!!ノリ軽っ!!」
■20xx年、ここは四百年近く鎖国を続ける国ニッポン。しかしそんな国にも、ついに時代の波が押し寄せていた。浦賀にペリーが黒船を引き連れてやってきた!かわいらしい異国のお嬢さん・ペリーに、のんびり上さまは早くも開国の意思!?しかし側近の琴乃がそれを意地でも阻止。脱藩浪人…ではなく家出少女の坂本龍馬、鬼のように怖い新撰組副長の土方さん、ペリーの妹ハリスに巨乳で訛りがキュートな西郷さん…。ありそでなかった?幕末4コマ、はじまりはじまりー。
1巻完結の4コマなんですが、表紙からこのインパクト。「あれ、これきららじゃないの?」と思わず背表紙を確認。確かにきららじゃなくまんがタイムコミックスでした。私はそこまで芳文社4コマに詳しいわけではないので、そのきららとそれ以外を分ける明確な基準はわからないのですが、なるほど、本編を読むと確かにきららっぽくない。というのもメインポジションにいるひとりは男性で、必ずしも萌えを訴えかけるような作りにはなっていないという。そのメインキャラというのが、上さま。お菓子やゲームが大好きで、基本的には能天気。そんな彼が、側近の琴乃や、幕末を彩った偉人たち(多くが女子化)と掛け合いを見せていくという展開が多く、その絡み方はある意味オールドスタイル。わかりやすいネタが多いですね。

ペリーとハリスが姉妹という設定。基本的になんでもありの自由な世界です。ここから考えられるのは、「ハリス」も「ペリー」もファーストネームだということ。でもあまり違和感ないから不思議。これがもし「デイヴィッドソン」とかだったらこうはいかなかったんだろうなぁ。
舞台は江戸ではあるのですが、時代設定が20XX年となっているように、江戸の町に現代技術を落とし込んだような世界となっています。銀魂とか、そういったものを想像していただければ。ストーリーは、ペリーの開国要求と、それに絡む「開国だ!鎖国だ!」という争いをかわいらしいネタで描いていくというものなのですが、まぁあくまでそれはおまけみたいなもの。要は女子化したキャラたちを好き放題に動かしたいというもので、それに合わせるように、描かれる内容は史実とはだいぶ異なったものとなっています。例えばハリスがペリーの妹だったとか。ちなみに女子化されているキャラは、側近の琴乃(正体は最後にわかります)、坂本龍馬、ペリー、ハリス、西郷隆盛、土方歳三、勝海舟…。個人的にはペリーが好き。というか一番生き生きしていたのが彼女のように思います。と思ったらあとがきに、この作品はペリーの女子化ありきだったようですね。ならば納得。
全部が全部女子化なら、ターゲットが明確でわかりやすいのですが、上さまをはじめ、沖田総司や木戸孝允、近藤勇などは普通に男として登場。物語自体は上さまを軸として回っている印象が強く、彼に関してはいいとしても(というかいなかったら話し回らない)、他のキャラに関して女子化を徹底しない意図がちょっとよくわからなかったな、と。いや、別にだからなんだというわけではないですが、ターゲットはどこなのだろうという。表紙や帯から受ける印象と、実際に中身を読んでのギャップに驚く読者も少なからずいそうで。そこはレーベルで判断しろということなのでしょうが、果たしてそれで判断できる人がどれだけいるのか。そこだけがちょいと釈然としないのでした。
【男性へのガイド】
→萌えではないのよ、萌えでは。そこだけはご注意。
【私的お薦め度:☆☆ 】
→女の子はみんなカワイイですけど、上さまメインである以上登場シーンは少し抑えられてしまうわけで。ちょっとバランス悪かった気が。
作品DATA
■著者:みずなともみ
■出版社:芳文社
■レーベル:MANGA TIME COMICS
■掲載誌:まんがタイムジャンボ(平成20年6月号~平成21年2月号)
■全1巻
■価格:619円+税
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