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Tag [新作レビュー] 2010.02.21
1102874206.jpg古都和子「会長さんちの子ねこ」


空気が
和らいでいくのを
感じるんです



■成績優秀で有能な生徒会長・速水零一郎。常に冷静、そして厳しい性格の持ち主であるため、その敏腕っぷりには一目置かれているものの、周りの生徒たちからは怖がられ、孤立気味。しかしそんな彼に、突然変化が!?その原因は、別居中の母が持ってきた子猫。預かってくれとそのまま押しつけられたのだが、どう世話をしていいのかわからない。困り果てた彼は、生徒会役員で猫好きの白石さんに助けを求めるが…!?

 猫を買うことになったクールな生徒会長と、それをサポートする生徒会役員の女の子の、猫ミックスなラブコメディです。主人公は、敏腕生徒会長の速水零一郎。仕事は常に完璧で、その実績は素晴らしいけれど、あまりに厳しすぎるために誰からも畏れられる存在。故にいつも孤立気味。そんな彼にある日、母親から思わぬプレゼントが押しつけられます。それが、生まれて間もない小さな子猫。めんどうを見てくれと母に言われたものの、零一郎はどうしたらよいかわかりません。世話するどころか、触るのすらおっかなびっくり。挙げ句猫が体調を崩す始末で、困り果てた所に、生徒会役員で猫好きの女の子・白石さんが登場。恥ずかしい気持ちを抑えながら、彼女に助けを求めるのでした。


会長さんちの子猫
爽やか。会長がだんだんと素直になっていく様子が、手に取るようにわかります。ある意味これもアニマルセラピーみたいなものなのかもしれません。


 そこから徐々に猫と打ち解け、零一郎自身の性格も変わっていきます。最初は鉄面皮のようだったのに、いつしか笑顔も出るように。そして白石さんとの距離も、徐々に縮まっていきます。ラブコメなので、最終的には恋愛方面に傾いていくのですが、その歩みは非常にゆっくり。どちらも鈍いので、なかなかお互いの関係は進展しません。とはいえそれでこそという部分もあるわけで、そういった話が好きな方はむしろ嬉しい展開なのかもしれないですね。序盤は猫まっしぐらで、その後物語が進むに連れて猫から人間関係、さらには恋愛にシフトチェンジしていくあたりはさすが。コメディなので、笑いは忘れず、常にテンション高めです。
 
 全3話なのですが、2話目3話目両方でライバルが登場。短い話の割にゲスト多めってのは、ちょっと舞台を活かしきれていない感もあるのですが、メイン二人だけだと遅々として進まないから仕方ないのか。確かに生徒会を活かそうとして、変人を生徒会内に配置したら、生徒会長の個性が弱まってしまうし。ちなみにヒロインの白石さんかわいすぎです。「LOVE SO LIFE」(→レビュー)の詩歌みたいな感じでしょうか。優しさ溢れるその性格が、たまりません。男子をメインに据えると、少女漫画でもこういった感情移入するにはやや敷居の高いような女の子をヒロインに据えることができるからいいですね。
 

【男性へのガイド】
→こういう動物愛でる系は、女性向け作品特有という感じがするのですがどうでしょう。確かに可愛いんですが、その状況をファンシーに飾られるとあああああってなる。それはさておき、コメディベースでテンポも良いので、読みやすいお話だとは思います。ただし恋愛方面はやや薄味。
【私的お薦め度:☆☆☆  】
→可愛いけど、ネタ系の割にややインパクトに欠ける印象も。猫好きもしくは、猫好きの人が好きという方は。


作品DATA
■著者:古都和子
■出版社:白泉社
■レーベル:花とゆめCOMICS
■掲載誌:ザ花とゆめ
■全1巻
■価格:400円+税

■購入する→Amazonbk1

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