
何でこの人の手は
声は
こんなに心地良いのだろう
■箱入りお嬢様の野々宮花凛は極度の男性嫌い。そんな花凛が事故に遭い、気がついたらそこは男子校・世戸高校の寮!?しかもなぜか体が男の子に!?ワケも分からず取り乱す花凛の前に現れたのは、死神と名乗るひとりの男。彼の言うことには、近くにいた男の子・柚原翔太と花凛の寿命が近づいていたので、これはよしと一緒に事故に遭わせて殺してしまった。けれどそれは勘違いで、慌ててふたりの魂を体に戻したら、戻す体を間違ってしまったとのこと。戻るまでのしばらくの間、花凛は男として男子校で過ごすことになり…男嫌いの花凛は絶体絶命!!
入れ替わりものラブコメディでございます。ヒロインは、箱入りお嬢様で有名女子高に通う、野々宮花凛。極度の男嫌いで、集団を見た日には鳥肌が。そんなある日、風に飛ばされたハンカチを拾おうとした際道路に飛び出してしまい、同じくハンカチを拾おうとした男の子と共にトラックに轢かれてしまいます。気がついたらそこは病院…ではなく、なぜか男子寮の一室。しかも体が自分のものではなく、男の子のものになっているではありませんか。事態を飲み込めずパニック状態の花凛と、同室の男子・久我悠斗の前に現れたのは、死神と名乗る男。彼曰く、事故に巻き込んだふたりの寿命を勘違いして殺してしまったので、慌てて元に戻したら、戻す体を取り違えてしまったとのこと。しかも戻すまでには時間がかかるので、それまで入れ替わった男の子・柚原翔太として過ごせと言うのでした。ただでさえ男が苦手な花凛が、男子校で、男子寮で、しかも男子として過ごすなんて、苦行以外の何ものでもありません。しかし逃げようもない…花凛は発狂しそうになりつつも、事情を知る同室の悠斗のサポートを受けながら、男子校での男子ライフをスタートさせたのでした。

戸惑う花凛に対して、悠斗も柚原も簡単に適応。むしろ楽しんでいる感すらある。
最近同じ出版社のLaLaにて、時計野はり先生の「逆転ハニー」(→レビュー)という入れ替わりもの作品が連載されていますが、なんか流れが来ているような気も。入れ替わりものっていつの時代も一定の需要があるんですかね。しかし単純な物語にしてしまうと、使い古しになってしまうので、何かしらの工夫をして他作品との差異化を図る必要性が出てきます。この作品におけるそれは、入れ替わった者どうしでの恋愛が展開されるわけではなく、入れ替わってしまった彼女をサポートする男子との恋愛模様を描くというところにあります。さりげなくサポートしてくれる悠斗に、徐々に思いを募らせていく花凛。その状況はまんまBLなのですが、中身が女の子だとわかっているとBL作品よりも圧倒的に読みやすいから不思議。中身が女子とはいえ、このようなBL的描写が易々と描かれているのは、花ゆめという土壌もかなり影響しているような気がします。
もともと読み切り用に描かれた作品だと思われるので、1話目で体は元に戻るのですが、その後なんやかんやあって戻ったりまた入れ替わったりを繰り返します。そのたび花凛は男子校生活を送るわけですが、だんだんと男子校に適応していく様子が面白いです。また花凛の体に入ってしまった柚原くんが、かなりのお調子者ということもあり、ヒロインの慌てっぷりと相まってかなりハイテンションにテンポ良く話が展開されます。イベント自体にはこれといった特徴はないのですが、それでもノリとテンポの良さで乗り切ってしまうだけの勢いがあり、コメディとしては結構優秀な気が。
ただ1話完結型でコメディ重視になるぶん、トキメキは控えめになってしまった印象。また花凛と悠斗の関係を重視して描くので仕方ないことなのですが、入れ替わったもう一方の柚原翔太のエピソードがあまり描かれていなかったのが個人的には残念。かなり動かしやすそうなキャラだったと思うので、そこで一つ旨味を失ってしまったような印象があります。連載化などでそこまで描く余裕があればまた違ったのかもしれませんね。もし続きがあるようなら、是非読んでみたいですが、果たしてどうなのでしょう。ラストはいくらでも続編出せそうな切り方だったので、白泉社お得意のパターンで来てくれれば…。
【男性へのガイド】
→BL的なエッセンスが決定的にダメだというのでなければ、大丈夫かと。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→入れ替わりだけど、入れ替わった者同士での恋愛展開にしなかった所が素敵。テンポもよく、非常に読みやすかったです。細部までみると、粗い部分はあるのですが、まさかの連載決定による挽回に期待しつつ。
作品DATA
■著者:岡田ハルキ
■出版社:白泉社
■レーベル:花とゆめCOMICS
■掲載誌:花とゆめ(平成21年9号,14号,22号)ザ花とゆめ(平成21年10/1号)
■全1巻
■価格:400円+税
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