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Tag [続刊レビュー] 2010.02.24
作品紹介はこちら→*新作レビュー*モリエサトシ「ラブシック」
2巻レビュー→物語の進む先は?《続刊レビュー》「ラブシック」2巻
関連作品レビュー→*新作レビュー*モリエサトシ「白磁」



1102874203.jpgモリエサトシ「ラブシック」(3)


…そうか
復讐が終わっても
こいつらは
いてくれるんだな



■3巻発売、完結しました。
 父の仇・理事長の狙いが自分の血筋にあると知った色。王司財閥の御曹司・ハルは、色に自分を利用しろと告げる。しかし色は、仄かに芽生えはじめたハルへの想いと、復讐の間で揺れ始め、どちらに転ぶこともでずにいた。それでも4人のサポートもあり、着々と進行する復讐劇。ついにこの劇も終幕かという中、突如として現れたのは、ハルの胸の傷を作ったハルの母親。彼女の登場により、色たちの状況は…!?


~予定通りだった?~
 完結ですー。もうちょっと続くと思ってたんですが、どうしたんでしょうか。ラストにかけて若干かけ足っぽかったことからも、もう少し長めに続ける予定だったのかなぁ、なんて勘ぐってみたり。しかし回収すべきテーマはすべて回収したという感じ。しっかりと作品をまとめあげてきています。


~父の筋書き通り~
 まず大筋として描かれていたのは、色の復讐劇。3巻ではその復讐劇に加え、その裏に隠されたとある真実が明らかになります。それは色の復讐劇の動力源ともなっている、彼女の父親の存在。実は色の父は、色が復讐に生きることを予想していたようです。というか、そう動くように仕向けていた。色の父は、自分の死を目前にして生きる気力をすべて失ってしまいそうな彼女に、復讐劇という生きる理由を与えたのでした。


~だから父の筋書き通りで…~
 確かにそれによって、色は以降復讐を果たすために、健かに成長してきました。しかし私は、どうしてもこの父のやり方が気に入らないのでございますよ。だって、自分の娘を復讐のみに生きさせるなんて、あまりに残酷だと思いませんか?裏切りから父の死という状況を見て、色が生きる気力を失っていたのは明らかですし、最悪自ら命を断つという末路もありえなくはありません。そうなった時に、本当に彼には復讐という選択肢しか残されていなかったのか。彼の狙った通り、色は彼が彼女以外に救うべき存在である4人と出会い、復讐劇を繰り広げ、やがて強い絆を育むようになります。そしてオマケ的に、自分を陥れた相手に復讐も果たすことができた。


~だから父の筋書きとかこれありえるんですか?~
 すべてが完璧すぎるんです、父親から見たときに。最終的なゴールは、彼女が4人と出会い、新たに生きる目的を見出すこと。そう考えると、復讐の成功なんてオマケみたいなものです。しかし復讐を果たさなければ、あの理事長のことですから彼女に平穏はない。だとすると、やっぱりすべてを完璧に回収しないと彼の望む理想の世界は実現しないわけで。本当にそれを狙ったのだとしたら、ギャンブラーすぎて驚いてしまいます。そこまで用意できるんだったら、他にもっと頭を使ってローリスクを選択するのが筋なんじゃ。だって自分の娘ですよ?誰だって安全で安心な道を通ってもらいたいじゃないですか。いや、別に全てが一件落着してるので文句とか言う余地なんてないんですが、ちょっと美味しいところ持ってきすぎなお父さんが少し羨ましかったのです。だってすべては彼の手のひらの上だったんですから。最後に4人が、父親に「さよなら」と言い踏ん切りをつけるシーンにて、「おお、よく親父を捨て去ってやった、ざまぁ」なんて思いつつも、結局それすら彼のシナリオ通りだということに気づき思わず机を叩きましたよ。


~完全解決ではない~
 ハーレム状態で、しかも復讐劇を果たしたということから、色視点だととっても美味しい状況ではあるのですが、爽やかさはあまりないですね。というのも、それぞれに影をもちすぎ、そして皆欲望がにじみ出ていたため。このドロドロ感を最後まで維持しつつ、物語として完結させたのは、個人的に嬉しかったです。個々人の中にある問題はそれぞれ根深いものですから、そう簡単に解決なんて出来るわけないんですよ。解決ではなく、むしろ妥協・納得というラインに落としたというところが、良かったなぁ、と。特にナツなんて結構すごい黒いこと考えてますよ?それに比べたら、フユなんて可愛いものです。見ためかわいいと中は怖くなるものなんですかね。そしてハルはイケメンだった。病弱な感じが、古風な青年書生さんというイメージを彷彿とさせます。彼だけ纏っている空気が大正・昭和な感じがします。


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