
想いを込めよう
彼女が
幸せでいますように
■家柄よし、ルックス良し、歌舞伎界の名門・木嶋屋の御曹司の恭之介は、そんな恵まれた生まれであるにもかかわらず、歌舞伎への情熱はゼロ。何もわかっちゃいないミーハーなファンは何をやっても絶賛で、厳しい父はどんなに頑張っても褒める言葉をかけてくれない。それならテキトーにやった方が得…なんて思っていたら、同じ学校の女子・あやめからまさかのダメ出し。思いもよらぬ、本質を捉えた彼女の指摘に、恭之介の心は大きく動かされ、いつしか恋心を抱くように。しかしあやめには好きな人が、それも相手は恭之介の同業者で…!?
嶋木あこ先生が描く、美麗歌舞伎恋物語でございます。主人公は、歌舞伎界の名門・木嶋屋の御曹司・恭之介。家柄もよく、ルックスも良い彼は、若い女性を中心に大人気。しかし恵まれているにもかかわらず、彼の歌舞伎へのやる気はゼロ。というのも、ファンは何もわかっちゃおらず、下手な演技をしても絶賛の嵐。師匠である父は、逆に何をやってもダメ出しの嵐。何をやっても変わらない状況に、すっかりやる気を失っていたのでした。そんな彼の前に現れたのは、同じ高校の特待生の女の子・あやめ。「公演のチケットが欲しい」と言う彼女に、恭之介は「遠回しのアプローチか」と軽くいなすのですが、話を聞くとどうやらそうではない模様。どうも彼女は本当に歌舞伎公演が見たいらしく、しかも彼女は恭之介に対し、「逃げてる芸。ヒドい。人形が踊っているみたいだった。」と散々ダメ出し。痛いところを突かれた恭之介は、そんな彼女に腹を立てるのではなく、むしろ興味を持ってしまいます。そして気がつけば、その想いは恋心に。しかし彼女には、ずっと想いをよせる相手が。しかもその相手は、同じ歌舞伎役者で現在人気急上昇中の澤山一弥。歌舞伎に恋に、すべてが中途半端だった恭之介は、あやめに認められるため、再び本気で芸に取り組むのでした。

ぶちぬきで描かれる演舞のシーンは圧巻。歌舞伎をしているシーンはそれほど多くないものの、インパクトたっぷりなので印象に残る。
門閥外出身ながら、飽くなき向上心で人気・実力共に急上昇中の若手歌舞伎役者・澤山一弥。そしてそんな彼の幼なじみで、彼に想いをよせ続ける千葉あやめ。そしてそんな彼女に恋をしてしまった、名門の御曹司・河村恭之介。そんな3人が織り成す、美麗な三角関係。ただならぬ想いで繋がる二人の間に、恭之介がどう割り込んでいくかが見所。そしてその争いの舞台となるのは歌舞伎でございます。他の少女漫画にありがちな、テーマをダシに使うだけ(=出会いのきっかけにして終わり)みたいなこともなさそうで、それなりに歌舞伎を物語中に織り交ぜてきているあたりは好印象。また恋愛一本で直接勝負しないという辺は、どこか男性的発想といいますか…そう考えると主人公に女の子ではなく男の子を据えたのは正解だったような気が。ヒロインと一弥は少し取っつきにくい性格の持ち主で、現時点では感情移入の余地があまりないように思うので、ここからまだ描かれていない過去をどう描いていくのかがポイントになりそう。とりあえず主人公の恭之介は、残念なヘタレ感がすごく出ていて、個人的には大好きです。
歌舞伎をテーマにしてくるとはまたCheese!も思い切りましたね。普通に考えたら、読者層に歌舞伎に興味のある人なんていないわけですが、はたしてどこまで読者を引き込めるのか。「黎明のアルカナ」(→レビュー)でのファンタジーや、「華の姫」(→レビュー)での歴史物など、最近のCheese!はやたらチャレンジングなイメージがあります。加えてちゅちゅから個性派作家さんたちが流れてきましたから、さらにこの変化に拍車がかかる可能性も。こういう試行錯誤は、行う側とすればかなりの勇気が要るものでしょうし、個人的に応援したいところですね。
【男性へのガイド】
→男の子視点で、結構気持ちもわからなくない。やけにドラマチック&ロマンチックな恋愛模様になっているので、そこに耐えられるという人は。
【私的お薦め度:☆☆☆ 】
→恋愛を出来る限り織り交ぜて、しっかりと少女漫画として"読める"作品にしてきたというのは、称賛に値すると思います。ただ歌舞伎をテーマにした弊害かわかりませんが、高校生の恋愛にしてはありえないくらいロマンチックでクサい物語になってしまっているので、それをどう捉えるか。また流れが早く、1巻だけではちょっと「ぴんとこない」感じに…ってすみません。
作品DATA
■著者:嶋木あこ
■出版社:小学館
■レーベル:Cheese!フラワーコミックス
■掲載誌:Cheese!('09年11月号~連載中)
■既刊1巻
■価格:400円+税
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