
全部がゼロになってしまうわけじゃないんだから
また少しずつ近付けるように
努力すればいいんだって
■高校3年の篠弓弦は、月曜日の朝、弓道部の後輩である芹生冬至と出会う。学年問わず女生徒に大人気の芹生は、月曜日に一番最初に告白してきた相手と必ずつき合うという変わった習慣(?)の持ち主。そして一週間きっかりで、その相手と別れる。その話を額面通りに受け取れば、とんでもない女たらしの身勝手な男だが、不思議と彼を悪く言う噂は聞かない。このとき弓弦は、ちょっとした好奇心から軽い気持ちでこんな言葉を放つ「俺とつき合ってよ、芹生」。斯くして一週間限定でつき合うことになった二人だが…?
ご紹介を受けましたBL作品。軽い気持ちで放った言葉がきっかけで、一週間限定でつき合うことになった高校生のお話。主人公の篠弓弦は、弓道部の3年生。端正な顔立ちで女子たちからの人気もあついのですが、その見ためとは裏腹に大雑把でデリカシーのないところが玉にきず。実際に告白されてつき合っても、「イメージと違った」といつもすぐにフラレてしまうのでした。そんな彼の部活の後輩で、学校でもひと際人気を集めるのが、2年生の芹生冬至。甘いマスクはもちろんのこと、人当たりの良さと相手に合わせる誠実さを持ち合わせている彼は、月曜日に最初に告白してきた相手と付き合い、きっちり一週間経ってから別れるという不思議な習慣(?)を持っています。噂には聞くけれど、実像はあまり知らない。そんな芹生と、月曜日にばったり出くわした弓弦は、興味本位で「つき合ってよ」と言います。冗談として流されるだろう…なんて考えていたものの、どうやら芹生は本気らしく、本当につき合うことに。こうなったら仕方ない、本気で楽しんでみるかと、弓弦は一週間限定の恋人を楽しむことにしたのでした。

最初は冬至に振り回されていた感のある弓弦でしたが、開き直って楽しむことにしてからは、むしろ主導権を握る。この二人の危うい力関係ももた、見所か。
改めてあらすじを書くと結構すごいですが、ストーリー自体は全く無理がないものになっています。どちらもはじめは冗談まじり。しかし初め抱いていた印象とは全く別の、本来の表情・性格に、それぞれに抱える悩みや葛藤が絡まり、お互いだんだんと本気になっていきます。主人公の弓弦は、外見と中身のギャップに、そして芹生は、記憶に残り続けるある女性の影に、それぞれ苦しみ前へ進むのを阻んでいたのですが、それを飛び越えさせてくれるのが、たまたま彼だったという。こういった必然性を持たせると、男でもわりかしすんなりと読んでいくことが出来るので、ありがたいですね。BLってたまに完全に開き直って男×男を描く作品ってあるじゃないですか、そういうのやっぱり苦手です。
関係性を描き出しはもちろん、その設定が秀逸。「月曜日に最初に告白してきた相手とつき合う」そして「一週間限定」というルールがあるため、付き合いに至るまでのややこしいやりとりを取払い、さらに期間限定にすることによって物語を濃縮することに成功しています。たった一週間でこれだけ色々動きがあるなんて、さすがにないだろ…とは思うものの、その制約がなかったらここまで感情は走らなかっただろうし、ラストはこのルールがあるからこそのキレイなまとめを見せてくれるので、すべてチャラ。この結末はなかなか爽やかで、美しい。
エロシーンはなしで、あってもキスまで。ただちょっとキレイすぎるかな。どちらのキャラも、男視点でもキレイすぎる男なんで、男じゃない別の生き物ように見えたり。いや、見えるんじゃない。弓弦も芹生も、男じゃない、男に似た何か別の生き物だ!別にそんなのはどうでもいいのですが、本当に夢物語なのだなぁ、と改めて思った次第。
【男性へのガイド】
→BL基準ではもちろん読みやすい部類だとは思いますが、敢えてこれを選ぶというインセンティブはさほどないような。
【私的お薦め度:☆☆☆ 】
→しっかりとまとまっていて、キレイな作品。しかし私には少し慌ただしくキレイすぎた感も。男性がこれを楽しむには、もう少し達観してこの二人のキャラを受け入れられるだけの余裕がないとあかんのかもしれないです。
作品DATA
■著者:宝井理人/橘紅緒
■出版社:大洋図書
■レーベル:ミリオンコミックス
■掲載誌:CRAFT(2006年No.28~2009年No.39)
■全2巻
■価格:各600円+税
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