作品紹介→*新作レビュー*藤間麗「黎明のアルカナ」
2巻レビュー→本領発揮しつつあります《続刊レビュー》藤間麗「黎明のアルカナ」2巻
藤間麗「黎明のアルカナ」(3)
蔑まれて生きてきた私の人生で
間違いなく今が一番
幸せだよ
泣きそうなくらい
■3巻発売です。
シーザは倒すべき敵であるとわかっていても、どうしても彼のことを嫌いになれないナカバ。自分のことを想ってくれていることを知ると、余計に心を許してしまう。従者・ロキは、そんなナカバを見て歯がゆい想いを重ねていく。そんな中、ベクルートに同盟国であるリトアネルから使者が来る。そして明らかになる、ナカバの力「刻のアルカナ」の秘密と、ベクルートの野望…
~小学館が誇るビッグ4~
ファンタジーロマンス、第3巻の登場でございます。帯に「小学館が誇るビッグ4作品」として、この「黎明のアルカナ」もラインナップに加わっています。残りの3つは「電撃デイジ―」(→レビュー)、「カノジョは嘘を愛しすぎてる」(→レビュー)、そして「今日、恋をはじめます」(→レビュー)。今月発売の作品の中でビッグ4ということなのですが、アルカナが入りますか、ここに。嬉しいとは思いつつも、人気的にはどうなんだろうという気も。そして残りの3つはレビュー予定どころか買ってすらいない私って…(笑)「今日、恋をはじめます」と「カノジョは嘘を愛しすぎてる」なんかはどちらも雑誌の4番的ボジションの作品なんですけどね。次の少女漫画枠での小学館漫画賞は「今日、恋をはじめます」あたりが取るんじゃないかと勝手に思ってます。
~徐々に物語の全容が明らかに…~
さて、3巻に突入してきたわけですが、物語はますます面白くなっていきます。王子と姫の恋物語にするのであれば、あまりに場違いな能力・刻のアルカナ。この能力の存在を、物語的に然るべきものにするには、個々人の関係に収まるような小さな物語ではなく、周囲の人間を否応なく巻き込んでしまうような大きな物語が必要になってくるのですが、3巻において、見事に枠を広げてきました。最初から大きすぎると、読者がついてこない可能性もあるわけで、ヒロイン・ナカバの心情という小さな世界にスポットをあてて物語を進行していったのですが、ここでアルカナの力の秘密が明らかになり、さらにベクルートが抱える大きな野望も明らかに。これはワクワクしないわけがありません。状況は、他の人間に影響を与えざるを得ないものに変わってきます。とはいえナカバの動機はあくまでロキを守るためと、一個人の感情発信のもので、またシーザもナカバが頼むからという、個人の感情が大きく入り交じっての決意。状況が変わるからといって、考え方も180度変えるということはなく、徐々に向くべき方向に気持ちを向けていきます。こうすれば読者が振り落とされるということもないはずで、これは上手いなぁ、と。
~思わぬ髪型の変化~
さて、そんな緊迫の局面に入っていく前に、ナカバとシーザ共に見ために大きな変化が。同盟国の使者が来るということで、髪を染めろと命じられたナカバは、それを拒否して自らその長い髪を切り落としてしまいます。そしてそれを見たシーザもまた、その美しい黒髪を切り落とすという行動に。なんか一気に爽やかに、幼く、そして白泉社的になりましたね。物語が物語だけに、小学館ではなく白泉社の匂いが強いと思っていたのですが、この髪型の変化で一気に…。ナカバに関してはどちらもいいですが、シーザは断然こちらの方がいい!これからシーザの髪型はあれで固定でお願いできないだろうか。無理か。ちなみに表紙のシーザは髪を切り落としてからのものになっています。どうですか?この爽やかさ。いや、背景色がそんなに爽やかでないので、そこまで伝わらないかもしれませんが、なんか清潔感があるでしょ?この姿で登場させたいから、藤間先生は2巻表紙でロキを起用したに違いない。というかそう信じたい。

ナカバもばっさり。全く印象がかわりますが、こちらの方が意思が強そうで素敵。
~ロキのシーザへの敵対心の正体~
また3巻では、ロキのナカバに対する想いも明らかに。幼い頃に頼るべき相手を失ってしまった二人。特にナカバは、言葉も覚えたての子供で、誰かが支えてやらないとあっという間に潰されてしまう。そんな彼女を見て彼が決意したのは、ならば自分が愛してあげようというものでした。これは裏返しで、ロキの存在意義が、ナカバを愛することでのみ確立されるということ。ロキもまた、ナカバなしでは生きられない存在になってしまっているのです。ナカバが心開こうとしているシーザに対し、あそこまでの敵対心を向けるのは、単に復讐すべき相手であるからというだけでなく、ナカバを取られることによって、己の存在価値まで否定されてしまうことを、必死で食い止めようとしているのかな、と見ていて思いました。民族への大義や、ナカバへの恋心からくる執着ももちろんですが、何より己の存在欲求が前面に出ているため、あそこまで必死になるのではないでしょうか。そして局面は、亜人排除の流れ。下手したら、本当にすべて潰されてしまうかもしれません。そんな彼に対し、ナカバはどこまで彼のケアをできるのか、そしてシーザはどれだけ新たな存在価値を与えてやれるのか。注目してみていきたいところですね。
~藤間先生のミステイク~
そういえば作者さんのオマケページにて、2巻でロキの目元の刺青を描くのを忘れていたとのコメントがあり、2巻を見てみたのですが、開始2秒で発見しました。もしかして表紙ですかー!!ちなみにこれは重版かかって以降は修正されているようです。意外と気づかないものなんですね。
■購入する→Amazon
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bk1
2巻レビュー→本領発揮しつつあります《続刊レビュー》藤間麗「黎明のアルカナ」2巻

蔑まれて生きてきた私の人生で
間違いなく今が一番
幸せだよ
泣きそうなくらい
■3巻発売です。
シーザは倒すべき敵であるとわかっていても、どうしても彼のことを嫌いになれないナカバ。自分のことを想ってくれていることを知ると、余計に心を許してしまう。従者・ロキは、そんなナカバを見て歯がゆい想いを重ねていく。そんな中、ベクルートに同盟国であるリトアネルから使者が来る。そして明らかになる、ナカバの力「刻のアルカナ」の秘密と、ベクルートの野望…
~小学館が誇るビッグ4~
ファンタジーロマンス、第3巻の登場でございます。帯に「小学館が誇るビッグ4作品」として、この「黎明のアルカナ」もラインナップに加わっています。残りの3つは「電撃デイジ―」(→レビュー)、「カノジョは嘘を愛しすぎてる」(→レビュー)、そして「今日、恋をはじめます」(→レビュー)。今月発売の作品の中でビッグ4ということなのですが、アルカナが入りますか、ここに。嬉しいとは思いつつも、人気的にはどうなんだろうという気も。そして残りの3つはレビュー予定どころか買ってすらいない私って…(笑)「今日、恋をはじめます」と「カノジョは嘘を愛しすぎてる」なんかはどちらも雑誌の4番的ボジションの作品なんですけどね。次の少女漫画枠での小学館漫画賞は「今日、恋をはじめます」あたりが取るんじゃないかと勝手に思ってます。
~徐々に物語の全容が明らかに…~
さて、3巻に突入してきたわけですが、物語はますます面白くなっていきます。王子と姫の恋物語にするのであれば、あまりに場違いな能力・刻のアルカナ。この能力の存在を、物語的に然るべきものにするには、個々人の関係に収まるような小さな物語ではなく、周囲の人間を否応なく巻き込んでしまうような大きな物語が必要になってくるのですが、3巻において、見事に枠を広げてきました。最初から大きすぎると、読者がついてこない可能性もあるわけで、ヒロイン・ナカバの心情という小さな世界にスポットをあてて物語を進行していったのですが、ここでアルカナの力の秘密が明らかになり、さらにベクルートが抱える大きな野望も明らかに。これはワクワクしないわけがありません。状況は、他の人間に影響を与えざるを得ないものに変わってきます。とはいえナカバの動機はあくまでロキを守るためと、一個人の感情発信のもので、またシーザもナカバが頼むからという、個人の感情が大きく入り交じっての決意。状況が変わるからといって、考え方も180度変えるということはなく、徐々に向くべき方向に気持ちを向けていきます。こうすれば読者が振り落とされるということもないはずで、これは上手いなぁ、と。
~思わぬ髪型の変化~
さて、そんな緊迫の局面に入っていく前に、ナカバとシーザ共に見ために大きな変化が。同盟国の使者が来るということで、髪を染めろと命じられたナカバは、それを拒否して自らその長い髪を切り落としてしまいます。そしてそれを見たシーザもまた、その美しい黒髪を切り落とすという行動に。なんか一気に爽やかに、幼く、そして白泉社的になりましたね。物語が物語だけに、小学館ではなく白泉社の匂いが強いと思っていたのですが、この髪型の変化で一気に…。ナカバに関してはどちらもいいですが、シーザは断然こちらの方がいい!これからシーザの髪型はあれで固定でお願いできないだろうか。無理か。ちなみに表紙のシーザは髪を切り落としてからのものになっています。どうですか?この爽やかさ。いや、背景色がそんなに爽やかでないので、そこまで伝わらないかもしれませんが、なんか清潔感があるでしょ?この姿で登場させたいから、藤間先生は2巻表紙でロキを起用したに違いない。というかそう信じたい。

ナカバもばっさり。全く印象がかわりますが、こちらの方が意思が強そうで素敵。
~ロキのシーザへの敵対心の正体~
また3巻では、ロキのナカバに対する想いも明らかに。幼い頃に頼るべき相手を失ってしまった二人。特にナカバは、言葉も覚えたての子供で、誰かが支えてやらないとあっという間に潰されてしまう。そんな彼女を見て彼が決意したのは、ならば自分が愛してあげようというものでした。これは裏返しで、ロキの存在意義が、ナカバを愛することでのみ確立されるということ。ロキもまた、ナカバなしでは生きられない存在になってしまっているのです。ナカバが心開こうとしているシーザに対し、あそこまでの敵対心を向けるのは、単に復讐すべき相手であるからというだけでなく、ナカバを取られることによって、己の存在価値まで否定されてしまうことを、必死で食い止めようとしているのかな、と見ていて思いました。民族への大義や、ナカバへの恋心からくる執着ももちろんですが、何より己の存在欲求が前面に出ているため、あそこまで必死になるのではないでしょうか。そして局面は、亜人排除の流れ。下手したら、本当にすべて潰されてしまうかもしれません。そんな彼に対し、ナカバはどこまで彼のケアをできるのか、そしてシーザはどれだけ新たな存在価値を与えてやれるのか。注目してみていきたいところですね。
~藤間先生のミステイク~
そういえば作者さんのオマケページにて、2巻でロキの目元の刺青を描くのを忘れていたとのコメントがあり、2巻を見てみたのですが、開始2秒で発見しました。もしかして表紙ですかー!!ちなみにこれは重版かかって以降は修正されているようです。意外と気づかないものなんですね。
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