
兄さんの命は
僕がもらうんだから
■ごくごく普通の高校生・天神后の前に現れたのは、15歳にはとても見えないイケメンの少年・主神言。幼なじみに紹介され、観光案内をしてあげると、彼はすぐに后に懐いてきた。そしてそんな二人の前に現れたのは、こちらもまた人目を引くイケメンの男。しかしちょっと発言がおかしい。自分のことを安倍晴明だと言い、闇で生まれた鬼から后を守るためにやってきたのだと言うのだ。わけのわからぬ発言に、逃げ出そうとする后だったが、あろうことか言と安倍晴明が言い争い戦いはじめた。どうやら安倍晴明の言っていることは本当らしく、しかも后はこの世に存在するもう一つの世界”闇世界“を統べる「闇王」の第一後継者らしく…!?
人気小説のコミカライズ。とんでもなく中二病っぽい設定のストーリーが登場しました。主人公は、ごくごく普通の高校生…だった、闇王の第一後継者・天神后。「闇王」とは、この世に存在するもう一つの世界「闇世界」を統べる王で、后はその闇王がオモテの世界でもうけた子供が后というわけ。そんな彼の前に現れたのが、彼の異母弟・言。彼は幼い頃から闇世界に育ち、母親から闇王になるための教育を受け育ってきました。そんな彼が満を持して、闇王になるために第一後継者である后の命を狙いにきます。そんな言の手から后を守るためにやってきたのが、后の側近と名乗る安倍晴明。彼らが現れたその日から、后の平穏な日々はどこかへ消え去り、闇世界の覇権争いに巻き込まれていくことになります。

好きだから殺すという超理論。「好き」と「便利」が同じラインで展開。感情は未熟どころか芽生えてすらいないという状況。
何も聞かされていない普通の高校生が闇王の後継者に選ばれ、その座を狙って実力者である弟皇子が命を狙ってくるというストーリー。そんな彼を守るのが安倍晴明ということからもわかるように、バトルに使われる不思議な力は陰陽のソレ。実は彼の周囲にいる親しい人物も事情を知っている、后側の人間ないし言側の人間で、何も事情を聞かされていないのは本人のみという、典型的な巻き込まれ型ファンジーでございます。
単純に覇権争いを繰り広げるのではなく、そこから兄弟愛のような関係を描く方向に。后のことを殺し、手を加えて生き返らせて下部にしようと考えている言は、幼い頃から闇王になることだけを教え込まれたため、価値観がそれのみで形成されています。親から愛情をかけられて育っていないので、他人はおろか自分への痛みすらも考えられない「心のない」存在とでもいいましょうか。そんな彼を見て、后は命を狙われつつも同情を示し、どうにか彼を救ってやりたいと考えるように。また言も、初めて会ったそのときに優しくされたことがきっかけで、后の命を狙いながらも非常に懐くという不思議な関係が形成されます。言にこういった行動を許すのは、后に対し言が圧倒的な力を持っているからで、以降后の力が覚醒してきたら、また新たな関係性が示されるのでしょう。現時点では敵同士ですが、さらにもう一歩進んで、違った物語になりそうな予感がします。
「闇世界」に「闇王」とか、そのまんますぎるネーミングでびっくりしたのですが、逆にそれがわかりやすさに繋がっているのかもしれません。ただそれ以上に展開早いよ。結構な大事なのですが、細かい説明は回想などに任せ、事後報告の連続でいつも主人公は物事を戸惑いつつも受け入れているという。これ原作もこういう流れなんでしょうか?アクションと同時に心情描写にも力を入れていると思うのですが、そういうバランスでおくるのならマンガよりも小説に一日の長があるような気もします。
【男性へのガイド】
→イケメンが嫌いでないのなら。美少女も登場しますが冷徹ですね。BLではありませんが、そっち方面の方が喜びそうなテイストは若干含んでおります。
【私的お薦め度:☆☆ 】
→シンプルな覇権争いではなく、さらに違った方向に持っていこうとするのは、逆に読み手に対して焦点を絞らせず混乱させるだけのような気も。混乱というのは言い過ぎですが、どういった方向に進むのかわからないと、次も買いたいと思わないんじゃなかろうかと。
作品DATA
■著者:宮尾にゅん/金沢有倖/伊藤明十
■出版社:エンターブレイン
■レーベル:ビーズログコミックス
■掲載誌:B's-LOGエアレイド(2009年11月13日更新~)
■既刊1巻
■価格:620円+税
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