このエントリーをはてなブックマークに追加
--.--.--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
カテゴリスポンサー広告||TOP▲
このエントリーをはてなブックマークに追加
Tag [オススメ] [新作レビュー] [読み切り/短編] 2010.03.08
1102884156.jpg天乃忍「夏のかけら」


よく分からなかったけど
なんだか
白くて細い体が
夏の日差しにまぎれてしまいそうで



■読切りを中心に4編の物語を収録。それでは表題作をご紹介。
 入院した祖父を見舞いに田舎に訪れた美雪は、そこで一人の少年に出会う。生意気で失礼な言動をする彼・円に、最初は腹が立ったものの、何故だか気になる。以来毎日病院に通い、入院している円に会いに行く。口は悪くも無邪気に接してくれる彼との毎日は、本当に楽しい。しかしある日…!?思い出すのはあの日あの空、あの人を思って走った、あの暑い夏の   
 
 昨年片想いをフィーチャーした「片恋トライアングル」(→レビュー)で一気に読者(というか私)のハートを持っていった、天乃忍先生の作品集です。ご紹介した表題作「夏のかけら」をはじめ、恋とは無縁の読書少女と不器用な片想い少年を描いた「雪のかけら」、その「雪のかけら」と同じ登場人物たちでおくるドジッ子&鈍感な先輩の関係を描いた「恋のかけら」、妄想初恋少女とクールな美少年の可愛く切ない「秋色 恋色」、そして他の作品とは打って変わってファンタジックに優しくおくる「春待ち草子」の4編5話が収録されています。どれも純粋な「想い」に加え、何かしらの悲しい・切ない要素が投入されており、甘酸っぱく、ときに苦さを感じるようなお話たちになっています。叶うことのない恋、期間限定の恋、今はもう届かない想い…その想いは様々ですが、どれもこれも純粋で、そして切ない。甘さが全面に押し出された恋物語も良いですが、すべての恋が甘さに溢れているわけではありません。こうした切ない想いもまた、恋の醍醐味だったりするのです。


夏のかけら2
根底にあるのはどれも、純粋に相手のことを想う「好き」という気持ち。


 どのストーリーも季節感が明確に出た内容となっています。「秋色 君色」は題名にもあるように、季節は秋。銀杏並木とその落ち葉がモチーフとして登場。また「春待ち草子」は春で、桜がモチーフに。そして恋のかけらと雪のかけらは、最終的に季節は冬に移り、雪がモチーフ、マフラーがキーアイテムとして描かれます。ちなみに冬の図書館に雪というシチュエーションが出てくるのですが、これはジョージ朝倉「恋文日和」や羽柴麻央「イロドリミドリ」(→レビュー)にも登場した鉄板シチュ。音のない断絶された世界に、自分と彼だけがいる。図書館にまっさらな雪は、真面目さと純粋さを想起させ、なんとも言えない雰囲気を生み出します。また表題作「夏のかけら」はひまわりがアイテムとして登場。こうしてそれぞれ季節感を出すことによって、時間の流れを明確に感じさせたり、逆に「その季節限定」というタイムリミットを確実に感じさせる効果が。どれも悲恋の要素を少し含んだ切ないストーリーたちで、その悲しみの訪れは時間と共に、季節の変わり目に訪れます。限られたページ数の中で、時間の流れを効果的に感じさせる手腕はお見事。 
 
 個人的にお気に入りなのが、「雪のかけら」と「夏のかけら」。特に「夏のかけら」は、なんとも粋な計らいがあったり。まずこのお話、物語の季節は夏なのに、ヒロインの名前が美雪です。夏休みとひまわりという季節感バリバリ中に、美雪という冬を想起させる女の子がいる違和感。けれどもそのギャップが、なんとも素敵。またこのお話は、物語の中だけではストーリーは終着しません。読み終わって、もう一度表紙を見てやっと完成。作中だけでは補完できなかったものが、そこには描かれています。それには思わずうるっときてしまいました。こういうのに弱いんですよ、私。やっぱり大好きだ、天乃先生の話。

 全体を通してそこかしこに「片恋トライアングル」に通じるエッセンスが見てとれたように思いました。特に「雪のかけら」と「恋のかけら」はまんま元のお話になったのではないかというような設定・展開。鈍感部長よりも、結城くんの方が鈍感で動かなかった分、「片恋」の方が複雑な関係になったんじゃないでしょうか。そんな中、「春待ち草子」は恋愛感情なしの家族愛を描いたファンタジーもの。それまでの話を読んで、ストーリーの引き出しは少ないように感じでいたのですが、こんな話も描けるのかと驚き。個人的には片恋をこれからも全力で描いて欲しいですが、長期連載獲得とかでその他のストーリーを描く余裕とかができた際に、こういった要素も盛り込まれたらより素敵な物語になりそう。何はともあれ、大満足&次の作品が楽しみな一冊でした!


【男性へのガイド】
→大人しい女の子が読むとしっくりくるのか。男性も、やや切ない恋物語がお好きな方は。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→個人的には5つ付けたいんですが(笑)このぐらいが妥当なのかな、と。全力で先生らしさが出ている作品集だと思います。ややベタだけど、純粋さと繊細さがあれば問題なし、逆に純粋さを際立たせる要因にすらなるのですよ。


作品DATA
■著者:天乃忍
■出版社:白泉社
■レーベル:花とゆめCOMICS
■掲載誌:LaLaDX
■全1巻
■価格:400円+税

■購入する→Amazonbk1

カテゴリ「LaLa DX」コメント (0)トラックバック(0)TOP▲
コメント


管理者にだけ表示を許可する

この記事にトラックバック
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
タグカテゴリ
月別アーカイブ
リンク
プロフィール

Author:いづき
20代男、Macユーザー。野球はヤクルト、NBAはマジックが好きです。

文章のご依頼など、大事なお話は下記メールアドレスへお願い致します。


■Twitter
@k_iduki

■Mail
k.iduki1791@gmail.com
※クリックでメール作成
RSSフィード
▽最新記事のRSSを購読

a_m.jpg
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

Power Push
2012年オススメはコチラ→2012年オススメ作品集


かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
東村アキコ先生が贈る、美大受験期の自伝漫画。東村アキコ作品らしい勢いの良さだけでなく、急転してのシリアスな締めなど、一冊に笑いと感動が詰め込まれた贅沢な作品。




王国の子
びっけ「王国の子」(1)
レビュー
稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描く“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリー。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある一作。




シリウスと繭
小森羊仔「シリウスと繭」(1)
レビュー
2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




トーチソング・エコロジー
いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(1)
レビュー
売れない役者が、役者仲間を亡くしたと思ったら、お次は隣に高校の同級生が越してきて、さらには何やら自分にしか見えない子どもの姿が見えるように…。どこかゆるさのある不思議なテイストのお話なのですが、いくえみ作品で実績のある「ある者の死と、残された者の感情」を描き出す類いの作品ということで、この先きっと面白くなってくることでしょう。




BEARBEAR
池ジュン子「BEAR BEAR」(1)
レビュー
高校生には到底見えないロリっ子ヒロインが好きになったのは、遊園地のクマの着ぐるみ。着ぐるみの中身は同じ学校の子で、結局付き合うことになるものの、その後も変わらず相手はクマの被り物をしているという、シュールな光景が繰り広げられます。なんとも奇妙な相手役、かつなんともかわいらしいヒロインの、初々しいやりとりに終始ニヤニヤ。




かみのすまうところ。
有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。