このエントリーをはてなブックマークに追加
Tag [オススメ] [新作レビュー] 2010.03.09
おもいで金平糖1持田あき「おもいで金平糖」


あまなつ屋の金平糖
夕焼け色の金平糖
ひとつぶ口にふくめば
昔の夢を見せてくれる   



■おもいで金平糖は創業120年を誇る飴屋「あまなつ屋」の看板商品。どこかでは「魔法の金平糖」なんて呼ばれていて、食べると不思議なことが起こるという言い伝えがある。口にふくめば昔の夢を見せてくれる、近い過去、遠い過去…。時空にたたずむ誰かの想いに呼ばれ、時を飛び越えた少女たちは、そこで何を見て、何を思い出し、何を感じたのだろうか。あなたの心のまん中を揺さぶる、4つの味を召し上がれ。

 持田あき先生の新作。食べると不思議なことが起こると言われている、「おもいで金平糖」が見せる、4人の少女の物語が描かれます。おもいで金平糖を食べると起こる不思議なこととは、タイムスリップ。その人にとって大切なときであったり、その人の大切な存在の意志が働いたりで、辿り着く先はバラバラ。別れを告げられた彼氏とつき合う前の自分に出会ったり、自分の生まれる前の時代に夢を追う恩師に出会ったり、今は会えない人に会ったり。相手にとって、そして自分にとっての人生のターニングポイントを、おもいで金平糖によってすり合わせるというイメージ。どれも懐かしさと温かさを感じる、ストレートな表現の感動ストーリーになっています。


おもいで金平糖
歳の離れた学校の先生との話。少女視点ではあるが、ふたりの物語でもある。


 この作品、実は先月発売の作品だったんですよね。持田あき先生は、「愛してるぜベイベ」などで有名な槙ようこ先生の実妹なんですが、姉妹ということで、どうしても比べてしまって…そうするとやっぱり分が悪いというか。それと持田先生ってものすごく表紙が素敵な先生なんですよ、ほんと業界随一なんじゃないかっていうくらい。それで購入した「キミは坂道の途中で」(→レビュー)の内容が、個人的に今ひとつで(表紙からの期待感とのギャップもあったと思う)、もう次買うのは巻数表示が付いてからで良いやと、この作品もスルーしていたのです。けれどどうにも周囲での評判が良いんですよね。Twitterでオススメされ、メールでもオススメされたということで、これはやらなあかんと思って読んだら、確かにいいお話でした。相変わらずやけに大仰というか、懐かしくも恥ずかしい、クサいやりとりをド直球に描くスタイルなのですが、それがビシっと決まった感じ。こういった雰囲気を恋愛でやられるとむずかゆくてたまらないのですが、恋愛以外の愛情にそれを乗せるのならば、案外すんなりと受け入れられたりするもの。いやでもやっぱりクサいし、どこか垢抜けないという。
 
 ストーリーは、過去に行くというだけで、その他にこれといった捻りはなし。SF的に、過去に影響を与えてしまったら未来が…なんてことは起こりません。起こるのは、心の変化のみ。そこに絞るからこそ、深い心の触れ合いを描くことが出来ます。もう少し捻りを加えた方が、大人も楽しめるのになぁなんて思ったのですが、そもそもこの話はりぼん掲載で、その中で恋愛なしのストーリーを組み立てるとしたら、こういうパターンしかないのかもしれませんね。このくらいストレートな方が、低年齢層の読者には伝わりやすい。恐らくこれを読んだ大人は、「心のまん中にズドンと来た!」となるか、「わざとらしすぎて、クサすぎて耐えられん!」となるかどっちかじゃないかと思います。もうひと捻りあったらお互い歩み寄れたような気もするのですが、そうすると爆破力は落ちてしまうかもしれないわけで、難しいところですね。とりあえず、なんだか変な方向に向かいつつあるりぼんで、今なおこういった作品が読めるというのは貴重。これからもこのスタイルを貫いて、恋愛だけにとらわれない愛情・絆を描いていってもらいたいですね。


【男性へのガイド】
→恋愛に特化していないため、読みやすさはあると思います。あとはこのクサさに耐えられるか。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→捻りはないし、上手くもない。諸刃の剣。けれど今の少女誌(というかりぼん)で、流れに逆行するような作品を描き、しっかりと作品として仕上げたあたり、応援したいですね。

作品DATA
■著者:持田あき
■出版社:集英社
■レーベル:りぼんますこっとコミックス
■掲載誌:りぼんスペシャル
■全1巻
■価格:457円+税

■購入する→Amazonbk1

カテゴリ「りぼん」コメント (3)トラックバック(0)TOP▲
コメント

いづきさん久しぶりです♪
私も読みました。
りぼんコミックス買ったの何年ぶりだろう。多分6~7年ぶりくらい。

表紙可愛いですよね。結構表紙買いした人いたんじゃないかと思います。
恋愛メインじゃないマンガを読むのは久しぶりでしたが、良かったです。

自分は「心のまん中にズドンと来た!」ですね。
りぼんなかなかやるじゃんと思いました。

確かに言われてみればクサいやりとりだったかも。
でもあんま気にならなかったなー
クサいセリフだからこそ、心にズドンと来たみたいな。
始めは主人公の言葉遣いが気になりましたけど。

持田さんの連載はあんま評判良くないみたいですがちょっと読んでみたいと
思いました。
槙さんの妹なんですよね。
『愛してるぜベイべ』読もう読もうと思ってはいるんですが読んだことないです。
槙さんは『山本善次朗と申します』を少し読んだことあるくらいです。
いつかちゃんと読んでみたいなあ。








From: トラ * 2010/03/09 14:07 * URL * [Edit] *  top↑
 私も表紙にひかれて、本当に久々に、りぼんコミックス買いました。
 素晴らしかったです。

 第3話を読んだ時、『持田先生は、多分お父さんと仲が良かったのだろうな。
だから、昭和を舞台にした話を描こうと思ったのかな』と思いました。
 また、低年齢向けにもかかわらず、最後のページのモノローグ(「永遠だと・・」
のくだり)は、「人間交差点」や「浮浪雲」などの中高年向け男性の作品に出て
くるような内容で驚きました。
 同時に、『どうしてお父さん世代向けの内容を、低年齢向けに描いたのだろう?』
という疑問も持ちました。

 そして、何気なく表紙のカバーを外してみると、裏表紙にメッセージが描いてありました。
 疑問は解決しました。泣きました・・。この漫画には、とても大切な思いが込められていたのですね。
 そして、このメッセージを読んだ後、もう一度単行本を読み返してみたら、もう・・涙が止まらなかったです。生きる意味や幸せの意味を、改めて考えさせられました。
From: シャドー * 2010/03/09 22:24 * URL * [Edit] *  top↑
>トラさん

持田あき先生の表紙は本当に素敵ですよね!
前作の「キミは坂道の途中で」も凄く素敵な表紙たちで、つい手に取ってしまいました。

オブラートに包んだり、変に気どったりしなかったからこそ、破壊力が強かったのだと思います。それが武器でもあり、弱点にもなってしまうかな、と。今作は恋愛特化でなかった分、私にも読みやすかったです。

槙ようこ先生は個人的に「山本善次郎~」が好きですねー
面白い作品が多いので、機会があったら読んでみてください。

それとブログ始められたのですね。
リンクどうもありがとうございました!


>シャドーさん
シャドーさんも表紙買いでしたね。ほんとにすごい…

表紙裏はあまり見る習慣がないので、シャドーさんに教えていただくまで気がつきませんでした。
こんな裏事情があったのですね。
教えていただきありがとうございました。

そう考えると、後半2作品は子供対大人という構図のストーリーで、その影響が色濃く見えたような気がします。掲載誌にそぐわないストーリーを描いたのも、納得ですね。

From: いづき * 2010/03/10 01:42 * URL * [Edit] *  top↑

管理者にだけ表示を許可する

この記事にトラックバック
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
タグカテゴリ
月別アーカイブ
リンク
プロフィール

Author:いづき
20代男、Macユーザー。野球はヤクルト、NBAはマジックが好きです。

文章のご依頼など、大事なお話は下記メールアドレスへお願い致します。


■Twitter
@k_iduki

■Mail
k.iduki1791@gmail.com
※クリックでメール作成
RSSフィード
▽最新記事のRSSを購読

a_m.jpg
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

Power Push
2012年オススメはコチラ→2012年オススメ作品集


かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
東村アキコ先生が贈る、美大受験期の自伝漫画。東村アキコ作品らしい勢いの良さだけでなく、急転してのシリアスな締めなど、一冊に笑いと感動が詰め込まれた贅沢な作品。




王国の子
びっけ「王国の子」(1)
レビュー
稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描く“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリー。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある一作。




シリウスと繭
小森羊仔「シリウスと繭」(1)
レビュー
2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




トーチソング・エコロジー
いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(1)
レビュー
売れない役者が、役者仲間を亡くしたと思ったら、お次は隣に高校の同級生が越してきて、さらには何やら自分にしか見えない子どもの姿が見えるように…。どこかゆるさのある不思議なテイストのお話なのですが、いくえみ作品で実績のある「ある者の死と、残された者の感情」を描き出す類いの作品ということで、この先きっと面白くなってくることでしょう。




BEARBEAR
池ジュン子「BEAR BEAR」(1)
レビュー
高校生には到底見えないロリっ子ヒロインが好きになったのは、遊園地のクマの着ぐるみ。着ぐるみの中身は同じ学校の子で、結局付き合うことになるものの、その後も変わらず相手はクマの被り物をしているという、シュールな光景が繰り広げられます。なんとも奇妙な相手役、かつなんともかわいらしいヒロインの、初々しいやりとりに終始ニヤニヤ。




かみのすまうところ。
有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。