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2010.03.12
07163316.jpg黒乃奈々絵「Vassalord.」(1)


…そうやって
せっかくお許しが出たのに
引け腰だからチェリーなんだよ



■4巻発売です。
 吸血鬼でありながらも聖職者であることに誇りをもち、人の生き血を吸うことを頑に拒み続けるチャーリー。彼は同族嫌悪から、最強のサイバー・バンパイアハンターとして数多くの吸血鬼を葬ってきた。しかしそんな彼でも、血液なしでは生きていけなかった。血の呪縛から逃れられないと悟った彼は、自らのマスターであるレイフロの生き血を求め、以来彼の生き血のみを吸って生きている。血の呪縛で結びつけられた二人のヴァンパイアに待ち受ける運命とは…!?
 
 二人のヴァンパイアが織り成す、ダークファンタジーアクションでございます。なんとなくBLっぽい雰囲気のある作品。主人公となる二人は、そりゃもうその筋では有名なヴァンパイア。一人はヴァンパイアでありながら、聖職者でもあるという異色の経歴の持ち主・チャーリー。ヴァンパイアでありながら、ヴァンパイアの存在を憎む彼は、サイバー・ヴァンパイアハンターとして、数多くのヴァンパイアを葬り去ってきました。そんな彼と共に(結果として)行動するのが、彼のマスターであるレイフロ。クールで真面目な性格のチャーリーとは打って変わって、楽天的でズボラな性格の彼は、実は真祖ヴァンパイア(吸血による汚染ではなく、自らを呪術にかけてヴァンパイア化した)という貴重な存在。ヴァンパイアは人の生き血を吸わなければ生きていけませんが、チャーリーはその性格・信念から、人の生き血を吸うことを徹底して避けています。そんな中吸える唯一の生き血が、レイフロのもの。そんななんだかんだ離れることのできない(チャーリーがだけど)二人が、様々な出来事に巻き込まれ、いがみ合いつつも(チャーリーがだけど)それを切り抜けていく様子を描いていきます。


vassalord.jpg
のっけからこのアクション。ハリウッド映画のアクションと一緒ですよ、サービスサービス。


 現在はアヴァルスで連載されていますが、元々はコミックブレイドZEBELという雑誌で連載されていた作品。雑誌の休刊と共に、アヴァルスに移ってきたみたいです。ファンタジックでスタイリッシュな作品が多く見られるアヴァルスの中にあっても、ひと際そっち系の匂いを漂わせる本作は、おもいっきり女性向けという感じ。それは表紙を見ても伝わってくるでしょう。通常時にドタバタ感とカッコ良さを描きつつも、その合間合間にふたりの過去を巡る絆の深さを描き出し、読者の心をグッとたぐり寄せます。
 
 チャーリーとレイフロですが、対等な立場というわけではもちろんありません。本来であれば、チャーリーがマスターであるレイフロに忠誠を誓い全力で守る…みたいな関係にあってもいいはずなのですが、己の信念を曲げない頑固さを持ち素直じゃないチャーリーは、そうそうレイフロに弱い部分を見せることがありません。普段は弁当呼ばわりですし、1巻なんかいきなり襲ってきますからね、意味が分からない(愛情表現?)。とはいえ根底では繋がっている二人は、本当にピンチに陥ったときは助け合いますし、結局レイフロの手のひらの上で転がされているだけだったりするので、こんな関係もまた好きなんでしょ?
 
 ちなみに『サイバー』ヴァンパイアハンターというのは、体中を改造してサイボーグみたいになっているため。この辺も、アクションの派手さを増すための要素の一つなのでしょう。序盤から改造ボディ全開で、いきなり飛ばしてくるので、戸惑う人はいるかも。ただしこういうのは付いて来れる人だけついていけばいいんですよ。作者さんも完全に「趣味本」って言ってますし。その開き直りがあるからこそ、のびのびと物語を展開できるわけで、より面白さも際立つってもんです。


【男性へのガイド】
→BLっぽいので、あまりオススメはできないかも。そもそもこの表紙で手に取る人がどれだけいるのか。
【私的お薦め度:☆☆☆  】
→見応えはあるものの、肝心のアクションシーンが個人的にやや見づらいです。視点をバシバシ切り替えるのはいいんですが、チャーリーの体の解説なしにいきなり繰り出されてもわかんなうなっちゃうんですよ。


作品DATA
■著者:黒乃奈々絵
■出版社:マッグガーデン
■レーベル:BLADE COMIC AVARUS
■掲載誌:アヴァルス
■既刊4巻
■価格:各552円+税

■購入する→Amazonbk1

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