
なんか謎だな
この人時々……
だけど すごく
知りたくなる
■超引っ込み思案の初瀬一花は、大好きな仏像や寺院の勉強をするため、生まれ育った島を離れ、ひとり奈良の大学へ。期待と不安に胸躍る入学初日。一花はサークル勧誘の波に揉まれる中、阿修羅像に似た男の先輩に出会う。春日と名乗るその彼に、半ば強引に連れて行かれた先は、発掘現場!?そして明らかになる、一花の「当たり屋」の才。考古学オタクと仏像オタクが出会ったとき、運命は大きく動き出す…!?
KISS得意のワンテーマもの。なんて今作は欲張りにダブルテーマでおくっています。ヒロインは、とある島で育った引っ込み思案の仏像オタク・初瀬一花。興味のすべては仏像に向けられ、唯一の友達はお寺の住職という彼女は、まだ見ぬ世界=まだ見ぬ仏像を求めて、ひとり奈良へ旅立つことを決めます。初めての大学生活、はじめての一人暮らし…仏像への熱情はあるものの、やはり不安はつきません。そんな中迎えた入学初日、サークル勧誘の怒濤の波に揉まれているところに、ひとりの男性が。名も名乗らず、そして名前も聞かれないうちに「暇そうだから」と勝手に彼にどこかへ連れて行かれ、辿り着いた先は発掘現場。そこで作業を手伝わされた一花は、そこで思わぬ「当たり屋」(掘るたびに凄い発見をする人のこと)の才を覗かせます。そんな怒濤の一日を終えた後、やっとゆっくり自己紹介。春日と名乗る彼は、同じ大学で考古学を専攻する先輩で、現在ゼミ生を絶賛募集中なのだとか。押しに弱い一花は、ゼミに入らずとも、なんだかんだで春日をはじめ彼の所属する三輪ゼミの面々と行動することに。そしてだんだんと、春日先輩と考古学に興味を持っていくようになるのですが…というお話。

突っ込み所の多い変人ばかり(ヒロイン含む)の中、唯一まともなのが友人の斑鳩さん。ツッコミ役の彼女がいるから、それなりに締まった物語となる。
考古学と仏像という、女性向けマンガではまずありえないようなテーマでおくられる、大学生活物語。個性派揃いの考古学研究室の面々(と言っても教授含め4人)との出会いから、だんだんと考古学に、そして先輩の春日くんに興味を持っていくという流れ。二つとも取っつきにくいテーマではありますが、考古学に関してはヒロインが全くの素人、そして仏像に関しては研究室の面々が全くの素人ですので、それぞれ初歩からの解説が入ります。またそれをメインで展開するというよりは、テーマによって入れ物を作っておいて、その中で大学生活を描いていくという色が強く出ているため、そこまで小難しい内容にはならず、どちらかというと親しみやすい内容に仕上がっています。この作品の場合、入れ物を作っているのが考古学で、スパイスに仏像、そしてメイン素材に恋愛模様を絡めるという感じでしょうか。「もやしもん」などは最も成功した例だとは思いますが、学問的な要素が強くなってしまうテーマを使う際に、大学を舞台にするというのは、ある程度専門性を加えられる上に、青臭い青春ストーリーも絡められるわけで、なかなかに使い勝手が良いですよね。
ストーリー的には、彼女の恋愛が成就したら終了=短期終了の匂いがしなくもないですが、どうなんでしょうか。とりあえず表紙と帯でこれだけ仏像仏像あおってるなら、もうちょっと仏像使って欲しいなぁ、とは思います。もうそのネタだけにしちゃうのは、ちょっともったいない。「海月姫」(→レビュー)なんかしっかりクラゲを使ってますし。ちなみにタイトルの「メッシュ」の意味は、作品を読めばわかります。こちらは考古学発信なのですが、気がつく方はどれだけいるのだろうか。
【男性へのガイド】
→こんなテーマでも、しっかりと女性に読める作りに。ということはそのぶん男性にとっては美味しくなくなっている可能性もあるわけで。専門知識も、あくまで初歩の初歩なので、ご注意を。
【私的お薦め度:☆☆☆ 】
→こういうテーマものは、失敗も少なくなるかわりに、大成功も少なくなってしまうような気がします。ドラマと知識をいかに融合させるかが難しいのですが、こちらの場合は二つ使っているので、そのハードルは自然と高いものに。
作品DATA
■著者:小野直美
■出版社:講談社
■レーベル:KC KISS
■掲載誌:KISS PLUS(2009年5月号~連載中)
■既刊1巻
■価格:419各円+税
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