
「きっとあたしも幸せになれますね」
「キミの脳を信じなさい」
■住む場所、頼る人、そして所持金をすべてなくしたみのりは、真冬の路上で死にかけていたところを、偶然通りかかった天才脳科学者・源博士に手によって保護され、命を助けられる。助けてもらったことを感謝し、安堵するみのりだったが、彼は食事と寝床の確保を条件に、ある提案を持ちかける。それは、脳の研究の為に、その被験者になって欲しいというものだったが…!?
寄田みゆき先生が描く、脳化学と幸せのお話。主人公は、超絶不幸娘のみのり。両親は早々他界し、親戚の間をたらい回しにされた彼女は、追われるように独立。しかしその後も不幸は続き、詐欺に遭い、住んでいたアパートは全焼し、挙げ句全財産の入ったカバンはひったくられ、行き倒れてしまったのでした。そんな彼女を発見し、保護したのが天才脳科学者の源義行。20代にして准教授にまで上り詰めた彼は、脳科学のエキスパート。そんな彼がなぜみのりを助けたかというと、彼女が不幸だったから。幸福になったときの脳の変化状態を研究している彼にとって、不幸慣れしていて幸福を知らない彼女は、格好の被験者だとにらんだのでした。食事と寝床を用意することを条件に、実験に参加してもらうことを、源博士は提案。最初はこんな上手い話あるわけがないと思っていたものの、他に行くアテもないため、みのりは源博士の研究室にお世話になることに。研究の虫で変人の源先生を筆頭に、個性派揃いの研究室の面々と共に、みのりの新たな生活が始まります。

博士は脳に恋してる。研究の虫の源博士は、とにかく脳ありき。ちなみにこの女の子は、ヒロインではなく同じ研究室の白石さんです。
源博士が求める結果は、みのりが幸せになること。しかしみのりの幸せは、そこに居場所があるということに幸せを見出していったため、実験の終了=不幸を意味することになります。最初は期間限定でみのりに手伝ってもらう予定だったものの、源先生はみのりの不幸は見たくない。そこで結局研究室のお手伝い兼被験者という形でその後も研究室に所属することになります。物語はその後、それぞれの研究員にスポットがあてられ、脳科学に絡めたストーリーを展開。一般論だけでなく、ちょっと変わった見方が入ってくるので、読んでいて「なるほど。」とか、「確かに。」なんて言ってしまうこともしばしば。実際に研究室に取材に行っているらしいですが、これらは研究者の受け売りなのか、はたまた作者さんの考えなのか。例えば認知症に関して、「多くのしがらみから解放されるために。残り少ない人生を有意義なものにするために。脳は自ら認知症を引き起こしたのでは?」なんて考えは、正解かどうかはわからないものの、確かに納得できる主張ではあります。
物語の軸に据えられているのは「脳は人を幸せにするために存在する。人はだれでも幸せになれる」という考え。上昇志向で、常に幸せを求める方向に話が進んでいくのは、読んでいて悪い気はしないですし、そこに脳科学の知識を絡めてくるから、飽きもこないです。ネタの切れ目がマンガの終わりという感じもするので、どこまで脳科学ネタを用意できるかですが、現時点では勢いは一定。安定して物語が描かれ続けています。ゆくゆくは源博士との恋愛もあるのかもしれませんが、今のところそんな気配は全くなし。愉快な研究室コメディとなっています。ヒロインも、年齢設定の割に幼く見えますし、まだまだこれからという感じでしょうか。
【男性へのガイド】
→研究室コメディ。ストーリー的にどうかはわからないものの、読み物的な価値も見出せるんじゃないかと…。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→ちょっと続きを読んでみたい気持ちになりました。自分自身ネガティブな気があるので、前向き志向でそのノウハウが描かれてるこの作品に、ひと際惹かれたのかも。
■作者他作品レビュー
寄田みゆき「君がウソをついた」
作品DATA
■著者:寄田みゆき
■出版社:講談社
■レーベル:KCDX
■掲載誌:BE・LOVE
■既刊1巻
■価格:419円+税
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