
僕は一体
これからどうなるんでしょうか
■7巻発売しました。
立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花…けれどもそれは、黙っていればの話。誰よりも美しい女の子である桃井菜々子は、少しでも近づけば返り討ちに遭う、凶暴な性格の持ち主。そんな彼女に恋をするのは、見ためはイケメン、けれども性格は超絶地味な上原あきら。近づくことも出来ず、ただ遠くから憧れているだけだった彼はある日、これはチャンスと、欠席した彼女の元にプリントを届けに行くが、遭遇したのはまさかの人体実験!?桃井さんの祖父の怪しげな実験に、なぜかあきらも巻き込まれ、気がついた時には二人の体が入れ替わっていた…。戻そうにも、装置は壊れているし、自分の体に入った桃井さんは何やら暴れる気マンマンだし…一体この先どーなるの!?
自重しない入れ替わりコメディでございます。森永あい先生というと、「極楽青春ホッケー部」(→レビュー)を別フレで連載し、人気をはくしていましたが、むしろ知名度としてはこちらの方が高いような気がします。
主人公は、見ためはいいけど生まれながらの気の弱さで損ばかりしている高校生・上原あきら。そんな彼は、同じクラスのとある女子に想いをよせています。その相手とは、誰もがふりかえる美貌の持ち主・桃井菜々子。しかしそれは黙っていればという条件付き。ひとたび動き喋りだせば、その傍若無人っぷりに皆が辟易とするような、強烈な性格の持ち主。言ってみれば「触るな危険」という女子に、あろうことか地味な性格のあきらが恋をしてしまったのですが、当然近づくきっかけすらないわけで…。そんなところの突如として舞い込んだ、お近づきのチャンス。それは、欠席した彼女の家にプリントを届けるというもの。意気揚々と彼女の家に乗り込んだものの、そこには未知の光景が。怪しげな博士風のお爺さんと、装置に繫がれた桃井さんの姿があり何やら実験をはじめるところらしく、何故だかあきらも巻き込まれることに。そして気がついた時には、桃井さんとあきらの体が入れ替わっていたのでした。事の重大さに気づいたあきらは、すぐに戻せと要求するものの、装置は壊れてしまい、修理するにも膨大な予算と時間がかかるとのこと。元に戻るまで、お互い入れ替わったまま生活することになったのですが…というストーリー。

元々の性格がそれぞれの体にフィットしていたというのもありますが、さらに中身と体も急速にシンクロしていくように。それが桃井さんの暴走と、あきらの戸惑いを生み出す。
典型的な入れ替わりもののコメディですが、この作品のミソは、お互いの中身がより入れ替わった側の性別にフィットしており、さらに自重しないってところ。特に桃井さんの好き放題っぷりが際立っています。入れ替わって戸惑うあきらとは裏腹に、桃井さんはやる気満々。早速男としての生活を満喫しはじめます。元々入れ物(あきらの顔)はイケメンですから、その中に男勝りな桃井さんが入ったら相性は抜群。人気も出るってもんです。興味津々で体をいじることからはじまり、様々な体験を重ね、果ては親友だった女の子に告白され付き合いはじめてしまうという突っ走りっぷり。しかもその理由が「スキになったもんは仕方ねーだろ」という。一方のあきらも、しおらしい性格が幸いして、女性としての人気をみるみる獲得。しかし状況は、あらぬ方向に転がり、親友だった千本木に言い寄られるという始末。非常に奇妙な四角関係が形成されます。この不可思議な四角関係が生み出すドタバタが、本当に面白い。
入れ替わりのもでかつコメディなんて腐るほどありますが、ここまで好き放題やっているのもあまりないでしょう。お約束の性的なネタは、軽い“シモ”みたいな感じで片付けられることが多いのですが、この作品の場合はけっこうえげつない感じ。お下劣とか、お行儀がわるいとか、そういった表現がしっくりくるというか。それがこの作品の持ち味の一つで、妙に純情でお行儀の良い入れ替わりものそれとは、一線を画します。自重しないキャラが一人いるだけで、こうも作品の印象が変わるのか、と。そして自重しなくなるほどに、とばっちりを食らうあきらの姿が、かわいそうというか、かわいいというか。
【男性へのガイド】
→男の子視点と言うのもありますが、それ以外の要素をとっても読みやすいかと。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→刊行ペースが遅いのがタマに傷も、やはり面白いです。一味違う入れ替わりコメディを、どうぞお楽しみください。
作品DATA
■著者:森永あい
■出版社:マッグガーデン
■レーベル:ブレイドコミックスアヴァルス
■掲載誌:ステンシル→コミックブレイド→コミックブレイドアヴァルス
■既刊7巻
■価格:各552円+税
■購入する→Amazon