このエントリーをはてなブックマークに追加
Tag [オススメ] 2010.03.25
07210175.jpg谷川史子「おひとり様物語」(1)


願わくば
互い互いの
たったひとりでありますように



■2巻発売しました。
 「ひとりで外食できる」「仕事が結構好き」「買い物は一人が気楽」「しっかり者だと言われる」…一つでも当てはまった貴方は、おひとり様の素質あり!?文字通り、恋人なしで一人で生きる女性から、恋人がいても一人の時間は目一杯楽しむ人まで、「おひとり様」の定義は様々。ときに気楽で、ときに寂しい、おひとり様LIFEを、名手・谷川史子が描きます!
 
 タイトル通り、「おひとり様」を描いた読切り集でございます。一口に「おひとり様」と言っても、文字通り「独身である」とか「特定のパートナーがいない」といった人だけでなく、「パートナーはいるけれども物理的に離れている」という人や、「パートナーはいるけれども心が離れている」という人も含まれ、割と自由に物語が描かれています。主人公は大体20代~30代の女性。そのほとんどの女性は、仕事していたり学校に行っていたり(当たり前か)。したがって、それだけで良くも悪くもスケジュール的には充実していたりするわけですが、ふと寂しくなるときも。そんなおひとり様たちの日常に訪れる、少しだけの、本当に些細な変化を、谷川史子先生が繊細に描き出します。


おひとり様物語
基本は恋愛を絡める。おひとり様と恋愛は、永遠のテーマでもあります。


 谷川史子先生が描く作品ってことで、読む前からほぼオススメは決定しているわけですが、それにしてもこの「おひとり様」というテーマはずるいなぁ、と。「独身」とか「パートナーがいない」という女性ならまだしも、そうではなく、物理的にも心理的にもパートナーと離れていればそれでOKという緩いルール。そして谷川先生の描く作品に登場する女性たちは、高確率ですでにそのルールに当てはまっているという(笑)それゆえに、このテーマなんてあってないようなものなのですが、だからこそ先生の持ち味を存分に発揮できるということでもあるわけで、相変わらず非常に読み心地の良い作品が連なっています。
 
 シチュエーションでいうと、なんとなくぼやっとした印象のある「おひとり様」ですが、要はしっかり者で、ひとりでいる時間を満喫できている人のことを指すのかな、と個人的には思います。そういう人、あなたの周囲にもいませんかね?私の知り合いにも一人、まんま「おひとり様」な感じの女性がいるのですが、ちょっとその人に読ませてみたいな、と思ったのでした。
 
 短めのストーリーなので、物語の中ですべてが完結みたいなことにはなりません。これからスタート…!という感じの話が多く、読み終わった後前向きな気持ちにさせてくれます。一人でいることも、二人でいることを選択する事も、どちらも正解というスタンス。大事なのは、自分で決める事。自分で選んだ道は、例え思わぬ答えが待っていたとしても受け入れられるものなんですよね。それが結果的にストーリーの前向きさに繋がっているように思います。それは実生活でも大事な事。しかしこれ、男だけの「おひとり様物語」とかだと寂しくむさ苦しいんだろうなぁ。


【男性へのガイド】
→男女関係なく読みやすいと思います。だって谷川史子先生ですしね。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→読後感の良さは相変わらず抜群。ファンの方も、そうでない方も。清々しく前向きな気持ちになれる一冊です。

■作者他作品レビュー
谷川史子「手紙」
谷川史子「P.S.アイラブユー」


作品DATA
■著者:谷川史子
■出版社:講談社
■レーベル:ワイドKC KISS
■掲載誌:(2008年No.5~)
■既刊2巻
■価格:667円+税
■購入する→Amazon

カテゴリ「Kiss」コメント (0)トラックバック(0)TOP▲
コメント


管理者にだけ表示を許可する

この記事にトラックバック
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
タグカテゴリ
月別アーカイブ
リンク
プロフィール

Author:いづき
20代男、Macユーザー。野球はヤクルト、NBAはマジックが好きです。

文章のご依頼など、大事なお話は下記メールアドレスへお願い致します。


■Twitter
@k_iduki

■Mail
k.iduki1791@gmail.com
※クリックでメール作成
RSSフィード
▽最新記事のRSSを購読

a_m.jpg
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

Power Push
2012年オススメはコチラ→2012年オススメ作品集


かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
東村アキコ先生が贈る、美大受験期の自伝漫画。東村アキコ作品らしい勢いの良さだけでなく、急転してのシリアスな締めなど、一冊に笑いと感動が詰め込まれた贅沢な作品。




王国の子
びっけ「王国の子」(1)
レビュー
稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描く“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリー。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある一作。




シリウスと繭
小森羊仔「シリウスと繭」(1)
レビュー
2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




トーチソング・エコロジー
いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(1)
レビュー
売れない役者が、役者仲間を亡くしたと思ったら、お次は隣に高校の同級生が越してきて、さらには何やら自分にしか見えない子どもの姿が見えるように…。どこかゆるさのある不思議なテイストのお話なのですが、いくえみ作品で実績のある「ある者の死と、残された者の感情」を描き出す類いの作品ということで、この先きっと面白くなってくることでしょう。




BEARBEAR
池ジュン子「BEAR BEAR」(1)
レビュー
高校生には到底見えないロリっ子ヒロインが好きになったのは、遊園地のクマの着ぐるみ。着ぐるみの中身は同じ学校の子で、結局付き合うことになるものの、その後も変わらず相手はクマの被り物をしているという、シュールな光景が繰り広げられます。なんとも奇妙な相手役、かつなんともかわいらしいヒロインの、初々しいやりとりに終始ニヤニヤ。




かみのすまうところ。
有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。