このエントリーをはてなブックマークに追加
Tag [続刊レビュー] 2010.03.31
作品紹介→*新作レビュー*宇佐美真紀「ココロ・ボタン」
関連作品レビュー→宇佐美真紀「春行きバス」宇佐美真紀「恋*音」



1102885430.jpg宇佐美真紀「ココロ・ボタン」(2)


自分でも気づかなかったけど
オレ
結構独占欲強いかもよ?



■2巻発売です。
 古閑くんと「お試し」でお付き合いすることになってから、彼のドSっぷりに振り回されっぱなしの新奈。優しく笑顔で困らせてくるから、そこまで嫌な感じはしない。それに少しずつ、距離も縮まってきた気がする。そんなある日、古閑くんが新奈の家に遊びにきてくれることに。彼の好青年っぷりに、新奈の両親は好意的だったけど、妹の葵だけはどうにもつれない態度で…!?


~勢いそのまま~
 まだまだ宇佐美真紀の快進撃はとまりません!今まで連載ではどうにもその持ち味を発揮できずにいた宇佐美先生。それだけに2巻がひとつの試金石になりそうな気がしていましたが、まだまだ勢いそのままに物語が展開されていきます。Sっ気のある相手役というワンアイデアだけで、こうも面白く話を回せるのかと思っていたのですが、むしろ彼があそこまで輝けるのは、ヒロインが新奈だからなのかもしれないと、今回2巻を読んで思いました。


~新奈の魅力~
 Sっ気のある古閑くんが、なんだかんだで新奈と一緒にいるのは、やはりイジメ甲斐があるからなんでしょう。手のひらで転がしやすいタイプ=人をすぐに信じる単純さを持っていると考えると、新奈はまさにという感じの女の子。しかもリアクションがいいので、余計にイジメ甲斐があるってもんです。またそれだけでなく新名は、ひととおり手のひらの上で踊った後に、予想外の反応を見せてくれます。ただ計算通りに動くのではなく、+αで予想外のことをしてくれる彼女にだからこそ、古閑くんは新奈に入れ込むのかな、と。そうしたとき、古閑くんのこらえ笑いには「狙い通り困ってる!」というニュアンスのものと、「何その意外な反応!」というニュアンスの二つがあることに気がつきます。だから古閑くんは素敵なんだよ!また基本(うさんくさい)笑顔の彼ですが、ふと覗かせる素の表情がいい。彼の笑顔や怒った表情はどこか戦略的に作られた感じがして、なんとなく自然な表情・考えをしていないように思えてしまうのですが、その間に時折挟まれるフラットな表情は、彼の素の部分が見えたような気がして、とっても愛おしく思えてしまいます。



ココロボタン
 これとかはごくごく自然に発せられた台詞だと思うのですが、決して「美味しくない」とは言わず、「これからに期待」と言うあたり、彼の優しさみたいなものを感じます。彼女ががんばっていることでは、絶対におちょくらず、同時さりげなく「“これから”に期待」と、未来を暗示させる言葉を使っているという。あれもしかして、これも計算?いや、彼の人柄が自然と溢れ出したと考えたいところです。


~妹の葵が強烈なインパクトを…~
 さて、2巻では新奈と古閑くんに加え、もう一人素敵なキャラクターが登場。それが、新奈の妹の葵ちゃんなのですが、まさかあんなにかわいらしいとは。最初は「お前邪魔すんなよ!」とか思ってましたよ、すみません。またうさみん作品らしからぬ泥沼化か…とか思っていましたよ、すみません。まさかあんな事情があったなんて…!いやぁ、素直じゃない妹って、本当に素敵ですよね。特にこの台詞…


ココロボタン2ー2死ねっ!!


「死ね」ですよ、「死ね」。普通であれば、決して言ってはいけない言葉ですが、反論する言葉がなくなった末の、いわば捨て台詞としての「死ね」は、むしろ別格にかわいらしいものがあります。素で言われた時の「死ね」はドM得の台詞ですが、これは同義で「参りました」と言っているようなもので、むしろS得な言葉だったりします。帯には「世のM女子のハートをぎゅーっとつかんでマス」と書いてありますが、いやいや、Sっ気のある方にも結構オススメできるのではないか、と思ったり。


■購入する→Amazonbk1

カテゴリ「ベツコミ」コメント (0)トラックバック(0)TOP▲
コメント


管理者にだけ表示を許可する

この記事にトラックバック
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
タグカテゴリ
月別アーカイブ
リンク
プロフィール

Author:いづき
20代男、Macユーザー。野球はヤクルト、NBAはマジックが好きです。

文章のご依頼など、大事なお話は下記メールアドレスへお願い致します。


■Twitter
@k_iduki

■Mail
k.iduki1791@gmail.com
※クリックでメール作成
RSSフィード
▽最新記事のRSSを購読

a_m.jpg
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

Power Push
2012年オススメはコチラ→2012年オススメ作品集


かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
東村アキコ先生が贈る、美大受験期の自伝漫画。東村アキコ作品らしい勢いの良さだけでなく、急転してのシリアスな締めなど、一冊に笑いと感動が詰め込まれた贅沢な作品。




王国の子
びっけ「王国の子」(1)
レビュー
稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描く“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリー。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある一作。




シリウスと繭
小森羊仔「シリウスと繭」(1)
レビュー
2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




トーチソング・エコロジー
いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(1)
レビュー
売れない役者が、役者仲間を亡くしたと思ったら、お次は隣に高校の同級生が越してきて、さらには何やら自分にしか見えない子どもの姿が見えるように…。どこかゆるさのある不思議なテイストのお話なのですが、いくえみ作品で実績のある「ある者の死と、残された者の感情」を描き出す類いの作品ということで、この先きっと面白くなってくることでしょう。




BEARBEAR
池ジュン子「BEAR BEAR」(1)
レビュー
高校生には到底見えないロリっ子ヒロインが好きになったのは、遊園地のクマの着ぐるみ。着ぐるみの中身は同じ学校の子で、結局付き合うことになるものの、その後も変わらず相手はクマの被り物をしているという、シュールな光景が繰り広げられます。なんとも奇妙な相手役、かつなんともかわいらしいヒロインの、初々しいやりとりに終始ニヤニヤ。




かみのすまうところ。
有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。