
片想いの中にも
失恋の中にも
胸がギュッとなる瞬間は
確かにある
■季節外れの2学期、彼はやってきた。産休の中山先生に代わって、鳴瀬心のクラスにやってきたのは、ダボダボのスーツに穴のあいた靴下の冴えない若い男の先生・ジローちゃん。大人なのに子供なジローちゃんは、クラスのみんなともすぐに打ち解け馴染んでいった。そんな中、心は先生に自分が好きな人のことを知られてしまい、結果として恋の協力をしてもらうことに。ところがその相手である不破くんは、先生のことを嫌っているようで…!?
前作「恋したがりのブルー」(→レビュー)では、優しさと思いやりから生まれる切なさを存分に描いた恋物語となりましたが、今回も藤原よしこの魅力そのままに、切なく愛おしい物語を予感させる作品を送り出してきました。ということで、「だから恋とよばないで」のご紹介です。
ヒロインは、クラスの優等生の男子・不破くんに片想いをしている、鳴瀬心。どうにかして近づきたいと思っているものの、なかなか接点がなく、いつも遠くから観ているばかり。そんなところにやってきたのが、産休の担任の先生に代わって赴任してきた、高柳次郎先生。だぼだぼのスーツに穴あきの靴下、歩き方もだらしなく、どうにも教師に見えない彼は、その愛らしい性格からすぐに生徒達に受け入れられ、「ジローちゃん」と呼ばれ親しまれるようになります。心もまた、彼と親しく話すようになるのですが、ある日とあるきっかけで、心が不破くんのことを好きだということがバレてしまいます。そこで先生は、彼女の恋路の手助けをしてあげようとするのですが、当の不破くんは先生のことを好意的にみていなくて…というところから始まる恋物語。

今回も序盤は、台詞よりもモノローグ重視でヒロインの心情を描写。敬語とため口が混ざるところに、微妙な距離感を感じる。どっちつかずな感じが、なんだかムズかゆい。
表紙からもわかるとおり、メインとして描かれるのはヒロインと先生なのでしょうが、物語は別の男の子へ恋をしているというところから始まります。その後だんだんと先生に気が向いて…という展開なのですが、状況を早急に展開しようとかいう姿勢はありません。あくまでヒロインの心の揺れ動きを、丁寧に丁寧に描いていくことが基本。教師ものですので本来であれば、先生が現れた時点で前の恋など吹っ切れさせ、早々に先生にシフトチェンジしてもいいのですが(というか少女漫画では結構多い)、この作品はそうはしません。敢えてその心情をしっかり描くことで、より感情移入させやすくするばかりか、先生の魅力を作中で発揮させることに成功、さらに片想いの相手である不破くんを以降も物語に介入させ、無駄なキャラを生み出すことなく展開できています。
女子生徒と男性教師ものって、少女漫画では定番な割に、個人的には苦手なジャンルなんですよね。というのも、男性教師が女子生徒に魅力を感じる十分な理由やきっかけが描かれずに展開しているものが多いような気がしまして。単純な言葉で言えば説得力不足。最近では「これは恋です」(→レビュー)が教師×生徒ものでは唯一楽しめている作品なのですが、これは男性主人公ですから、やっぱり読み手としてのハードルは低いのかもしれません。そんなこともあり、若干不安だったこの作品ですが、1巻終了時点で非常に楽しめて読めています。もちろん大好きな藤原よしこ先生の作品だというひいき目もありますが、最初から教師に向かずに、普通の恋でワンクッション置いている辺や、その間に教師の魅力を描説明している辺から、やっぱり他の作品よりは取っつきやすいのかな、と。
そういえば藤原先生は、これで3作連続でタイトルに“恋”というワードが入ることになりますね。だからどうだってことなんですけど、確かに先生の作品は「好き」とか「愛」とか「青春」とかよりも、「恋」という言葉がしっくりくる気がします。しかし相変わらず、どのキャラクターにも説得力があります。特に今作はヒロインがお気に入り。前作でもそうでしたが、とにかく純粋で優しい。「ありがとう」と「ごめんなさい」だけでできているかのようなその性格に、いつも元気づけられます。やっぱり藤原先生の描く作品は大好きです、うん。
【男性へのガイド】
→男性の支持を得るとしたら、ジローの動きと不破くん次第かなという気も。基本は女性向け。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→片想い中は安心のクオリティ。しかしここからの展開次第ではという不安も。でも結局楽しんで読んじゃうんですよ。だってそんなこと気にならなくなるくらい、魅力的なキャラクター達なんですもの。
作品DATA
■著者:藤原よしこ
■出版社:小学館
■レーベル:Cheese!フラワーコミックス
■掲載誌:Cheese!('09年12月号~)
■既刊1巻
■価格:400円+税
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