
あたしが言いたかったのは
その一言だけだったんだ
■読切り4編を収録。それでは表題作をご紹介します。
お父さんを交通事故で亡くして8年が過ぎたある日、母親が頼り無さげな“もやし男”を連れて来た。山田藤一郎という名のその若い男は、母親の仕事の元後輩で、今は事情が重なり現在求職中。そして彼の仕事先が見つかるまで、家で一緒に暮らすと母は言うのだった。自分勝手な母親と、いつも素直でいられない“あたし”。儚くも奇妙な3人の同居生活がスタートして……。
小山鹿梨子先生の初単行本です。おめでとうございます。未亡人の母と意地っ張りな私、そして母が連れてきたたより無さげな若い男3人の、奇妙な同居生活を描いた表題作をはじめ、ちょっぴり不思議でちょっぴり苦く、そしてちょっぴり甘い物語たちが4編収録されています。それではその他のタイトルも少しだけご紹介しましょう。想い続けた従兄に彼女ができ、モヤモヤを溜め込んでいたら、飼っていた金魚に変化が起こり…という「金魚の痣」。交通事故で意識が戻らない、好きな女の子の声が、突然ヘッドフォンから聞こえてきて…という「ヘッドフォンともども」。そして友達の双子兄妹と噂の恋のジンクス描いた、「ヒヨコ電車は今日もゆく」。表題作と最後の「ヒヨコ電車は今日もゆく」は、ちょっと変わった三角関係で展開する恋物語で、「金魚の痣」と「ヘッドフォンともども」はファンタジックな要素を交えた恋物語となっています。

タイトル絵っていうんですかね?普段は読み飛ばして気にも留めないんですが、なんだか気になるカットが多かったです。
作者の小山先生は、ニコニコ動画の投稿者として人気を集めた方で、帯にもそのことが書いてあります。神絵師というのはどうなんだろうとは思ったものの、確かに惹かれる表紙。とっても魅力的な絵なんです。ちなみに投稿者としてのハンドルネームは「シバションP」。絵師として活躍するほか、ボーカロイドのプロデューサーとしても活動するなど、かなり幅広い活動を行われていたようです。私はボーカロイドはあまり明るくないので、存じ上げなかったのですが投稿動画の中には10万再生を越えるものもあり、かなりの人気を誇っていたようですね。以下が主な投稿動画…
▷作詞作曲、PV制作まで全て手がけたという、代表作
▷こちらは絵を担当されたそうです
詳しくはタグを辿るなり、ブログを見てみるなりしてみてくださいませませ。
ということで、作品の話に戻りましょう。最初は「話題先行の見かけ倒しなのかな…」なんて斜に構えて読みはじめたのですが、いやいやこれがなかなか面白かったです。絵はもちろんのこと、ストーリーも工夫されており、描きたいものがハッキリしている印象。一筋縄ではいかない展開に、設定もかなり独特です。またキレイな所だけ描こうというのではなく、黒い部分・後ろめたい感情もしっかりと描いていくスタイルで、単調に流れていくような話にはなっていません。
敢えて突っ込むなら、デビュー作の割にひねりすぎじゃないのか、ってところでしょうか。4作中2作は悲恋で、もうひとつは百合。そして残りのひとつもファンタジーと、デビュー作から別フレらしからぬラインナップ。意欲的に工夫を重ねるという意味では、大歓迎。私もこういう話は大好きですが、本誌読者は果たして。いや、でも一定数から支持が得られればいいんじゃないのかな、って気もしてますが。
【男性へのガイド】
→これは読みやすいんじゃないかと思います。普通の少女漫画とはちょっと違う、苦みの利いたお話です。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→話題関係なく、応援したいです。ちょっとまとまりすぎているような気もしますが、先の事など考えてもあまり意味がないので。
作品DATA
■著者:小山鹿梨子
■出版社:講談社
■レーベル:KC別フレ
■掲載誌:別フレ、別フレデジタル
■全1巻
■価格:419円+税
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