
逃げていたら
何も解決しませんものね
■舞台は中国・明王朝時代。30代で合格するのが普通、20代ならば余程運のいい方であり、10代で合格すれば神童と言われる、難関中の難関試験・科挙にこの年トップ合格を果たしたのは、わずか17才の青年・君玉。早くも将来が嘱望される中、当の本人は出世には全く興味のない様子。というのも、彼が宮廷に入ったのは、無実の罪で投獄された父を救うため。そのためだけに、勉強を重ね科挙にトップ合格したのだった。しかも君玉には、とある大きな秘密があって…!?
私は知らなかったのですが「再生縁」というのは有名な物語で、中国を中心にドラマ化や舞台化が何度もされているようです。そんな物語を、少女漫画で描いたのがこちら。主人公は、宮廷で医者をしていた父を持つ少女・孟麗君。父に勉強を教わり、日々のびやかに楽しく暮らしていたのですが、ある日突然父が無実の罪で投獄されてしまいます。またその手は娘である麗君のところにまで伸び、麗君は命からがら逃亡。途中で川に飛び込み、死にかけますが身麗しい良家の若君に助け出されます。その後彼女は無実の罪を着せられた父を助けるため、宮廷に入り込むことを決意。その手段として取ったのが、男装して科挙に合格し、父を貶めたと思しき皇帝の貴妃に近づくというものでした。元々父から勉強を教わっていたこともあり、麗君は余裕で合格。しかもトップ合格というオマケつきで、早くも皇帝に近い場所からそのキャリアをスタートさせます…
投獄されている父を助けるために、男装して科挙に合格し、宮廷内に潜入しつつ父を助ける道を探っていくというドラマ。もう設定の段階で勝ちという感じで、盛り上がらないわけがありません。また単に宮廷内に潜り込むというだけでなく、さまざまな人間関係の糸を物語内に張り巡らせ盛り上げてきます。例えば追っ手から逃げたところを助けてくれた命の恩人が、皇帝の貴妃から忌み嫌われる心優しき皇太子であったり、皇太子の命を狙う刺客が麗君の許嫁であったり、様々。また何やらあやしげな占い師なども配置して、どこからでも物語を展開していけそうな気配があります。

皇太子と思わぬ形での再会。しかも相思相愛だったりする。ただしヒロインは身分を明かすことができないので、恋物語は容易には進まない。
キャラ配置に、男装という設定、人間関係から権力配分など、どれをとっても安心の内容。描くのも、実績十分の滝口琳々先生(姉妹)ということもあり、抜群の安定感を誇っています。元々の物語が、少し懐かしさを感じさせる少女漫画チックなストーリーなのだろうと思うのですが、そこに被せてくるように滝口先生の描き方もちょっと古めな少女漫画風。今ではあまり見かけることのなくなった、語尾に♡(ハートマーク)や♪などが当たり前のように描かれています。他だとちょっと違和感あるかもしれませんが、少女漫画自然保護区の秋田書店で、このストーリーとのコンボとなると、抜群のハーモニーを奏でてくるから不思議。そういったものが苦手でないのであれば、楽しむことができると思います。
【男性へのガイド】
→話自体は良く出来ているとは思いますが、わざわざこれをチョイスして読むインセンティブはないような気がします。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→手堅く面白いです。2010年になってもこういう雰囲気の作品を読めるってのはありがたいことなのかもしれません。雰囲気的には「彩雲国物語」(→レビュー)みたいな感じ。というかそっくり。
作品DATA
■著者:滝口琳々
■出版社:秋田書店
■レーベル:プリンセスコミックス
■掲載誌:プリンセスGOLD(2009年11月+12月号~連載中)
■既刊1巻
■価格:400円+税
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