
こめかみからプスプスと
片戀モヤモヤ
この湯気瞬間にパックして
あげたらとどくかな
■表題3部作をはじめ、初期短編集4編を収録。それでは表題作をご紹介。
心の中に高校生を潜ませる教師のあたし。時折ふと、教師であることを忘れてしまうことがある。母校へなど赴任してきた物だから、時々、十年前の自分が心の中に滑り込んでくるのだった。そんな彼女に思いを寄せるのは、園芸部の男の子・桜井君。どこかドライで掴みどころのない彼からの告白に、あたしの心は動き出す…。高校を舞台に広がる、片恋連鎖反応の行方は…!?
河内遙先生の5社リレーフェアのラストを飾るのがこちらの作品。スタートはレビュー致しました「夏雪ランデブー」(→レビュー)、続いて太田出版の「関根くんの恋」、続いて芳文社から「縁側ごはん」、そして集英社から「はてなの花」という順番になっています。一応「はてなの花」はレビュー予定ですので、お待ちいただければ。芳文社の「縁側ごはん」ももしかしたらレビューするかもしれません。「関根くんの恋」はエロFなんでやらない方向で。エロFやBIRZとかフェローズあたりは女性向けでも全然いいと思うんですけどね、ちょっと予算と時間の関係で…。
さて、それでは内容紹介のほうに移りましょう。表題作は3編1セット。園芸部のメガネ男子・桜井くんから突然告白された教師の小野先生。心の中に高校生の自分を潜ませる彼女と、そうとは知らずに恋をした高校生、そしてそんな彼に想いを寄せる同級生の女の子、各話視点を切り替えながら、それぞれの想いを描き出す形で、片恋物語は進んでいきます。その他河内先生の初期の読切りもいくつか収録されています。再婚した親の連れ子姉妹を描いた「DOOWUTCHALIKE」や、夫の浮気に悩む兄嫁とのドライブを描いた「兄嫁の憂鬱」など、シチュエーションは様々。他にも4ページ程度で終わってしまうようなショートショートも収録されており、河内先生の白泉社での歴史がまるっとわかるような内容になっています。

誘う口実に「田植え」って凄くないですか?この感性に一発でもっていかれました。
表題作は片戀フューチャーということで、お互いの会話のやり取りからドラマティックに展開していくというスタイルはとらず、あくまで己の心情を描き出すという形がとられています。「相手のこんなところがいいなぁ」とか、「相手のこんなところが不思議だ」とか、「自分のこんなところはちょっと…」とか、淡々と思考をくりかえしながら気づかぬ間に進行している関係が、なんとも味わい深いという。河内遥先生っぽいというかなんというか、独特の雰囲気が今作でも出ております。というか河内先生がメガネ男子を描くって時点で勝ちなんですよ、はい。
表題作は文句なしに面白かったのですが、その他は人によってかなり好みが出そうな内容。ショートショートとかどうなんでしょうね。また過去に描いたお話に関しては描線も粗く、連続して読んでいるとちょっと違和感を覚えてしまいます。昔の方が丸み帯びている絵で、現在の方がよりシャープになっているという印象。そんなに変化しているイメージがなかったので、こんなに変えているのかと、驚きました。
【男性へのガイド】
→男性に向かないことはないと思いますが、どちらかというと女の内面を描き出したようなお話が多く、女性の方がより楽しんで読むことが出来るように思います。
【私的お薦め度:☆☆☆ 】
→表題作は好き。しかし残り半分の読切りたちはちょいと評価が難しいところ。大判コミックスということで、コスパを考慮してこんなもんで。
■作者他作品レビュー
*新作レビュー* 河内遙/原案:墨染蓮「ラブメイク」
*新作レビュー*河内遙「へび苺の缶詰」
作品DATA
■著者:河内遥
■出版社:白泉社
■レーベル:花とゆめコミックススペシャル
■掲載誌:シルキー、コーラス
■全1巻
■価格:914円+税
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