
だけど俺は恋すると同時に
失恋してしまったのだ
■剣道部の百瀬は、先輩である皆川に憧れを持っていた。なんとなく目で追ってしまう皆川の周りで、ただ一人だけ纏う雰囲気の異なる存在がいた。時折不機嫌になる皆川の、その感情の揺れの原因を作っているのは、恐らくこの池田という男だ。そんなある日、百瀬は図書館で池田とはち合わせる。どうにも池田のことが気に食わない百瀬は、足早に立ち去ろうとするも、なぜか呼び止められ「お前の気持ちを知っている」と、池田に皆川と付き合っている事実を見せつけられる。百瀬⇔皆川を起点に、かわるがわる登場する連立方程式の恋模様…
館野とお子先生のBL作品でございますよ。オススメされた作品のレビューが溜まっているというのに、思わずジャケ買いした新作のレビューをするとかほんと腐ってますよね、私。ということで、「変わる世界」のご紹介です。舞台となるのはとある高校。剣道部の先輩と後輩、そしてその先輩と付き合う友人。そんな二人の情事を目撃し、こちらに興味を持ってしまう同級生。それから生徒との距離感に悩む教師。剣道部の先輩・皆川と、その後輩・百瀬を起点に、様々な青春の恋模様を描き出す学園ストーリーとなっています。

健気な後輩は無条件でかわいいです。静かに流れる物語でも決して単調に薄味にならないのは、絶妙な間の取り方と、こういうアツいキャラがいるから。必要以上のことは描かない、そのスマートさが素敵。でも描いてるキャラは全然スマートじゃないって言うね。
女性はほぼ登場しません。男子校というワケでもないのに、メインキャラは男のみ。そこに剣道部ということで、結構暑苦しそうなイメージが湧いてきていたのですが、全然そういった汗臭さは感じさせません。むしろ話の描き方から、ドライな印象すら受けました。一応1話1エロという感じなのですが、局部描写がないぶんこれといった嫌悪感もなく読み進められましたし、個人的にはかなり好印象。表紙から受けた感覚は間違いじゃなかったんや!
白ベースで、台詞回しも必要最低限。ごみごみしておらずスッキリ飄々とした話運びが、読んでいて気持ち良かったです。だからといってキャラまでもが淡白になっているなんてことはなく、そこはしっかりと主張。この年齢独特の、変なところ真面目で、基本的にはバカっていう性質が、よく描かれているなと思いました。己のしていることに対し、常に問いかけを用意していたり、わけの分からないところで葛藤をしていたり、そして共通しているのは、なんだかんだでみんなピュア!悩ましいその姿が、ほんとに青春やなぁ(しみじみ)と。トキメくのではなく、どちらかというと微笑ましく見守り、結果ほのぼのという、そんな素敵な一冊でした。
【男性へのガイド】
→BLでエロありですが、こういう淡々とした雰囲気が好きな人もいるはず。BLだと割り切って読めば、結構いけるんじゃないかと思うんですけどね。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→たぶんこの先生の作風が私にあっていたのかな、と。他の作品も読んでみたくなりましたね。こういう雰囲気の作品は好きです。
作品DATA
■著者:館野とお子
■出版社:フロンティアワークス
■レーベル:ダリアコミックス
■掲載誌:Daria(2009年6月号~2010年4月号)
■全1巻
■価格:600円+税
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