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Tag [新作レビュー] [オススメ] 2009.02.18
195865.jpg河村恵利「花の君参る 上杉景勝室*菊姫」


お役に立てないし 力もないし
ただ案じるしかできないけれど
どうかずっと
殿のお傍で咲かせてください……!



■上杉謙信の没後、三郎景虎との一年にも及ぶ跡目争いの末、勝利した景勝。その内乱は、同時に上杉家と武田家の婚姻による同盟を成立させた。その時武田から、景勝の元へ嫁いできたのが信玄の六女・菊姫。景勝は、美人だと評判だった菊姫に侍女に目もくれず、菊姫を一目で気に入る。一方の菊姫も、景勝の実直さに魅かれ、すぐにふたりは打ち解ける。仲睦まじく過ごすふたりであったが、時は戦国時代。織田信長の隆盛に武田家の滅亡、羽柴秀吉による天下統一、そして徳川家康の台頭。めまぐるしく変化する時代の流れに、ふたりは翻弄される…。

 上杉謙信の息子で、謹厳実直な景勝に嫁いだ武田信玄の娘・菊姫の、波乱に満ちた生涯を描いた歴史ラブロマンでございます。同盟(武田家が織田信長に対抗するため)のために、かつての敵方であった上杉家に17で嫁いだ菊姫。政略結婚ながら、お互いに相手を気に入り、やがて賢夫人として敬愛されるようになります。しかしながら子宝に恵まれない。やがて情勢の変化によりふたりは離れて暮らすように…。景勝のことを愛しているがゆえに、思い悩む菊姫。菊姫、そして上杉家のことを真剣に考え、懸命に当主として振る舞う景勝。波乱に満ちたふたりの愛を、河村恵利が描き出します。
 
 一応歴史ものですが、歴史に明るくない私でも十分に状況を理解しながら読むことができました。モデルがモデルだけに、魅力的なラブロマンスにしやすかったのもあるのかな。実際はどうだったのかは知りませんが、この作品は、良かったです。どうせなら1巻まるまる使って描いて欲しかったのですが、そこまでネタはないのか。半分が「花の君参る」で、残りの半分が、跡目争いの相手である三郎を主人公に据えたお話「望楼」、そしてもう1編短編が収録されています。


【オトコ向け度:☆☆☆  】
→生涯一人を愛し抜いたヒロインに、実直な相手。恋愛に傾斜した作品ですが、こういう人物、こういう関係は、きっと男性も好きでしょう。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→良かったです。あくまで相手本位なヒロイン、素敵です。加えて歴史的背景もスッキリ描かれていてわかりやすい。自分みたいな人間にはありがたいです。


作品DATA
■著者:河村恵利
■出版社:秋田書店
■レーベル:プリンセスコミックス
■掲載誌:プリンセスGOLD(2008年9月号~11+12月号,2009年1月号)
■全1巻
■定価:400円+税

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