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Tag [オススメ] 2010.05.11
1102905687.jpgK「もういーよ」


届かなくなるなんてことないよ
やっぱり
お前の声が一番うるさい



■新聞部所属の女子高生・小川里。彼女の目下の気がかりは、幼なじみの片岡が周囲から孤立しがちなこと。生まれつき人並み以上に耳が良い片岡は、雑音にさらされると音酔いし、周囲の人間の会話も全部聞こえてきてしまう。そういった状況ゆえに、彼は時々要らぬ中傷を受けてしまうときがあり、今では常にイヤホンで耳を塞いでいる。そんなある日、好奇心旺盛でやたらフレンドリーな新聞部の近野先輩が、片岡と里に、とあるお願いをしに来る。学校で噂になっている怪現象の原因究明に協力してほしいというのだ。乗り気でない片岡だったが、里と近野の熱心な誘いに折れ、一緒に噂の西校舎に向かうのだが…!?

 K先生の初単行本でございます。おめでとうございます。投稿作品がそのままシリーズ化し、そして単行本化までしたという変わり種。それでは内容のご紹介を…ヒロインは、新聞部所属の女子高生・里。彼女には、少し変わった幼なじみがいます。それが、人一倍耳の良い片岡という男の子。その耳の良さゆえに、時折あらぬ中傷を受けることがあり、彼はいつしか孤立するように。そんな中、新聞部の先輩で好奇心の固まりのような人・近野が、新聞記事のためと、最近話題になっている怪事件の真相究明を手伝って欲しいと二人に持ちかけるのでした。里は新聞部員ですからもちろんOK、そして片岡も流されるように手伝うことに。その後も事あるごとにかり出されるようになった片岡は、それをきっかけに段々と周囲と、そして里と打ち解けてきて…というお話。


もういーよ
何かにかこつけて片岡を誘おうとする里。「せめて片岡に普通の学生生活を送ってほしい」なんて思ってるのですが、それは幼い頃の約束があったから。今もそれを忘れずに実行。それってすごく愛されてるってことですよ、片岡くん。その一貫した優しさがあるから、安心して物語を見ていられるのです。


 新聞部員が、様々な不思議現象・噂の真相を暴いていくという話をベースに、そこに関わる人間たちの優しい感情・淡い想いを瑞々しく表現。アヴァルス掲載なのですが、掲載作品にありがちなクセの強さは全くなく、むしろ男女問わず全年齢で楽しめるような物語となっています。描き出すのは優しい感情。とはいっても、雰囲気の良さでぼやっと語るような作風ではなく、描く所ははっきりと描く。漫画というよりも、アニメーション映画を見ているような感覚でした。1話1話が独立していることもあってか、それぞれの話にそこまでの深みはないものの、わかりやすい感動がわかりやすい形で提示されるため読後感は非常に良いです。恋愛は絡みつつも、描かれるのは恋愛以前の関係・感情であり、また物語で描かれる人間関係も優しさに満ちあふれたもの。食いつきやすさは抜群ですし、こういった物語を嫌だという人は少ないはず。
 
 謎とその解決を軸としながらも、1話完結であるために、人物配置とその関係性はミニマム。いや、関係性自体は多様でバリエーションに富んでいるのですが、それがしっかりと完結しているのです。小さな世界で物語が描かれているというか。あまりに都合良くキャラが配置されているので、どうしても作り物っぽく感じてしまう人もいるかもしれませんが、私はむしろそれだからこそ良いと思うのです。別に全てが自然である必要はないし、物語・絵の輪郭がハッキリしているためか、全体的にデフォルメ感が出ており、ならばそれにとことん溺れてやろうじゃないか、と。まぁとにかく何が言いたいかというと、好きな作品なんですよ、ということです。


【男性へのガイド】
→少女漫画を目指したらしいのですが、むしろヒロインに思われる片岡おいしいです。これは男性でも全然いけるはず。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→深みには欠けるけれど、味付けはしっかり、そして濃すぎずいい塩梅で、丁寧に。個人的にはヒットでした。これは次の作品も楽しみです。


作品DATA
■著者:K
■出版社:マッグガーデン
■レーベル:ブレイドコミックスアヴァルス
■掲載誌:アヴァルス(2008年10月号~2010年3月号)
■全1巻
■価格:571円+税


■購入する→Amazonbk1

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From:  * 2011/05/16 21:31 *  * [Edit] *  top↑

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