神尾葉子「虎と狼」(1)うまい飯に釣られるのは当然だろ
友達だろーが
教師だろーが
■BL好きの女子高生・美以は、唯一の肉親である祖母の営む定食屋を、毎日お手伝いしている。そんなところにある日、お互いを「トラ」「オオカミ」と呼び合う2人の男性客がやってくる。美しいその姿と、ただならぬ関係を思わせるその2人に、思わず魅入ってしまった美以。その一夜を最後に、二度と会うことはないかと思っていたら、翌日になんとトラに再会。思わずまたご飯を食べに来ないかと誘ったら、トラも大層美以の食堂の料理を気に入ったらしく、喜んでついてきた。その後も、トラとオオカミはたびたび食堂を訪れるようになるが…!?
「花より男子」、「キャットストリート」(→レビュー)の神尾葉子先生の新作でございます。少年誌での連載を終え、前にいたマーガレットに出戻りという形。今回もまた日常的な舞台をベースに、非日常的展開で魅せます。今回の主人公は、唯一の肉親である祖母の営む食堂で、毎日お手伝いをしている女子高生・美以。そんな町の冴えない定食屋にある晩、お互いを「トラ」「オオカミ」と呼び合う美しい男性客2人が。おいしくご飯を食べるトラに、一切料理にクチをつけないオオカミ。BL好きの美以には、そんな二人の一挙手一投足に釘付けになります。そして明くる日、美以は町中でトラと再会。以来二人とは、料理で繋がる不思議な関係に。しかし仲良くなってきたのも束の間、彼らの大学卒業によって、別れの日がやってきてしまいます。しかしその後、2人とは思わぬ形で再会することに…!?という流れ。
偶然が偶然を重ねる、「ありえない」「できすぎ」の連続であるのですが、だからこそ神尾葉子作品は面白いしやめられない。そこを突っ込んだら負けなのです。美術の作品創作に熱中するあまり、食事を忘れた倒れてしまったトラを、オオカミが保護したまたま美以の店にやってきたという奇跡から、この物語ははじまります。ちなみにオオカミというのは大上で、トラは虎次のこと。物腰柔らかなトラに対し、少し気難しいところのあるオオカミ。オオカミは大企業の社長の息子でありながら、それに反発し国立大に通っており、また家庭の味というものを知らず、普通の料理は一切口にしないという変わり種。そんなトラとオオカミの胃袋を、美以がガッツリ掴んだというところで第1話は終了。その彼らと第2話で別れてしまうのですが、意外な形で再会を果たすことに。なんと彼らが、美以の学校の新任教師としてやってくるのです。生徒と教師ものとしてはありがちなシチュエーションではあるものの、そこまでの過程があまりにも特殊であり、同時にその過程を用いたからこそ、相手役の教師を二人用意することに成功。神尾葉子先生ならではの力技です。何はともあれスゴい。

悔しいけどカッコいいのですよ、神尾先生の描く男って。現実にいたら絶対面倒くさいだろって面々でも、素敵に輝かせてしまうという。
さて、ここからどう展開していくのかはさっぱり。まだ恋愛感情の芽生えはまったくなく、如何様にも展開できそうではあります。また単にそれだけで話を回すのではなく、食堂が地上げの対象になっており、しかもそれをけしかけているのがオオカミの父親の会社という設定を用意。更にヒロインは両親と死に別れた時のトラウマを持っており、これが大きく物語に影響を及ぼしてきそう。つまり、様々な仕掛けが1巻でセットされ、後は好きな時に発動できますよ、という状態であるという。どの程度まで続くのかはわかりませんが、展開的に飽きることはなさそう。
今回のヒロインは、芯は強くもトラウマを抱え弱さも内包しているというタイプ。今までのの神尾作品のヒロインとは異なる…というか、全てをミックスしたようなキャラクターになっており、どういった振る舞いで物語を駆け抜けていくのか今から楽しみですね。神尾作品の良さは、ヒロインの意思の強さにあります。その姿に、心打たれる。非現実的展開は、結果としてヒロインの心の強さを際立たせることになるため、やはりこういった展開というのは好相性なのだと思います。そんな彼女を支えるのは一体誰になるのか。神尾葉子作品は、最初に近づいてきた男性が結果噛ませ犬になって、最終的に黒髪とくっつく傾向(「花より男子」「キャットストリート」より)があるので、今回もオオカミ本線なんじゃないですか?と勝手に予想。果たしてその結果やいかに。
【男性へのガイド】
→現実を模したファンタジーなのだと割り切って読みましょう。テンポは良いので、読みやすさはあると思いますが、敢えてここから神尾葉子作品に触れなくてもいいかなぁと。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→この力技の連続がいい。なんだかんだで読めてしまうあたりは、まさに神尾マジック。別マ連載ですし、続くかどうかはわからないですけどね(笑)個人的には、別マよりもマーガレットで受けそうという印象があります。どちらかというと、「花より男子」に近い印象。その感覚で読んでもらえれば。
作品DATA
■著者:神尾葉子
■出版社:集英社
■レーベル:マーガレットコミックス
■掲載誌:別冊マーガレット(平成21年3月号~)
■既刊1巻
■価格:400円+税
■購入する→Amazon







