
じゃあ1位だったころのおまえが
今まで何を生み出し
誰に何を与えてきたんだ?
■容姿端麗、成績優秀、運動神経抜群…学校のみんなからはミスと呼ばれ、憧れのマトになっているしずく。そんな完璧な彼女の前に、勉強でも運動でも容姿でもしずくの勝る女の子が、転校生として現れた。今まで周りを見下し生きてきた彼女にとって、初めての経験。苛立ちを募らせていく中、彼女の前にある日突然、死神のハルが現れた。彼から手に入れた禁断の力が、処女の黒い欲望に火をつける…
牧野あおい先生のデビューコミックスです。表題作をはじめ、読切り4編を収録。それでは少しずつ内容をご紹介致しましょう。表題作は、成績優秀・運動神経抜群・容姿端麗の完璧な少女が、ある日死神に出会い、「望んだ相手を消す権利」を得るという事から始まる物語。学校帰りに裸足で帰宅中、親切に靴を貸してくれる男の子と出会い…という「7年後の虹」。些細なことがきっかけで、スクールカースト最下層に転落したヒロインが、上位層の男の子と仲良くなり…という「サヨナラ天使」。学校に馴染めない少女が、ある日不思議な小学生の男の子に出会い…という「青のツバサ」。どれもスクールカーストやいじめなどをテーマに、少女たちの心情・これからの生き方を描き出すストーリーとなっています。

個人的にお気に入りだったのが、「7年後の虹」。あまり見ない設定・展開で新鮮でした。こういう「自分が言うとか、恥ずかしくて無理だろ…」とかいうようなクサい台詞は頻発。ムズかゆくなります。
ストーリーは、どれも恋愛色が強くなく、学校での自分のポジションや身の振り方などに集中したものになっています。恋愛メインで描かれているのは、ひとつもないのではないでしょうか。軸ではなく、あくまで付随的なもの。だからこそ、甘くなりすぎず、ほどよい恋愛模様を楽しむことができるようになっています。その代わり、メッセージ性が強め。ラストに物語で描きたかったであろうメッセージというものが提示される展開が多く、ゴール設定からの逆算で描いていったかのような理路整然っぷり。優等生的なメッセージだとしても、新人さんでこれだけのレベルでまとめあげられるってのは結構すごいのではないかと思います。ただここ最近では珍しいぐらいに、クサい展開が多いですけどね。これをどう受け取るかは読んだ人次第。教育的には良さそうなものの、大人になってこういう物語を見せられると、ちょっと恥ずかしくなりすぎるかも。
デビューコミックスですが、すでに方々で話題になっているこちらの作品。できるだけフラットな視点で読み、フラットな視点から感想を書きたかったのですが。どうでしょう。話題になった部分は置いておいて、構成の仕方は上手いなぁと普通に驚きました。だからこそ、こういった形で話題になってしまったのはもったいなかったなぁ、と。あと全然関係ないですが、もう1話収録するなり、かきおろし収録するなりで、ページ数稼いでほしかったですかね。ページ数数えてないのでハッキリとはわからないのですが、なんとなくボリュームに欠けるような気が。
【男性へのガイド】
→クサいのに耐えられるのであれば、それなりに読める内容なのでは。
【私的お薦め度:☆☆☆ 】
→こういうクサい展開は個人的に好き。ただときにそれが過剰になるので、恋愛展開で中和してもらえれば。恋愛メインのお話読んでみたいですね。こじんまりしつつも、まとめ方は上手。やっぱりクサいけど。
作品DATA
■著者:牧野あおい
■出版社:集英社
■レーベル:りぼんマスコットコミックス
■掲載誌:りぼん
■全1巻
■価格:400円+税
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