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Tag [新作レビュー] 2010.05.16
1102905468.jpg武藤啓「っていうか恋じゃね?」(1)


人との出会い
一度目は偶然
二度目は縁
そして三度目は



■母親と自分を残し、金目のものを全部持って逃げていった父のせいで、男が大嫌いになった姫森一乃。彼女が想いをよせるのは、幼い頃に出会った美しい女性・しの。その人に再び出会える日を、日々夢見ている。そんな彼女には、最近とある悩みが。通学先の高校が、この度女子高から共学になり、男子と一緒に学校生活を送らなくてはいけなくなってしまったのだ。不安を募らせる女子たちのことを思い、頼られ体質の一乃は気合い十分に男子に立ち向かっていくけれど、当の男子たちは対立する気は毛頭なし。クラス委員に選ばれた田中新を相手に、一乃の気合いは空回りの連続で…!?しかも新には、誰にも言えない大きな秘密があって…

 武藤啓先生の新作でございます。「Oh!myプリンス」(→レビュー)の連載が終了してから、新作が楽しみで仕方なかったのですが、今回はなんと「男の娘もの」だそうで…え、男の娘?今流行りの男の娘を、武藤先生もやってきますか。そういえば、表紙も前作とは異なりなんだか今風のスタイリッシュなデザインになっています。それではそんな「っていうか恋じゃね?」の内容の方をご紹介していきましょうか。
 
 ヒロインは、大の男嫌いの姫森一乃。しっかり者で人一倍責任感が強い彼女は、学校でも頼もしいヒーロー的な存在として、女子たちから一目置かれています。そんな彼女の前に現れたのは、どうにもノリが軽い男の子三人組。一緒にいた友達に、男子側の一人が一目惚れしたらしく、積極的にコンタクトを取ってこようとします。そんな彼らを何とか振り払った一乃だったのですが、後日思わぬ所で再会を果たすことに。今年から共学となった一乃の通う学校で、あろうことか同じクラスになってしまったのでした。憧れの女子高の生徒たちを目の前に色めきたつ男子たちに、はじめての共学に不安を抱く女子たち。なんとか彼女たちの不安を取り払おうと、一乃は気合い十分にクラス委員選に望むのですが、紆余曲折あり、最終的に選ばれたのは、先日の3人組の一人・田中新。最初は男ということで、邪険に扱っていた一乃でしたが、彼の考えを少しずつ知ることで、協力の道を模索するようになっていきます。未だ打ち解けない男女たちを、どう打ち解けさせていくのか、二人の奮闘がスタートしました。


っていうか恋じゃね?
頼りがいのある、リーダー肌のヒロイン。その佇まいは、「会長はメイド様!」(→レビュー)の鮎沢さんにそっくり。意志と責任感の強さを表すのには、黒髪できちんと縛るというのが最も適しているのかも。

 
 あれ、どこに男の娘要素が?と思われたかもしれません。ヒロイン・一乃には想いをよせる…というよりも、淡い憧れの想いを持つ女性がおり、その人との再会を夢見ながら日々を送っています。そして再び、彼女の前に姿を現したその女性・しの。しかしその正体は、クラスで対立している新の女装した姿で…という設定が。恋した女性は、クラスで敵視していた男子で…という状況になるのですが、現在のところその繋がり部分はあまり描かれず、あくまで学園物語がお話の軸となっています。しのは時折現れる心のオアシスで、物語中のイベントには直接絡んできません。これから絡まざるを得なくなるのでしょうが、いかに上手く使いこなせるかが鍵といったところでしょうか。しかしながら、どうして一乃はその女性・しのに憧れを抱くようになったのか、そして新はなぜ女装という形で一乃に近づいたのか、そのあたりの説明がやや希薄。そこを“売り”とするのであれば、もう少し感情移入しやすいように丁寧に説明するなりすれば良かったと思えたので、ちょっともったいなかったな、と。ただ過去に会った女性としのは、どうも別人クサいんですよね。それがどうこれから物語に絡んでくるのかは楽しみ。これで終わりって事はないはずです。


っていうか恋
脇役が魅力的なのもまた、この作品の売りのひとつ。中でも一乃のことが大好きで仕方ないワガママ姫・みちるが大好きです。こういう小動物のようで奔放なキャラ、大好きなんですよ。


 前作も脇役がなかなかいい味を出していたのですが、今回も素敵な脇役たちが勢揃いしています。一乃の周りには、一乃に想いをよせるワガママかわいい女子や、引っ込みがちで笑顔がかわいい女子、素直になれないツンデレ女子。男子も、惚れたら一直線の猪突猛進型男子、興味は専ら二次元のオタク男子と、物語を彩るのには十分すぎる面々。普通に学園コメディを展開しても、十分面白い話になりそうです。現在はそこをベースに展開しているので、それなりに面白いのですが、肝心の男の娘が本筋に絡まない&ヒロインが極端に動きすぎているということで、ややチグハグな印象も。これからいかに融合・中和し展開できるのか、要注目です。


【男性へのガイド】
→恋愛要素は薄めで、飽きた独特の耽美さは比較的抑えられています。学園コメディ的な部分を切り出すと、読みやすい部類に入るのでは。
【私的お薦め度:☆☆☆  】
→面白くなりそうな要素はそこかしこにあるものの、なんとなくまだチグハグな印象。私は好きなので買い続けます。また続刊レビューにてフォローできたら良いですね。


作品DATA
■著者:武藤啓
■出版社:秋田書店
■レーベル:プリンセスコミックス
■掲載誌:プリンセス
■既刊1巻
■価格:400円+税


■購入する→Amazonbk1

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