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Tag [新作レビュー] 2010.05.30
1102905572.jpg高殿円/雪広うたこ「魔界王子devils and reali」(1)


「さぁ遠慮なくオレを選べ
 そうすれば必ずやお前に…」
「で 言いたいことはそれだけか?」



■頭脳明晰、超リアリストの貴族・ウイリアムが、学校の休暇で家に戻ると、そこには人も物もなくなっただだっ広い屋敷と、家令のケヴィンが一人いるだけだった。面倒を見てくれていた叔父の、事業での失敗。財産はすべて差し押さえられ、屋敷だけが残ったというのだ。これでは来期の授業料が払えない。ウイリアムは必死で屋敷の中を探し、辿り着いたのは開かずの扉の前。何かあるかもしれない…扉を蹴破って部屋の中に入ると、そこには怪しげな魔法陣が。そして突然現れた、怪しげな男。彼は魔界の大公爵・団リオンだと名乗り、魔界の代理王として私を選べと言うのだった…

 高殿円先生原作の、ハイテンションなファンタジー作品でございます。タイトルが「魔界王子」って、なんか安直すぎて恥ずかしくない!?という感じなのですが、作者さん的にはもうタイトルはこれしかない!となったようで。物語は、イギリスの名門家の跡取りで、頭脳明晰のリアリスト・ウイリアムの前に、突如として魔界から魔界の代理王候補たちが現れるというもの。いきなりでよくわからないかもしれませんが、魔界では、魔界の王が眠りにつくということで、その間の代理王を選定する選挙のようなものを行っている最中。そして人間界のウイリアムは、その投票権を持つソロモンの血を引いている存在であるのです。そのため、代理候補たちは自分に投票をしてもらおうと、あの手この手を使ってウイリアムに近づいてきます。


魔界王子
この利己主義なところが、単なる巻き込まれものにさせない。この主人公の性格は、ほんとうに美味しいなぁと思います。


 序盤は魔界での超絶バトルを展開し、「やっぱりこういう異世界ファンタジーになるのね…」なんて思っていたら、主人公の「どうでもいい!帰る!」宣言によって現実世界に逆戻り。その後も頑に魔界に行くことを拒みつづける主人公のお陰で、代理候補たちの戦いの場は、なんと現実世界の学園になります。代理候補たちはこぞって人間の格好をして学園に入学。生徒として、主人公の側にいようとします。気がついたら、学園バトルコメディに。この転換の仕方は上手で面白いですよね。魔界の代理王選定とかいうとっつきにくい題材を、学園の中に押し込めてしまい、しっかりと読めるものにしてくるという。
 
 この転換を可能にしているのが、主人公の気の強さ。魔界の代理候補たちが目の前に現れて、魔術に依る超絶バトルを繰り広げても、決して気後れすることなく、むしろ上から目線で対峙していきます。決定権が自分にあるということと、「やめろ」というと代理候補たちが魔法を使えなくなってしまうという設定、そして貴族のプライドの高さが上手く融合し合い、気がついてみれば彼が一番の支配者キャラに。もうウイリアムが代理王やっちゃえばいいんじゃね?と思わせるくらいです。1巻の時点では、まだ助走を始めただけという感じで、これから更に面白くなりそうな予感がしています。


【男性へのガイド】
→男性のみの登場で、そっち系の女性が喜びそうな内容。楽しいお話ですけどね。
【私的お薦め度:☆☆☆  】
→とっつきにくそうな題材を、学園を舞台にすることで、しっかりと多くの人が読める作品に仕上っている。お上手。


作品DATA
■著者:高殿円/雪広うたこ
■出版社:一迅社
■レーベル:ゼロサムコミックス
■掲載誌:ZERO-SUM(平成21年12月号~)
■既刊1巻
■価格:552円+税


■購入する→Amazon

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コメント

私の好む絵柄の漫画はなかなかなくてずっと探してたんですけどやっと見つかりました!
From: ぴょん吉 * 2011/05/16 17:38 * URL * [Edit] *  top↑

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