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Tag [続刊レビュー] 2010.06.13
作品紹介→椎名軽穂「君に届け」
9巻レビュー→爽子の告白などに関して思うことを少々…《続刊レビュー》「君に届け」9巻
10巻レビュー→ひとつの区切り、新たなスタート《続刊レビュー》「君に届け」10巻



1102916023.jpg椎名軽穂「君に届け」(11)


爽子ちゃんがライバルで
良かった



■11巻発売です。
 風早と気持ちを確かめあえた爽子。夢のような幸せを感じる中、カゲで泣いている子がいるかも…という吉田達の言葉に、爽子はくるみのことを思い浮かべる。ライバルと言ってくれた彼女に、けじめをつけたい。そんな中くるみは、以前爽子に絡んできた女子達と一悶着。その様子を見て、爽子は…。一方風早とは、順調そのもの。そしてついに初めてのデート!?


~完結しても…~
 11巻発売、完結しました(え?)。すみません、完結していないです。でもそれくらい、個人的には一段落ついたな、という印象の強い巻でした。だって、大好きなくるみちゃんが収束宣言をしてしまったんですもの。なんかこれから登場回数がグッと少なくなりそうですよ、はい。くるみちゃんが初登場してから一貫して「くるみちゃんかわいいくるみちゃん素敵」と言ってきた身としては、それは辛い。しかしくるみちゃんについて語るのにも良い機会であります。というわけで今回は、素敵なライバル・くるみちゃんについてアレコレ語ってみようかな、と思います。


~あの容姿は誰のため?~
 中学のときからかわいかったというくるみちゃんですが、高校に入ってからは、見ために磨きがかかりました。どちらを好むかは人それぞれですが、その外見にかける労力は、明らかに現在の方が上。そんな彼女の努力を生み出す原動力となっているのは、想像するまでもなく風早です。しかしこの外見にかけるこの努力、ちょっと素直じゃないというか、なんだかまわりくどさを感じさせる努力なのです。「風早は見ためで判断しない」と言っているように、くるみちゃんは、例えどんなにかわいらしく着飾っても、風早が振り向いてなどくれないことをわかっています。それでも「努力するしかない」と答えているあたり。ここからわかる通り、彼女の外見にかける努力は、風早に好かれるためだけに行っているのではありません。むしろ彼女の行動から見る限り、「私はこんなに風早とお似合いなのよ。だから風早に告白しようなんて考えるのはやめて、私を応援しなさい。」と、ライバルを牽制し、さらには応援者にしてしまおうという意識がそこにあるように思えます。その努力の先には風早はおらず、いるのは他のライバルだけ。なんとも切なく健気な努力じゃないですか。
 

~ずっと見てきたからこそ、わかること~
 そんなまわりくどい努力を重ねるほどに、風早くんのことが大好きなくるみちゃんですが、「風早と付き合う」という未来に関しては、割と悲観的な立ち位置にいたように映ります。例えば悪事がバレた際、矢野ちんの「このこと風早にバラしてもいーのね?」という脅しに対して彼女は、


くるみ2
言えばいーよ風早に!


 と半ば投げやりな感じで返しています。彼女の風早に対する想いから考えると、簡単に折れすぎのような気がします。「やめて!」と言えない、プライドの高さももちろんあるのでしょう。しかしそもそも彼女は、風早と付き合うことをあまり期待していなかったのではないでしょうか。「風早がわたしのことをなんとも思ってないことなんてわかってた」「風早がわたしのこと好きじゃないのくらい知ってる」という言葉からもわかる通り、風早の気持ちが自分に向いていないことを、彼女は当然知っていました。

 それでも少しも望みがないと考えていたわけではありません。体育祭の時には…


くるみちゃん3
振り向かせるなら今だった…
 

 と少しだけ望みを持っていたことも示唆しています。このシーンは体育祭で、爽子を嵌め、風早に爽子をあきらめるようそれとなく訴えかけつつ、さらにその隙をついて告白しようとしていた時。周囲の応援ムードを高め、さらに風早の爽子への気持ちを削いで、それでもやっと「手が届くかもしれなかった」という判断。大好きだから、いつも見ているから、可能性の低さがイヤでも見えてくるのです。見れば見るほど、届かないことを実感する。なんて悲しい。そしてその後明かされる、彼女の決めごとを知って余計に切なくなるのです。
 
 …絶対言わない
 誰にも言わない
 風早が
 わたしをすきになってくれるまで

 どこまでも健気に想いを重ねるくるみちゃんは、本当にカワイイです。爽子の風早に対する想いも確かに強いですが、単純な想いの強さで言ったら、絶対にくるみちゃんのほうが勝ってます。せめてそこだけは勝たせてと、爽子相手に「誰よりも風早のことを見てきた」「爽子ちゃんよりもずっとずっとずっと好きだもん」と、どうにもならないことを口走ってしまう様子とか、もう反則です。構えた中に時折覗く、素直な健気さに、もう簡単にやられてしまうのですよ。


~くるみちゃんと矢野ちん~
 想いを伝えてフラレて以降、くるみちゃんの恋は実質的に終わっていましたが、今回爽子が正式に風早とつき合うことになり、完全に彼女の恋は終わりました。ライバル宣言はしたものの、そのときすでにくるみちゃんはふられており、ライバルであるということはあまり大きな意味を持ちません。それでも終始、彼女は爽子の前でライバルらしく振る舞まっていたのですけれど(それもまたやさしさなのかも)。そしてついに恋の終わりを迎えた彼女を見て、声をかけたのは意外や意外矢野ちんでした。
 
くるみ
 あんた
 アレだね
 あたしが男だったら良かったのにね
 そしたらあんたの汚いところを
 全部わかってやれるのに


 体育祭の時も何気にサシで話をするなど、深い部分でお互いのことを理解している感のある二人。彼女の言う「汚いところ」とは一体何を指すのでしょうか。そのヒントが、この後のピンと矢野のやりとりに隠されているような気がしました。
 
 あたしのは全部計算だからさ
 …根本的にちづとか爽子とは違うのよ

 とにかくなんでも真っ正面からぶつかる彼女たちとは、根本的に違う。計算しつつ、自分は安全な場所にいてやりすごす。そういったメンタリティは、むしろくるみに近いところがあります。それがイコールで、彼女の言う“汚さ”を表しているとは思いませんが、多少の引け目を感じているのは確か。着飾り、計算をする。なんだかんだで似た者同士のくるみちゃんと矢野ちん。11巻の表紙は、まさに組み合わされるべくして組み合わされた、素敵な人選だったと思います。ちょっと派手派手ですけど(笑)
 
 
~これからくるみちゃんは登場する?~
 果たしてこれから、我らがくるみちゃんが本編に登場することはあるのでしょうか。個人的にはこのまま登場しなくても、キレイに纏まっているので良いのですが、やっぱり見れるものなら見たいもの。もし再登場するとしたら、次の2パターンでしょうか。
 まずは爽子との友情路線。ライバル関係は終わった二人。しかしそこを明けてからの関係性がよくわかりません。そのままライバルでいてもいいのですが、ここは敢えて本当の友情を作り出そうという方向。なんて、爽子よりも余程矢野ちんとのほうが友情を築けそうな気がしますが。
 もう一つが、恋愛路線。その最右翼として目されるのが、ケントさんです。11巻、フラグが立っていない気もしないわけですが、うーんどうでしょう。もし彼が相手になるのだとしたら、矢野ちんの言う「汚いところを全部わかってやれる」男という条件はクリアできそうにないですが、それすらも通り越して「わかんないけど全て受け入れちゃう」みたいな方向に行きそうで無問題ですね。しかし個人的には、健気をこじらせて痛い目見ちゃうくるみちゃんが好きなわけで、複雑なところではあります。
 
 
 なんだかもっと色々語れるかと思ったのですが、なんだか長文になった割に中身のない記事に…。でもとりあえず、くるみちゃんが健気で健気でどうしようもないくらいかわいい子だってことを、ちょっとくらいはわかってもらえたかなぁ、と。こんなにも素敵なライバルに出会えたのは久々でした。本当に素敵な姿を見せてもらいました。くるみちゃん、ありがとう!あ、あれ、なんか最終回みたいな終わり…。ま、まだまだ出ますよっ!


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コメント

いつも沢山のレビューお疲れ様です。参考にさせていただいています♪
私もくるみちゃん大好きです!素直になれなくて実は甘え下手。意地悪だけど純粋なところにキュンとしてしまいます。
そこでこのレビューを拝見し、女子として「ん?」と思った箇所があったので、少し個人的なコメントをしてしまいます。
"くるみちゃんが外見を磨いてきたのは牽制のため"とありますが、やっぱりそこは風早くんの為だと思うんです。どんなに外見に左右されないって分かっていても、好きな人には一番の自分をみてほしい。そういう普通の女子の感覚をくるみちゃんほど可愛くても、持っている。そういう普通なところに共感するし、応援したくなるんじゃないかなと思いました。
長文乱文失礼いたしました。これからも頑張ってください!
From: はにー * 2010/06/17 14:46 * URL * [Edit] *  top↑
 コメントありがとうございます。

 くるみちゃんの外見についてですが、「風早のため」というのは、もちろんその通りだと思います。今回の記事で書いたのは、そういった前提は当然あった上で、そこに付随して、周囲を牽制するという意思が生まれているのではないのかな、ということでした。また努力の先には風早がいない、というのは、彼女の見ための変化を生み出すきっかけとなったのは風早であるのに、変化後のその姿には、風早の意思がまったくないという奇妙な状況となっているということを言おうとしたものでした。改めて記事を見直すとかなり断言調で、その他の可能性を否定しているように見えますね…。伝わりにくかったようで大変申し訳ありませんでした。反省します。

 貴重なご意見ありがとうございました。
From: いづき * 2010/06/17 22:35 * URL * [Edit] *  top↑
この作品を初めて読んだのは、1巻の発売直後だったので、4年くらい前だったと思います。そして、このサイトを知るまでは、ずっと爽子の視点で読んでいました。
このサイトを知ってからは、くるみの視点で読むと、全く別の面白さがこの作品にはあるのだということがわかったので、くるみの視点でも読むようになりました。
この巻は、爽子ファン・くるみファンともに重要な回でしたね。

それにしても、いづきさんは、本当にくるみちゃんが好きなのですね。
ここまで彼女の魅力を書けるとは、凄いことだと思います。

私は、彼女はこれからも、恋愛路線で出番がありそうな気がします。
From: シャドー * 2010/06/20 19:38 * URL * [Edit] *  top↑
男漫画が 主流な時代かなぁ。恋愛漫画 男性誌にも あったには あったけれど
女の子は 男性漫画も 読むんだよね。俺も 昔 女性漫画 読んだ事あります。
From: さよなら三角&村石太 * 2011/03/29 10:55 * URL * [Edit] *  top↑

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