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Tag [続刊レビュー] 2010.06.14
作品紹介→小玉ユキ「坂道のアポロン」
4巻レビュー→夏の夜に、ジャズなんていかがです? 《続刊レビュー》小玉ユキ「坂道のアポロン」4巻
5巻レビュー→とっても濃密な…《続刊レビュー》「坂道のアポロン」5巻



1102916105.jpg小玉ユキ「坂道のアポロン」(6)


何も言わんで
終わりを待つのは
やめようと思って



■6巻発売です。
 進級し、別々のクラスになった薫と千太郎。千太郎が松岡のバンドに入ると知った薫は、辛い過去を思い出し、彼を突き放す。険悪な関係のまま迎えた文化祭だったが、舞台裏で彼の真意を聞き、ド派手なセッションで仲直り。そしてその様子を見守っていた律子の心には、意外な変化が。一方、淳兄の部屋に想い人・百合香がいるところを、千太郎が目撃。今度は千太郎と淳兄の関係が険悪になってしまう。千太郎の想いは、そして百合香の想いは。そんな中、淳のもとには一通の手紙が…


~新刊は恋愛色が強いです~
 産休明けになるのでしょうか。坂道のアポロンの新刊でございます。前巻は友情パートでしたが、6巻は怒濤の恋愛パートでございます。初々しい青春臭を漂わせるものから、悲恋を含んだ、昭和らしいロマンスまで、突如として恋愛色が強くなって、もう終始ニヤニヤしっぱなしでした。物語は2軸で展開。千太郎、律子、薫の3人と、淳兄、百合香、千太郎の3人。千太郎は結果的に両方に絡むことになりました。

 
~淳兄と百合香と千太郎~
 物語は淳兄の回想からスタート。60年代という時代背景から、学生運動を巡る淳兄の大学生活が描かれます。この時代の空気感とかは、もちろん体感していないのでわからないのですが、こういった描写があるとなんだか「時代が出てるっ!」って感じがして良いですよね。学生運動については父から話を聞いた程度で、しかも学生運動も下火になっていた頃ですから、「バイトで人の壁になったら放水車で狙い撃ちされてアザになった」とか、どちらかというと参加していない側の話なので、なんだか新鮮です。
 
 その時に落ちてしまった淳兄に、恋い焦がれる百合香。そしてそんな二人を見て、裏切られたような気分になる千太郎。当然のことながら、千太郎には勝ち目がないわけで、完全に噛ませ犬となってしまいます。その後は怒濤の昭和ロマンスですよ。家柄・身分の違いに苦しみながら、それでも想いを寄せつづけるお嬢様。そして電車で見送る際に、一世一代の懸け。ベタすぎます。けれどもそれが良い。この時代背景だからこそ、こういったベタロマンを展開しても、サマになります。けれども古くささだけは、決して感じさせないから不思議。なんでなんでしょうね。


~律子と薫と千太郎~
 一方薫と律子、そして千太郎の3人はこれでもかというほどに初々しい恋模様を展開します。特に今回は、律子が超絶かわいかった。文化祭での一件から、徐々に薫が気になりはじめた彼女。その想いをどうするべきか、薫相手にドギマギする様子とか、もうたまらなくニヤニヤできます。千太郎の事を想っていたときは、とにかくその想いを外に出さずにいたため、見ていてもそれほど印象に残りませんでした。しかし今回は、その時の後悔があるために、少しだけ積極的に。いえ、積極的といっても、本当に本当にささやかなものです。しかしその塩梅が絶妙なんです。すでにフッているということと、主人公にありがちな薫の鈍感さが相まって、この上なくニヤニヤなかけ合いを見ることができました。


アポロン6
…もう知らんっ
薫さんのバカっ!



 余裕がなくなった末の「バカ」とか、最高ですよ。フッておいて、バカですからね。また「バカ」とは言いつつも、呼び方はあくまでさん付けというあたりが、彼女の律儀さというか、真面目さを表していて素敵です。薫は気の毒ですが、鈍感な相手には多少強く当たらないとだめなのです。なんて、今回はもっと気の毒な人が。そう、それが千太郎です。薫の一言から、律子の過去の想いに気づいた千太郎。そのことを律子に言うと、「全然そんなことない」と否定されてしまいます。恥を忍んで聞いてみたら、真っ向から否定。さらに気づかないうちに、噛ませ犬になっていた。千太郎…(´・ω・`) 最初のころは、完全にパワーバランスの全てを持っていっていた彼が気がつけばこんなことに…


アポロン6-2
鈍感な子には
一生教えてやらんもん


 
 律子ちゃん…いや、律子さん。恋をすればするほどに、女の子というのは逞しく成長し、男は恋をするほどダメになる。律子も百合香も、女性は本当に強いですね。いつまでも変われずに苦しんでいる男達をよそ目に、彼女達は自分たちの道を力強く進んでいます。いつの時代も、女性の方が一歩上。そんな彼女たちに気がつけば翻弄されている、情けない男達に、どうにも心重ねてしまっているのかもしれません。


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