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Tag [続刊レビュー] 2010.06.15
作品紹介→京都の女子寮で織り成される、乙女の四重奏:楠田夏子「ことこと かるてっと」1巻



1102915945.jpg楠田夏子「ことこと かるてっと」(2)


旅立ちを知らせる船の
汽笛のように
レンゲが静かに閃いた



■2巻発売、完結しました。
 京都のおんぼろ女子寮・れんげ寮に住む、4人の乙女たち。202号室の3回生・難波、201号室の1回生・万城目、102号室の1回生・茜、101号室の1回生・蓮華。性格も考え方もテンでバラバラな4人だったけれど、部屋に面する壁に開いた穴と、蓮華の共感覚という秘密を共有しながら、友情を育んでいった。ところがそんなある日、茜と蓮華がそれぞれ心にしまい込んでいた過去が、重なり合っている事実がわかって…!?


~完結です~
 2巻で完結でした。1巻登場時には帯に、驚異の新人という文字が踊っていたように思うのですが、今回はやや控えめに「注目の新鋭漫画家」という文字が。トーンダウンしていますが、それでも推すことにはかわりないのですね。いや、実際に、新人さんとは思えない、素敵な物語を紡いでくれました。


~意外な転がり方~
 京都の町を舞台に、女子寮の女の子たちのありふれた日常を描いていくのかと思いきや、今回は一つ大きなイベントがありました。それが共感覚の持ち主・蓮華と、茜の過去。蓮華が共感覚を持つきっかけと、茜の暗い過去が重なり合います。正直こういったドラマチックな展開は予想していなかったので、びっくり。一つだけならまだしも、二つの重い要素をぶつけてくるという、思い切った展開です。ちょっと作りすぎという感もありましたが、どうも最初からこういう展開を狙っていた感もあり(野原蓮華と牧茜って、どちらも「草原を想起させる名字+花の名前」という共通点があったり)、そこに口出しするのは野暮というもの。ただ2巻でいきなりってのは、どうしても急に感じてしまうわけで、願わくば時間が経ってから最大の壁として…という方が盛り上がったし纏まったかも…なんて、2巻完結だとそれも致し方ないのかもしれませんね。


~最後はしっかりまとめてくれました~
 そこからは、また元通りの友情もの。恋愛要素ほぼ完全にカットして、友情のみというのは粋ですよね。1巻は、一人一人の性格や考え方がフィーチャーされた形となっていましたが、2巻はそこから一歩進んで、それぞれの関係性にスポットがあてられます。そして最後は、新たな旅立ちという形で締めくくり。持ちたるポテンシャルからすると、どうにも決まりきらない感覚はあったものの、しっかりと最後はまとめてきてくれました。蓮華とレンゲ草の開花で重ねてくるというのは、わかりやすいメッセージですね。
 
 もう少しだけ、この4人のカルテットを見てみたかったですが、ここは次回作に期待ということで。とても素敵なお話でした。


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カテゴリ「Kiss」コメント (1)トラックバック(0)TOP▲
コメント

質問なんですが、蓮華は幼少時の茜のことを空想のことだと考えていたと思うのですが、茜は4人の共同生活開始時に蓮華のことを昔遊んだ蓮華と気づいていたのでしょうか?
2回読み返したのですが、ここらへんの話がちょっとわかりにくいので教えてください。
From: K * 2010/08/21 01:04 * URL * [Edit] *  top↑

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