
それでも皆
ここで
生きておるのじゃ
■時は戦国時代
山田圭子先生の新作でございます。一人の姫と、忍の少年を描いた、情熱の戦国ストーリー。ヒロインは、北の京と呼ばれ栄華を誇る越前雪代谷の佐倉家の姫・六花。元気を持て余しヤンチャに駆け回る彼女の相手役としてある日、“斑羽連”の子供である少年・琥珀がやってきます。いつしか二人は絆を深めていくのですが、とある事件によって二人の間は引き裂かれてしまいます。上洛の出兵の意思を見せない佐倉家を、足利家は実限り、佐倉家は尾張の織田信長のもとへ行くことに。さらに六花の母は流産の繰り返しで、子の生めない体になり、また側室に男児が生まれたことが決定打となり、父と離縁、親子二人で京に下る事になります。その際に六花は、当然琥珀もついてくるものだと思っていたのですが、斑羽連の意思により、それが不可能に。お互いに厳しい環境の中、戦乱の荒波に揉まれ、逞しく成長。そして…という流れ。

六花と琥珀、二人の仲が盤石であるということが、ある程度わかっているので、離れていて物語が進展してもやきもき感はない。破天荒な二人ではあるが、相性は抜群。
栄華を誇る将軍家の血筋の娘と、異国の血の混ざる忍との禁断の恋…というオーソドックスな方向に進むのかと思いきや、そう安易な方向には流れません。姫は母親の離縁によって、その後ろ盾を失い、紆余曲折あって京にて遊里の下働きとして仕える事に。一方の琥珀は、異色の戦闘集団“斑羽連”の一員として、闘いを重ねていきます。「今縛られているところから逃げ出し、一緒に遠くへ行く」。お互いに同じ想いを持っていたものの、時代と生まれ育った場所によってソレが阻まれる。あまりに厳しい状況が、二人の前には横たわっているわけですが、だからこそ面白いし、盛り上がります。
現時点では、まだまだ出会えそうな気配はありません。それどころか、さらなる厳しさが待ち受けているような気すらしてきます。この時代ならではの不条理さを、上手く物語に落とし込み、しっかりとスパイスとして機能させているのは、さすが。安易な方向にいかないけれど、わかりやすいので、振り落とされる事もありません。一緒に闘い、成長していくのではなく、双方別々の場所で荒波に揉まれ、逞しくなっていくという方向性も、個人的には好き。もう少し、物語を追ってみたいと思いました。てか山田先生の書くヒロインは、真っ直ぐで気丈だから、見ていてとても気持ちが良いのですよ。
【男性へのガイド】
→戦国ラブロマンスではありますが、恋愛一色で安易な方向に…ということはないので、ご安心を。人間としての成長、傷つきを絡めつつ展開は、読みやすさにプラスになるのかも。気の強いヒロインと、強いイケメンを絵に描いたような相手役をどう捉えるか。戦国ものとしてどうかは、あまり知識がないのでどうこう言えませんが。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→山田先生の作品は、個人的に結構ツボだったりします。思っていたよりもストーリーが面白くて、これは続き読みたいです。
■作者他作品レビュー
山田圭子「狐隠れの君」
作品DATA
■著者:山田圭子
■出版社:秋田書店
■レーベル:プリンセスコミックス
■掲載誌:プリンセスGOLD(2010年2月号~)
■既刊1巻
■価格:400円+税
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