ユキムラ「カーディナル・スレッド」(1)
君にも強く強く
繋がっている人間が
いるでしょう?■時は大昭和。帝都に暮らす少年・左月は、父の借金のせいで遊郭に売られた双子の妹・孝水を身請けする日を夢見て、毎日働いていた。そんなある日左月は町中で、異形の化け物と、それを真っ二つにする可憐な少女と、その子を引き連れる妖しい紳士を目撃。思わずその場から逃げ出すも、自宅にてその異形の化け物が現れると共に、その二人組とも再会することになる。人の心が歪むとき、絆という名の糸がもつれて、異形が帝都に現れるというが…!?
ユキムラ先生による、ディスティニーアクションジュブナイルアンドヒロイックファンタジーです。いや、わからんですね。大正~昭和初期の東京を思わせる街を舞台に繰り広げられる、アクションファンタジー作品でございます。主人公は、遊郭に売られた双子の妹を連れ戻すために、毎日仕事に勤しんでいる少年・左月。いつものように働きに出ていた左月は、ある日街中で見たことのない異形の怪物と、それをいとも簡単に真っ二つに斬り倒す可憐な少女を目撃します。そしてその横には、妖しげな男が一人。二人に見られた左月は、危ない気配を感じとり一目散に逃げるのですが、後日自宅にて異形のものが出現。そしてそれを知っていたかのように、先の二人組がその場に姿を現します。そして再び繰り広げられる、異形の怪物とのバトル。そしてあろうことか左月の父親が、その戦いに巻き込まれ、亡くなってしまいます。身寄りのなくなった佐月は、その妖しげな男に導かれるように、彼らの待つ屋敷に向かうことになります。

妖しげな二人組との出会いが、主人公・左月の運命を大きく変えていくことになる。とりあえずまそらちゃん可愛すぎ。妹もかわいいけど、まそらちゃんが。
人と人を繫ぐ絆や縁を「糸」と表現し、それが帝都を覆うように守っているという設定が大前提としてあります。そして人間関係にほつれが生じると、その解れた糸の間から、“向こう側の世界のもの”が出現するようになるという。これが先に出てきた異形の怪物。単純に行けば、この物語は異形の怪物たちと敵対するというだけのバトル漫画なのですが、その間に介在する、人間の様々な意思というものが物語に大きく関わっており、物語の受け皿は非常に広く深いものとなっています。どうも帝都を支配する帝の後継者争いと、左月が関係あるらしく、対立構造としては、帝サイドの人間たちと、左月が拾われる妖しい集団というものになっている様子。その中で、妹を助けることだけを目的としている主人公が、めくるめく運命に巻き込まれながら成長していく様子が描かれていきます。
設定といい主人公といい、モチーフが絆を表す”糸“だったりと、これでもかっていうくらい、少年バトル漫画のそれを行っております。女性向け作品であるのに、可愛らしいヒロインあり、可憐で健気な妹あり、奔放な幼女ありと、女性キャラも充実、腐臭は少なめ。ちっぽけな世界を懸命に守る少年が、戦いを通じて、別れと出会いを経験、いつしか逞しくそして影を背負いながら成長していくという展開が予想され、この辺もまさに王道というところ。ただ主人公は、正義を振りかざすことはないですが。もしこれが少年誌で連載されていたら食傷気味なのかもしれませんが、ビーズログであることに新鮮さがあります。絵がちょっと粗いところも、なんとなく女性向けジャンル誌っぽさを感じさせず、「ああ、これいいんじゃないの」と思わせたり。
ラストでの切り方が上手で、続きを読ませたくさせてくれます。広がりを見せようとしている物語の枠が、一体どのレベルにまで行くのか。少し小さいともの足りなく、広げすぎるとたためない。さじ加減が難しそうですが、果たしてこの物語はいかに。0話として、物語中盤と思しきシーンが描かれているので、それなりに期待できると勝手に思っております。1巻時点では上々なので、個人的に少し期待してみようかな、と。ただバトル漫画読んでる人にとっては、どこまでも「普通」なのかも。
【男性へのガイド】→男性が読んでも全く問題無いかと。時代設定とかは、いかにも女性向けジャンル誌って感じですけど、それ以外は別に。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】→普段バトル漫画そこまで読まない人間ゆえに、新鮮。ということは、普段読んでる人にとってはどうだろう。1巻の切りどころが絶妙だったので、とりあえず2巻読んでみようかな、という。
作品DATA■著者:ユキムラ
■出版社:エンターブレイン
■レーベル:B's-LOGコミックス
■掲載誌:コミックビーズログエアレイド(2009年11月号~)
■既刊1巻
■価格:620円+税
■購入する→
Amazon
/
bk1