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Tag [続刊レビュー] 2010.07.09
作品紹介はこちら→緑川ゆき「夏目友人帳」
8巻レビュー→タキが何気にカワイイんですが… 《気まぐれ続刊レビュー》緑川ゆき「夏目友人帳」8巻
9巻レビュー→的場家当主と夏目の人・妖付き合いのお話 《続刊レビュー》「夏目友人帳」9巻



1102940630.jpg緑川ゆき「夏目友人帳」(10)


人であろうと
妖であろうと
それはこんなにあたたかく
僕の心に灯るのだ



■10巻発売です。
 祖母の遺品で、多くの妖の名を預かった「友人帳」を受け継ぎ、名を返す日々を送る夏目。友達もでき、友人帳を通じて様々な知り合いも増えた。新たな環境で、自分の居場所を見つけていった夏目だったが、ある日突然、昔の同級生・柴田が夏目の目の前に現れる。彼に連れられるまま、彼が最近仲が良いという女子高生・村崎と会うのだが、その彼女に、後日胸騒ぎを覚えた夏目は…?
 
~出足は不変も中身は変容~
 気がつけばもう10巻。しかし相変わらず、物語の導入は「小さいときからときどき変なものを見た」。そろそろなくしちゃっても良いような気がするのですが、やっぱりこういったテンプレがはじめにあった方が描きやすいのでしょうか。なんて、導入は不変も、さすがに物語は大きく変化しており、夏目を取り巻く環境も初めとはだいぶ変わっています。今回は、昔の知り合い(決して友人ではない)が登場し、さらに新たな人間関係の広がりを見せることに。


~「信じること」について何度も描かれた~
 10巻は二つの物語が収録されています。ひとつは昔の知り合いが、夏目を訪ねてくることから始まる「偽りの友人」。もうひとつは豊作を懸け行われる祝祭にて、ひょんなことから神様の代わりに祭りに参加することになる「月分祭」。どちらも舞台・毛色は異なりますが、どちらにも共通して描かれたことがひとつ。それが、「信じる」ということでした。
 
 まずは先の「偽りの友人」から。ここではあとがきでも書かれているように、「信じる・信じない」がひとつのテーマとなっています。かつて信じてもらえなかった相手、信じることが出来なかった相手との溝を埋めるのは、時間かはたまた環境か。ただ単に「信じてくれ」と言っても、信じてもらうことはできません。信じること、信じさせること。信じたい、信じてもらいたい。お互いにそんな欲求を抱えながらも、そうすんなりとはいかず苛立ちを抱え、そして感じる気持ち悪さにやきもきする様子が、丁寧に丁寧に描かれていました。
 

夏目友人帳10-1
 過去に信じてあげることができなかった相手を、今度は信じることができるのか。信じる側も、信じられる側も、その関係性に不安定である以上、そこに不安を感じるものです。物語では、必死さと、自分ではない第三者という目的を共有できたこと、そして自分の弱い部分を見せられたことが、良い方向に繋がっていったのでしょうか。溝を埋めるものは様々あり、決してひとつではありません。ともあれ、妖を絡めながら、人間関係のドラマを描く手腕はお見事。妖と人間、そして人間同士の関係を描く二本軸。どちらも決してサイドストーリーになっておらず、メインストーリーとして共存しており、そのバランス感には思わず唸ってしまいました。
 
 もうひとつ「月分祭」では、式神の柊が「信じること」についての台詞を残します…


夏目友人帳10-2 
 仮にも仕えようと決めたなら
 主を信じろ

 
 こちらは作品中ではさほど重要なシーンではなかったのですが、やけに印象に残りました。主を信じることもそうですが、逆に主もまた、式神を信じているからこそ関係性が成り立ちます。人間だけでなく、妖にもまた「信じる」という行為が許されていて、むしろ単純に純粋に考えることができるぶん余計に、信じるという行為がストレートに表に出てきます。故に、受ける感動が大きい。この物語の根底にある魅力の根源の一部を、なんとなく垣間見たような気がしました。
 

~ひとつだけ残念だったことが…~
 そんな毎度感動をくれるこの作品。10巻も非常に良い内容で楽しませていただきました。しかしひとつだけ、ひとつだけ残念だったことを言っていいですか?タキが…タキが出てないんだよう!次こそはタキを登場させてほしい。緑川先生が、次こそはタキを登場させてくれると私も“信じ”て、11巻を待つことにしましょう。
 

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コメント

次はタキ出ますよ!しかもガッツリ!
とても感動出来る良い話でした。今から単行本化が待ち遠しいです。
From: ~名もなきお * 2010/07/10 09:22 * URL * [Edit] *  top↑
本当ですか!(ガタッ
それはぜひレビューせねばなるまい!
今から単行本が待ち遠しいです!
情報ありがとうございました!
From: いづき * 2010/07/11 01:43 * URL * [Edit] *  top↑

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