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Tag [新作レビュー] 2010.07.12
1102940457.jpgみやまあかね「きな子~見習い警察犬の物語~」



一緒なら
どんなに大変でもがんばれる
言葉は通じんでも心は通じ合う…
どんなときも
おまえだけはそいつを信じるんだよ



■父の影響で警察犬の訓練士を目指す杏子は、訓練所で体の弱いラブラドール・レトリーバーの子犬・きな子と出会う。ご飯もまともに食べず、警察犬はおろか生きていくことすら難しそうな様子のきな子を相手に、杏子は懸命に面倒を見る。その甲斐あってか、いつしかきな子は元気な成犬に。しかしお世話になっている訓練士から、きな子は警察犬には向かないと言われてしまい…。ふたりでひとつの夢を追いかける、心温まるきずなの物語。

 見習い警察犬と、見習い訓練士のきずなを描いた物語です。このお話、香川県丸亀市に実在する女性訓練士と警察犬がモデルになっており、小学館から映画原作本が出版され、8月14日に映画が公開されるそうです。その先駆けとして、この漫画作品が発売に。ちゃおコミックスですが、ちゃお連載ではなく、全てかきおろしとなっています。
 
 ヒロインは、父の影響で訓練士を目指す18歳の杏子。父は既に亡く、その父と仲が良かった訓練士の元に預けられる形で、訓練士を目指していくことになります。そこで出会うのが、体の弱いラブラドール・レトリーバーの子犬・きな子。父のパートナーも、子犬の時に体が弱かったラブラドール・レトリーバーということもあり、杏子はすぐにその子のことを気に入るようになります。しかし出会った当初は食事すらもままならない状況。そんな中、杏子の必死に面倒もあり、きな子は段々と元気になっていきます。そしていざ訓練となるのですが、なかなか上手くいきません。そんなきな子を見て、お世話になっている訓練士は、きな子は警察犬に向いていないと言い放つのですが、杏子は決してあきらめることなく…というストーリー。


きな子
描くのは、絆。成長とはそういう意味では少し違うかもしれない。


 その後様々な障壁を乗り越えて、きな子と共に訓練士・訓練犬として成長していく…と行けば良いのですが、1巻完結ということで、成長をじっくり描くというよりは、絆重視で物語は展開します。そのひとつ、大きなイベントとなるのが、きな子が芸能犬としてスカウトされるというもの。警察犬としての才能が開かない中、とある報道によって人気ばかりが先行してしまったきな子にとって、そのオファーは決して悪いものではありませんでした。そんな中、杏子は、きな子は、どういった決断をするのか。言葉を交わせず、犬の感情が100%わからないなかで、「犬の気持ちを考えて…」などと言ってしまう人を見ると、どうにも人間のエゴのように感じられて個人的にイヤな気分になってしまいます。しかしこの物語では、決して人間が「こちらの方が良いから」と強引に意思決定しようとはしません。最後に自分の行く道を決めたのは、他でもないきな子自身。うん、それは納得。
 
 低年齢向け作品らしく、クセもないし実に教育的な内容。絵柄や話運びにどこか古くささを感じるのは、わざとなのでしょうか。ただ真っ直ぐだからこそ、シンプルに心にくるシーンもあり。新奈ちゃんが杏子ときな子にプレゼントを用意していたことがわかるシーンなどは、思わず泣きそうになりました。それでもコミックスはあくまで前菜。やはり映画を見た方が、より物語を堪能できるのではないでしょうか。


【男性へのガイド】
→低年齢向け作品ということで、可もなく不可もなく。恋愛はナシ。犬好きの方ならば。
【私的お薦め度:☆☆   】
→ソツのない感じが、逆に味気ないか。読み手の年齢を考えると、これぐらいで丁度良いのだと思います。どこが悪いってわけじゃないです。


作品DATA
■著者:みやまあかね
■出版社:小学館
■レーベル:ちゃおコミックス
■掲載誌:かきおろし
■全1巻
■価格:400円+税


■購入する→Amazonbk1

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