和深ゆあな「メリクロンの涙」(1)「どうして泣くの…?」
「あなたが笑っているからよ」
■其れは神の御業か、悪魔の所業か…。とある街の一角にある、少し大きな洋風のお屋敷。そこに住むのは金髪で碧眼の謎の青年・ルイ。そこで彼が生み出すのは「メリクロン」と呼ばれる代物。簡単に言うならば、記憶さえも生き写すことが出来る、クローン。自分の<代わり>として、誰かの<代わり>として、生み出されるそれは、元の本人とまるで見分けがつかない。その作り手である、ルイは、神か悪魔か。そしてそれを側で見つめる一人の少女は、何を思うのか…
秋田書店から、和深ゆあな先生の新作でございます。タイトルは「メリクロンの涙」ということですが、この「メリクロン」とは、記憶までもコピーできるクローンのこと。そんなメリクロンを巡る様々なお話を、一話完結形式で展開していきます。そしてその中で、「メリクロン」の生みの親である、謎の青年・ルイと、彼の屋敷に一緒に暮らす一人の少女との関係を描き出し、物語の深淵へ進んでいくという感じ。お話の舞台となるのは、「メリクロン」の生成(良い言葉が見つからない…)場所であり、謎の青年・ルイの住む屋敷。何らかのきっかけでそこを訪れる人間、ないしルイが見つけてきた人間が、メリクロンを作るか否かで迷い葛藤し、自分なりの結論を出していくというものになります。

視点は、メリクロンの生みの親である青年・ルイと一緒に生活する少女(?)から。一緒に生活していても、メリクロンに対する見方は、ルイとは異なる。
話の視点は、ルイの屋敷に住む少女。名前は明かされず、いつもルイからは「君」、もう一人の同居人である少年からは「姉ちゃん」などと呼ばれています。物語の中心となるのは、ルイと彼女。実は彼女、自分のメリクロンを作り、かつて居た場所から逃げ出してきたという過去を持っており、それを今も後悔しているという状況。メリクロンを作りに訪れる人に対しても、「作らない方が良い」と助言をするなど、ルイと一緒に暮らしていながら、その立ち位置は全くの正反対になります。それでも強く苦言を呈することはない、ルイ。当然その裏には何か事情があるわけで、それらは追々明かされていくという塩梅です。
この手の設定は、確かに面白いのですが、一話完結で多用してしまうと、途端に無駄遣い感が出てしまうから不思議。SFやミステリーの方向で話を広げれば面白いのですが、各話単体で見るとやはりヒューマンドラマ志向が強くなり、どうにも薄味に感じてしまうことも。「イキガミ」の序盤など、「悪くはないんだけど、そっちなのか…」みたいな。というか、最初にヒロインとそのメリクロンが出会うという話を持ってきて、そっち方面に構えさせたのがもったいなかったのかな、と。順番を変えて、後半に進むにつれ確実に物語の深いところに到達しているという感覚が味わえた方が、個人的には好みだったかも。いや、それでもライトな読切りとして見るのであれば、及第点以上の高水準にあるわけですが、設定的にかなり面白そうだったので、ついつい要求がワガママなものに…
【男性へのガイド】
→男性が嫌う要素はそこまでないような。ヒロインはそれなりに可愛らしいし、青年の飄々とした感じも、ウルサくならず良い味付けに。読みやすいと思いますよ。
【私的お薦め度:☆☆☆ 】
→思っていたのとは若干違う方向に進んだものの、それが悪いかというとそうではない。ヒューマンドラマを良しとするのであれば、一風変わった感じで、楽しめると思います。
作品DATA
■著者:和深ゆあな
■出版社:秋田書店
■レーベル:プリンセスコミックス
■掲載誌:プリンセス
■既刊1巻
■価格:400円+税
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