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Tag [新作レビュー] [読み切り/短編] [オススメ] 2014.09.25
1106441945.jpg河内遙「文房具ワルツ」



小さなギスギスも
淡い白がほどく
そんな日でした




■『物語』は、まだ紙の途中。
夢と現実のギャップにあえぐナズナ。
ナズナに想いを寄せる八神。
漫画家として鳴かず飛ばずのハタノ。
しかしそれぞれの人生の傍には、知らぬところで支えてくれる存在が…。
恋と悩みが交錯する、文具系純愛短編集。

 「夏雪ランデブー」(→レビュー)の河内遙先生の、flowersで掲載された一連の短編をまとめたものになります。悩みを抱える若い男女達の想いを、文房具の擬人化によって描き出した物語たちです。

 長年使っている文房具って、愛着が湧きますよね。私にとっては、中学の時から使っているシャープペンシルがそれで、高校受験も大学受験も、社会人になってからの資格試験でも、常にそのシャープペンシルで切り抜けてきました。いわば相棒という感じなのですが、そういった着想をマンガに落としたのが本作になります。描かれる人間は、大学生2人に漫画家1人。それぞれつながりを持っており、またそれぞれに悩みを抱えています。それは恋の悩みであったり、仕事の悩みであったり。そんな彼らが抱える悩みを、普段使っている文房具が感じ取り、時に何かしたりしなかったりせずに、主人を案じる姿が描かれます。


文房具ワルツ1-1
基本的には主人のことを思っています。長年使って愛着が湧いていればなおさら。


 どのお話も実に読後感が爽やかで、なんだか心が温かくなるんですよ。そしてこれを読んだ後は、きっとあなたも文房具を大切にしたくなるはず。文房具は擬人化されても、基本的に何か自分の意志でしてくれるわけではなく、ただただ主人の心を案じるというだけ。ただそれが描かれることで、主人たちの悩みであるとか、頑張りってものが際立つんですよね。一番近いところで主人を見ているので、主人のことがよく分かっており、発せられる言葉がどれも沁みると言いますか。一方で、文房具同士の絡みも面白く、そちらは異様にポップでノリが軽いという。このバランス感が良いですよね。

 物語は全部で8話収録されており、各話でメインの3人の誰かの視点で描かれます。初回の掲載から最終回まで、実に5年の時を擁しているということなのですが、読んでいると絵柄的にも物語の質的にも大差なく、全く違和感なく最後まで読みきることができますよ。では個人的に気に入ったお話について…


「アケガタ花壇」……カラーに挑戦する漫画家・ハタノケントのお話。マンガと同じく、なかなか思い描くように絵を仕上げられない彼が、煮詰まったのちに同期デビューですでに相当の売れっ子になっている漫画家の元へ赴くというお話。「捉え方の違い」と言いますか、置かれている状況は同じでも、ポジティブに捉えて前に進める人と、ネガティブに捉えて引き返してしまう人がいるのですよね。本作は、ネガティブになりがちな主人公が触発されて前に進むというストーリーになっているのですが、こういう人と出会い仲良くなるっていうのも一つの才能なのだなぁ、とかちょっと思ったという。非常に前向きな気持ちになれるお話でした。


文房具ワルツ
「踊るコンパス」…基本的には人間視点で描かれるのですが、このお話に関しては半分人間、半分文房具という配分の目線で描かれました。文房具屋の片隅で、長年売れることなく眠っているコンパスが、あれこれと文句を言っているというお話なのですが、ツンデレ感漂う姿が実に可愛らしい。コンパスなんて小学生の時に少し使って以来、どこかにやってしまったのですが、こんな姿をしているのだったらもっと大事にしたかもなぁ、なんて思ったりしました。この先どうなっていくのかも期待させてくれる、爽やかな物語でした。

 
【男性へのガイド】
→男性目線のお話もありますので、物語への入り込みやすさはあるかと思います。恋愛特化とかでもないですし、割と万人受けしそうなイメージがあります。
【感想まとめ】
→面白かったです。どのお話も優しく前向きな気持ちにさせてくれるもので、ものを大切にしたいという気持ちが読み終わった後に生まれました。


作品DATA
■著者:河内遙
■出版社:小学館
■レーベル:フラワーコミックス
■掲載誌:flowers
■全1巻
■価格:940円+税


■試し読み:第1話

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2014.02.24
1106359243.jpg岩本ナオ「町でうわさの天狗の子」(12)


好きだぞ 秋姫


■12巻発売、完結しました。
みんなを助けるために力をつかい
狐の姿になってしまった秋姫。
彼女を助けるため、瞬が、そして仲間達がとった行動は…?
青春ラブファンタジー、ついに完結!!


〜完結しました〜
 12巻発売、完結しました。11巻を積んでいたので、2巻一気読みで最後まで。いや、感動しました。実に6年半の長きに渡り連載され、ここまで。12巻はとにかく色々な要素が詰め込まれていて思うところも多く、どこから語れば良いのやら…。全部語ってしまえば余すところ無くネタバレになってしまうし、そもそもどこから崩して、どういう順番で書こうかとかも、全然決められないっす。
 

〜瞬ちゃんだけじゃない、みんなで引き寄せた幸せ〜
 物語はもちろんハッピーエンドなのですが、そこまでの過程が凄まじく、まさかこんな壮大な流れになるとは思ってもみませんでした。秋姫の願いはあくまで「普通の女の子になりたい」というものでありますが、所以天狗の子であるため、そう易々とはその願いは叶いません。徳を積んだ天狗になるというのならばまだしも、普通の女の子ですから、何か積極的に動けるわけではありません。ゆえに秋姫は最後までこれといった能動的な行動は起こさず、ただただ願い、我慢するという形でしか行動できませんでした。そんな中動いたのは、瞬ちゃん…だけじゃなく、本当にたくさんの人たちが動いてくれるんですよね。町でうわさの天狗の子、文字通り町ぐるみでの秋姫救出劇でした。
 
 しかもその手法、時を超えて縁を作るようなもので、まどマギチックとでも言いましょうか。タケルくんもそうですし、瞬ちゃんもそうですし、その人のその後の人生すらも決定させてしまうような大きな出来事ですよね。そしてそれを成し遂げてしまうってのがすごい。


〜一番の感動はお父さんだったんです〜
 救出劇においては泣き所満載だったのですが、個人的に一番泣けたのがお父さんの頑張りでした。これまで秋姫の父・康徳はその顔が描かれることは無かったのですが、この秋姫の危機に際して立ち上がり、ついにその顔がガッツリと描かれることになりました。
 

町でうわさの天狗の子12−1
娘のためを思って泣きながら戦う姿は、本当にグッと来るものがありました。
 
 
 顔が出てくるのがこのタイミングで、しかもやっぱりめちゃめちゃ強い。カッコいいです。これまでの娘想いのちょっとズレたお父さんというのも可愛くて良かったのですが、やっぱりこちらの方が俄然素敵。お母さんが惚れるのも、なんとなくわかった気がします。しかしそれでも天狐の力は凄まじく、彼だけの力だけではどうすることもできません。そして想いを、後の者に託すことになるわけですが…
 
 
町でうわさの天狗の子12−2
瞬と名前を読んで託す


 天狗の二郎坊に、そして一人の男としての瞬に、伝えた言葉。一番弟子を信頼し、同時にその身を案じるとともに、もう手の届かない、想いの届かないところへと行ってしまう娘を、娘の想い人に託す父親の物悲しさみたいなものが台詞の端っこに感じられて、まぁ泣けた泣けた。想いも様々であったでしょう。そしてこれが康徳様が登場する最後のシーンとなりました。もちろん死んだわけではないのですが、ある意味で親の手を離れたとでも言いますか。幸せの中にみる、ちょっとした寂しさのようなものをついつい感じてしまったのでした。 


〜彼女達の恋の幕引きは…?〜
 さて、瞬ちゃんと秋姫のある種壮大な物語の横で、気になるのがその他の恋の行方です。しっかりと結果を出しているのは主要キャラでは松中さんぐらいと、そのどれもが現在進行形。まず気になるのが、赤沢さんです。彼女の場合、修学旅行先で三郎坊と一緒になったにも関わらず、あの一件で離ればなれに。その後特に描かれていなかったので、少しくらいあるかと思っていたのですが、結局出てこず。うーむ、どうなったのでしょうか。投げっぱなし。12巻、赤沢さん関連で出て来たのはこれくらい…
 

町でうわさの天狗の子12−3
赤沢化粧品がこんなに大きくなっていました。そしてなんと言っても、その屋上にある狐の像が気になるではないですか!8巻では、三郎坊が赤沢さんと結婚すると商売繁盛するなんて話がされていましたが、この絵はそれを暗示していると思われ。

 そんな二人に対して、タケルくんとうららは逆にしっかりと描かれていましたね。11巻のうららの表情はもうかわいいというほか無かったわけですが、まさかこんな先の将来まで描かれるとは思いませんでした。年を取っても、安定の関西弁。とはいえ描写をみる限りでは、うららが緑峰町まで嫁に来たという形でしょうか。この二人、どうやって結ばれたのかめちゃくちゃ気になります。だってまず、アプローチ下手っぽくみえるうららと、これまた自ら動かなそうなタケルくんという組み合わせで非常に大変そうなのに、さらにうららにはあのお父さんですからね。「娘大好き!」というオーラがありありと出ていた彼を、どう説得させたのか。それこそ神谷の血が成せる業なのかもしれませんけれども。

 あとは紅葉ちゃんも素敵でした。この子も献身的で、本当に良い子でしたよね。いつも明るく、元気よく。それでも中身は恋する女の子。恋敗れれば、落ち込みもします。けれど決して涙を他人に見せなかったのは、しっかり者の彼女らしさが出ているところ。あざとそうに見えて、人一倍真面目で不器用で割を食うのが、彼女なのだと思います。
 
 
 というわけで、盛りだくさんの12巻でした。まだまだ語り足りないんですけれども、それこそこちらの時間もページも足りないということで、この辺で。壮大かつ詰め込み感もあったものの、物語が持つエネルギーはすごく、終始そのパワーに圧倒された感覚がありました。決して美しく綺麗に折り畳まれているとは思いませんが、その力強さだけで読ませてしまうと言いましょうか。感動を、ありがとうございました。



【関連記事】
作品紹介→岩本ナオ「町でうわさの天狗の子」
4巻レビュー→《気まぐれ続刊レビュー》岩本ナオ「町でうわさの天狗の子」4巻
5巻レビュー→やっぱり赤沢さんが気になる《続刊レビュー》「町でうわさの天狗の子」5巻
6巻レビュー→スケートといったらスカートですよね:岩本ナオ「町でうわさの天狗の子」6巻
7巻レビュー→なにこの激甘空間…:岩本ナオ「町でうわさの天狗の子」7巻
8巻レビュー→君の隣で夢見る“いつか”:岩本ナオ「町でうわさの天狗の子」8巻

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Tag [新作レビュー] 2014.01.16
1106349490.jpg桜小路かのこ「ラストノーツ」(1)


早く帰ろう


■香も、煙も、そして魂も。ひっそりと立ちのぼり、静かに消えてゆく…。“反魂香”……焚くと、その煙の中に会いたい死者が浮かび上がるという不思議な香木を取り扱うお店・仁藤香堂分店。下街の路地裏にひっそり佇むその店は、訪ねる客も、ワケありの人間ばかり…。そんなある日、反魂香の仕入れ相手・五嶋の孫という美少女・えみるがやってきて…!?香りが紡ぎだす極上の恋物語、待望の第1巻!!

 小学館漫画賞を受賞したこともある「BLACK BIRD」を描かれていた桜小路かのこ先生の新連載です。物語を彩るのは3人の男女(表紙に描かれている3人です)。両サイドの男子は同い年の兄弟。線香業界第2位の大企業の御曹司なのですが、気楽だからということで、下街の路地裏にある古民家で分店の香堂を営みながら気ままに暮らしているのでした。そんな彼らの前にある日現れたのは、香の仕入れ相手である五嶋の孫という美少女・えみる。五嶋は亡くなり、彼女が代わりに訪れたのだという。表向きには出していないが、この店で取り扱っている香は、“反魂香”という特殊な香。一度焚けば、煙が死者の姿形となって話が出来る。香木を持ち込む五嶋は、言わばこの店の命綱。謎に包まれる“反魂香”の真相を知るため、行き場のないえみるを保護し、一緒に暮らし始めることになるのですが…というお話。

 主人公は一応えみるってことになるんでしょうか。ただ比率的には3人がそれぞれって感じなので、それぞれが感情移入したい相手に入れ込んで物語を見れば良いのではないかと思います。物語は冒頭の説明の通り、死者と会うことができる不思議な香を巡る、男女3人の同居恋物語です。


ラストノーツ1
イケメン設定ですが、似ていない二人。というのも、兄弟ながら同い年で、誕生日は一ヶ月違い。その性格も正反対。しっかり者なのがハル(メガネ)で、おちゃらけた性格なのがアキ(黒髪)。あなたはどっちがお好み?

 
 最近映画になった「ツナグ」に代表されるように、死者と会えるという設定を使った感動物語は多々あります。ただ本作はそういう方向には進まず、謎に包まれている反魂香の秘密を探る方向へとシフトしていきます。その鍵を握っているのが、ヒロインである、えみる。彼女自身は反魂香についての知識は皆無であるものの、彼女の祖父が他ならぬ香木の供給者であり、彼女の暮らしの中に様々なヒントが隠されているようなのです。

 感動を生み出す装置となるファンタジー要素に、同居もの、さらに三角関係と、どこからでもどこへでも転がせるような欲張りな設定。これだけ盛り込むと時に消化しきれなくなってしまうのですが、さすが桜小路かのこ先生と言った所で、無理矢理感もなく綺麗に物語に落し込んでいます。1巻は物語が始まったばかりという感じですが、導入から背景説明、物語転換までが非常にスムーズで、2巻もキッチリ気にさせてくれるという親切設計。恋愛はまだ全く芽吹いていない状況ではありますが、シチュエーションからしてそういう方向に行かないわけもなく、さてこれからどうなることやら…と、こちらも同時に期待感が。


【男性へのガイド】
→シチュエーション、キャラ的にはやはり女性向けの感は強いかと思います。
【感想まとめ】
→これだけ色々な要素を詰め込むと味が濃くなってなかなか消化しきれなかったりするのですが、スッと物語が入ってきて楽しむことができました。未だ全容は見えないですが、先々を楽しみにさせてくれる1巻でした。


作品DATA
■著者:桜小路かのこ
■出版社:小学館
■レーベル:ベツコミフラワーコミックス
■掲載誌:ベツコミ
■既刊1巻
■価格:420円+税

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Tag [続刊レビュー] 2013.12.23
作品紹介→青春を彩る美しい伝統芸能といくつかの秘密:小玉ユキ「月影ベイベ」1巻




1106349483a.jpg小玉ユキ「月影ベイベ」(2)


お前といっしょにおわらを踊りたいが
ただそんだけや



■2巻発売しました。
 「同級生」と「伯父さん」の触れてはいけない秘密とは!?
 光は、伝統芸能“おわら”を美しく踊る蛍子に心を惹かれる一方で、彼女と伯父・円の隠しごとも気になっていく…。静かな地方の町に、嵐の予感が広がって!?
 

〜このマンガがすごい!にランクインしていました〜
 2巻発売です。このマンガがすごい!2014ではやっぱり上位にランクインしていましたね。「坂道のアポロン」の事例もあるので、もしかしたら1位もあるかもなんて思っていましたが、そこまではいきませんでしたか。でも個人的には1位の作品よりも、こっちの作品の方がスゴいと思っております、はい。


〜こんなに切り替えられるものなのか〜
 さて、物語のほうは、おわらを踊る本番である体育祭へ向けて練習を重ねる日々。1巻では蛍子と円、そして主人公の光の3人の間で人間関係が閉じていましたが、2巻ではその関係に広がりが見えてきました。

 まずは1巻では殆ど登場することのなかった“おわら5”。2巻でも登場数は少ないのですが、台詞は少しずつ多くなってきています。そして今回、そのうちの1人がちょっと良い働きをしてくれました。それが、メンバーの中で一番美形イケメンくさい、涼。一見おわらとは無縁そうな見ためですが、かれもキレイなおわらを踊ります(知らんけど)。蛍子と円の謎の関係性に思い悩む光を見て、涼は的確なアドバイスを光にします。
 

月影ベイベ2−1
その誰かさんが笠の下に人に見られたない傷でも隠しとったとしたら
その笠取れ言われることがどんだけ苦しいか
お前は想像したことあるがけ
聞かんでそっとしといてやるが愛やと思うけど
俺は


 なまじ高校生とは思えない的確なアドバイス。さらにすごいのは、彼の一番好きな「おわら」に例えて愛を説くというアドリブ力の高さです。すごいっすよ。なんなんですかこの少年。あとさらに驚いたのが、涼のアドバイスを受けて、光は何の抵抗もなくそれを実行に移すんですよね。
 
 
月影ベイベ2-2
ためらいも戸惑いもなく、本当になんの抵抗もなく。頭ではわかっていても、なかなか実行に移せなかったりするものではありませんか、こういうのって。頭ではわかっているけど、気持ちばかりが先走って後悔ばかりの自分としては、この素直さと切り替えの良さに驚き、そして少しばかり羨ましく思いました。しかしこの素直さの源泉は、どこからきているものなのでしょうか。蛍子を完全に好きになりきっていないからなのか、恋を知らないからなのか。一旦、涼の言葉によってこういう立ち位置に落ち着いた光でしたが、段々と我慢ならなくなってくるのではないかと思われます。頭よりも心が、そして体が動くとき、そんなシーンがいつか出てくるはずで、それがいつになるのか非常に楽しみです。


〜三角関係にはならないのか〜
 今回蛍子と光の関係に加わってきたのが、同級生の松井さん。蛍子もなかなかの美人さんですが、こちらもまたかわいい子です。蛍子の対人力の低さから、女子たちとの間には誤解が残ったままに物語が進んで行くのかと思いきや、松井さんの行動力の高さであっという間に橋渡しが。すごいです。
 


月影ベイベ2−3
松井さんは光に好意があって、三角関係に…なんて安い妄想をしてしまったわけですが、現時点ではそういった感じはありません。上記のシーンからも、全くそういう感情が無いことが伺えます。純粋に蛍子という人間に興味があって、彼女のためを思って一緒におわらの練習をするという。ふーむ、青春です。


〜未だ謎多し〜
 ただ彼女が素直に脇役に徹するとは到底思えないのです。というのも、意味深すぎるあの写真の存在があるから。あそこに写っていたのは、円と蛍子の母である繭子、そしてもう一人の男性。彼はどうやら、ひとつ鍵を握っているようですが、どういう人なのか。少なくとも単なる脇役というわけではなさそうで、そして今回ああして3人でおわらを踊った以上、松井さんも当然のように物語の深部へと組み込まれていくのではないかと思われます。今時点ではお互いに意識すらしておらず、過去の3人組の謎にばかりフォーカスが当たっていますが、その横で着々と想いを積み上げていってくれれば。登場人物が揃った感のある2巻。3巻ではいよいよ核心に迫るのでしょうか。楽しみです。


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Tag [続刊レビュー] 2013.11.27
1巻レビュー→自分が幸せになれないと決め込んでいるあなたへ:西炯子「姉の結婚」1巻
2巻レビュー→“なりたい自分”と“なりたくない自分”:西炯子「姉の結婚」2巻
4巻レビュー→“どうすべきか”と“どうしたいか”:西炯子「姉の結婚」4巻
5巻レビュー→唯一傷つけ合える関係:西炯子「姉の結婚」5巻
作者他作品レビュー→笑いと涙の芸道一直線コメディ!:西炯子「兄さんと僕」
崖っぷち28歳とロリふわ22歳の凸凹婦警コンビが行く!:西炯子「ふわふわポリス」



1106339905.jpg西炯子「姉の結婚」(6)


「欲しいもの」
それはいつも手に入らない
どこに行けば手に入る…?



■6巻発売しました。
 真木誠との不倫関係を解消した後、地元での生活に閉塞感を抱きつつも仕事に打ち込む岩谷ヨリ。そんな彼女に、東京に出てくるようにアプローチし続ける人気作家・夢幻堂遥。一方、ヨリを諦めきれない真木は、ある気一空くを実行に移すことに…。アラフォー女性の不安と葛藤。オトナ女子必読の恋愛指南、第6巻!
 

〜幸せな妹、幸せな友達〜
 早6巻、白ベースの表紙は彩り豊かな本棚の中でも毎回目を引きますね。物語は二人がそれぞれ、現在の生活に変化をもたらそうと様々画策する様子が描かれます。そのため、二人が相見えて何かするということはなく、完全に別行動での進行。
 
 まずはヨリの身辺で起こった変化ということで、夢幻堂遥から東京へと誘われるという出来事がありました。ただこれは、どちらかというと目に見える選択肢。むしろ個人的に印象に残ったのは、ヨリの身近な二人の結婚でした。
 
 
〜いつから友達の結婚が堪えるようになるのだろう〜
 まずは彼女のおひとり様仲間であった新川さん。カミングアウトの直前まで、ヨリは「仲間」なんて意識を持っていたようですが、その後に結婚を報告されます。それを受けて、お互い「おめでとう」「ありがとう」というやりとりをしていたのですが…


姉の結婚6-2
何気に友達の結婚報告が堪える


 性別的にも年齢的にも、自分自身でなかなかこういう感覚を味わうことはないのですが、職場の同僚の女性のお話を聞いていると、段々と友達の結婚式に行くとツライ・堪えるようになってくるようです。その辺って、いつ頃から感じるものなんでしょうか。自分の精神状態に比例しそうなものではあるのですが、自分には想像のつかないような感覚がそこにはあるのでしょう。私は結婚式に行くたび「もし自分が結婚してもこんなに人呼べないわ…」と不安になるときはありますが、そんなのは可愛い悩みなのでしょう。
 
 一方、こうしておひとり様同盟みたいなくくりで付き合うようになると、逆に報告する側も気を遣いそうですよね。内心「ごめん」とか言っちゃいかねなそうなのですが、それは決して口にしちゃダメ。「ありがとう」「おめでとう」は美しくあるべきやりとりではあったのですが、どこかよそよそしい感じがしなくもなかった…というのは、穿った見方をしすぎなせいですかね。


〜幸せな妹の結婚〜
 続いては、ヨリの妹であるルイの結婚。キャラ的にササっと結婚しそうという印象でしたが、やはり。こういう人って、いますよね。わがままなんですけれど、愛されていて、そして自分の思い通りの人生を送っている人。素敵で、そして羨ましい生き方です。そんな彼女の相手役となったのは、昔はワルだったけれど今は穏やかな好青年。


姉の結婚6-1
非常に優しそうで、そしてルイのことが大好き。彼女の全てを受け入れているような雰囲気で、「この人絶対相手のこと幸せにできるな」感がすごい。


〜二人の結婚が表しているもの〜
 印象的なのは、どちらも幸せに溢れている表情をしていること。いや、そりゃあそうか。結婚する時なんて、幸せなはずなんですもの。なんかこの作品で描かれてた結婚って、なんだかすごく歪んでいたんです。それは、家族という枠で捉えたときも同じ。6巻にて描かれますが、真木の家もヨリの家も、どこか歪みがあったように映ります。そこかしこにある歪み。正しい家族というのは決して存在しないけれども、理想はそれぞれの中に確かにある。それを欲求することが、根源的な結婚に対する原動力になるんじゃないかとも思うのです。新川さんの結婚もそうですが、何よりルイの結婚が、それを体現するシンボリックなものになってくるんじゃないのかな、とかちょっと思ったり。あそこだけは、いつまでも幸せたっぷりな雰囲気でいて欲しいものです。

 あ、あとどっちも男の方からの猛烈アプローチなんですよね。真木もそうですけど、そういう文法じゃないとだめなのかしら。もちろん男性がプロポーズをする方が形にはなるんですけれども、精神的な力関係で、明確に追う側と追われる側が別れていまして。そんな中、ヒロインのヨリも、真木の妻も、真の意味では必要とされた経験がない人でした。そんな結婚できない(しづらい)人との対比として、描かれているのかもしれません。結婚が恋愛の延長であり、恋愛とはどこまでも相手を欲するものなのだとしたら、ヨリはそこまでして欲した存在がいなかった(ゆえに真木の恋愛云々の話が出てくるわけで)。これはやっぱり自ら動かないと、ということなのでしょうか。だから、ヨリが重ねるべきは新川さんでもルイでもなくて、そのお相手ということになるのかもしれません。


〜子供の存在〜
 今回は、結婚を考える際に切っても切れない関係である、とあるファクターについてあれこれ描かれていました。そういえばこれまでガッツリこのテーマについては描かれていなかったような気がします。それが、子供の存在。今回描かれたのは3度。ひとつは、不倫相手の子供を身ごもった女性との再会。そしてもう一つが、ヨリ自身が妊娠したとウソをついたこと。そして最後のアレ。いやそう来ますか…。
 
 物語的に一番大きな意味を持つのは最後ですが、ヨリのそれも結構印象的でした。彼女には子供をもうけたいという欲求があるのか、ってのがちょいと気になるところです。当時はそういうことはあんまり考えずにあのウソをついたのでしょうが、気がつけば妊娠出産が厳しい年齢へと段々と…。そういった欲求もまた、結婚への意欲として反映されてくるところだと思うのですが、ヨリの場合はその辺もやや弱い感が。とにかく理路整然と収まり良く生きるための選択肢として“結婚”があるようで。繰り返しになりますが、もっと収まらないほどに自らの欲求で動く姿が見たい…!

 なんだかとりとめのない文章となってしまいましたが、色々と考えさせられることの多いお話でした。ほんと読み返すのも億劫な文章に…。内容も問題ありかもしれません、すみません。はい。

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かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
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びっけ「王国の子」(1)
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シリウスと繭
小森羊仔「シリウスと繭」(1)
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2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




トーチソング・エコロジー
いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(1)
レビュー
売れない役者が、役者仲間を亡くしたと思ったら、お次は隣に高校の同級生が越してきて、さらには何やら自分にしか見えない子どもの姿が見えるように…。どこかゆるさのある不思議なテイストのお話なのですが、いくえみ作品で実績のある「ある者の死と、残された者の感情」を描き出す類いの作品ということで、この先きっと面白くなってくることでしょう。




BEARBEAR
池ジュン子「BEAR BEAR」(1)
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高校生には到底見えないロリっ子ヒロインが好きになったのは、遊園地のクマの着ぐるみ。着ぐるみの中身は同じ学校の子で、結局付き合うことになるものの、その後も変わらず相手はクマの被り物をしているという、シュールな光景が繰り広げられます。なんとも奇妙な相手役、かつなんともかわいらしいヒロインの、初々しいやりとりに終始ニヤニヤ。




かみのすまうところ。
有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。