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Tag [新作レビュー] 2013.09.09
1106306486.jpgたうみまゆ「18日の日曜日」


くたばれ
クソ親父



■父の七回忌に集まった三島家の3姉兄妹。しっかり者だけど不倫中の長女・玲。鳴かず飛ばずのお笑い芸人の長男・明。無表情な女子高生の次女・京。それぞれが、今を生きている。今だから…家族だから…話せることが、きっとある。家族だから、言えないこと。家族だから、わかること。家族だからこその苦悩、葛藤、思いやり。愛と笑いの3姉兄妹の物語。

 たうみまゆ先生の別冊フレンドでの連載作になります。作者さんは本作にて初めて存じ上げたのですが、これまでBL作品や、角川ヤングエースなどで一般作品を発表されている経歴があるようですね。本作は初めての少女漫画ということですが、複数単行本も刊行していらっしゃる実績のある方だからか、このレーベルながらB6版での刊行となっています。
 
 描かれるのは、とある3姉兄妹の物語。物語の始まりは、彼らの父親がある日突然自殺をしてしまうことからはじまります。そそのことを3人がそれぞれ受け止め抱えながら生きてきたことと、7回忌で久々に3人が集ったことで、それまで鬱積させていた感情を瓦解させるまでの過程が、それぞれの視点で描かれていきます。


18日の日曜日1
 この物語の非常にユニークなところは、物語の終盤に必ず7回忌の同じシーンが描かれることでしょうか。上記シーンも、台詞回しは3度登場。しかし、登場人物により思うところは異なります。作者さん曰く「同じ瞬間や同じ台詞をそれぞれの立場に寄り添ってみようと思って描いた」とか。同じシーンが3話に渡って繰り返されるため既視感は当然あるのですが、それぞれの視点により全く抱えているものが変わってくるため、物語の表情は様々。


 姉兄妹それぞれの立場も異なれば、父が亡くなった時の年齢もまた異なるため、抱えている感情もそれぞれ違います。罪悪感を抱えながら生きた兄、父と同じように生きてしまう自分に落ち込む姉、そして人と触れあうのが怖い妹と、どれも決して明るい内容ではありませんが、物語の落ち着いた雰囲気の中でそれらが溶け出し消えて行く過程は相応に感動的。しかし、別フレでこういう大人なテイストの物語もやるんですね。これが例えばKISSとかBE・LOVEくらいであればしっくりくるのですが、別フレってんでちょっとビックリしていたり。
 
 個人的に一番お気に入りだったのは、長女でしょうか。父の行いをあれほどに憎んでいたのに、自分自身で不倫をしてしまっているという中での葛藤が描かれるのですが、長女らしく自分自身の考え・力で乗り越えようとアプローチするんですよね。その姿がまさに長女という感じがして、すごく素敵だったのです。それに対し、下2人は元気なパートナーがその過程で良い働きをしてくれるというパターンだったので、余計に長女の気苦労が際立ったような。作者さんは意外にもこの長女が一番の自由人だと言っていましたが、こうして自分の力で切り開いていける人だからこそ、自分の思う通りに行動出来る=自由人っぽいという風に見えるのかな、と。
 
 また単行本には、表題作以外に2作読切りが収録されています。1作は別冊フレンドに収録された、幼なじみの年上の男の人に女子高生が恋をするという青春モノ。もう1作は、角川のヤングエースに掲載された、教会を舞台にしたコメディ(っぽい幽霊もの)。前者は真っ当な少女漫画という感じで、また表題作と異なり比較的元気のあるストーリーとなっているので、また違ったテイストを味わうことができます。


18日の日曜日2
一方後者は、かなりコメディ色が強く、正直表題作からはあまり連想できないような作風にびっくり。作者さんの他作品を知らないので、どちらが本当の姿なのかわからないのですが、個人的にはこの作品が一番伸び伸び書いているような感覚がございました。


【男性へのガイド】
→元々男性向け(エースがそうなのか知らんけど)でも描かれていたこともあり、少女漫画感は薄め。ですので、割と抵抗無く読み始めることができるかと思います。
【感想まとめ】
→別フレといいつつ恋愛要素は薄め。どちらかというと家族的な温かさが先行する作品となっていました。そういったあたたかい関係性を描いた作品に惹かれるという方は、チェックしてみては。


作品DATA
■著者:たうみまゆ
■出版社:講談社
■レーベル:KC 別フレ
■掲載誌:別フレ
■全1巻
■価格:552円+税


試し読み

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Tag [続刊レビュー] 2012.06.24
作品紹介→*新作レビュー*南波あつこ「隣のあたし」
2巻レビュー→近くにいる者が勝つという、シンプルな構図 《続刊レビュー》「隣のあたし」2巻
3巻レビュー→仁菜はこんなに成長してるってのに、京介は…《続刊レビュー》「隣のあたし」3巻
4巻レビュー→三宅君は期待以上の働きをしてくれたと思うんだ:南波あつこ「隣のあたし」4巻
5巻レビュー→よし、三宅君をヒーローにしよう!:南波あつこ「隣のあたし」5巻
6巻レビュー→お風呂上がりの女の子のいい匂いっぷりは異常:南波あつこ「隣のあたし」6巻
7巻レビュー→よし、これを最終回にしよう!:南波あつこ「隣のあたし」7巻
8巻レビュー→ついに訪れたこの時…:南波あつこ「隣のあたし」8巻
9巻レビュー→気づけばダメ男大集合の最終盤!:南波あつこ「隣のあたし」9巻
関連作品レビュー→南波あつこ「スプラウト」




1106166147.jpg南波あつこ「隣のあたし」(10)


そして

隣にいてくれる



■10巻発売、完結しました。
 京介との幼いころの思い出と、三宅と笑い合って過ごした日々…。1人になって、大好きな2人への気持ちを見つめる仁菜。それぞれの想いが交錯する中で、仁菜が選んだ“隣”とは…!?せつない想いがキラキラの青春に変わる、感動の最終巻!
 

〜勝訴!〜
 10巻にて完結しました。1巻からレビューしている作品で、2桁巻数で完結するまで追いかけた作品てもしかしたらこれが初めてかもしれません。なんだかんだで、毎回本当に楽しませてもらいました。そしてもちろん10巻も、めちゃくちゃ盛り上がりましたとも。
 
 予想に反して最後まで三宅くん、そして京ちゃんのどちらにするか揺れていた仁菜。三宅君と別れた時点で、完全に京ちゃんルートに突入したと思っていたのですが、9巻ではむしろ三宅くんに分があるのではないかとすら思えるような描かれ方でした。完全にフラットな状態。この引っぱり方はまさに絶妙と言う他ありません。そんな中、ついにどちら寄りかを匂わせる発言が。それは、「え、突然どうした?」と心配になるほどに突如ヒステリーを起こした結衣子に対して放ったこの言葉から…
 

隣のあたし10-1
もう1回
片想いから始めます



 もう一度、三宅くん相手に片想いから。初めてのキスも、離れたくないと思ったのも、たくさん笑顔をくれたのも、思い返せば全部三宅くんでした。卒業式、京ちゃんに背中を押されるようにして三宅くんを追いかけます。そして伝えた想いの丈。お互い相手の笑顔を願いつつも、想いが強すぎて結果ふたりとも涙まみれであったのがとても印象的でした。
 
 
〜三宅くんの勝因は?〜
 三宅くんは散々かませ犬っぽさを出しつつも、最後はきっちりと結果を出してくれました。ここでちょっと、彼の勝因を考えてみましょう。物語序盤・中盤の流れ的に、相手役筆頭はどう考えても京ちゃんでした。けれども京ちゃんがあまりにもダメ男であったこと、また仁菜を一向に笑わせられない(=全然楽しい雰囲気にならない)ということで、自らその芽を潰してしまった感があります。
 
 またかませ犬的ポジションということで言えば、三宅くんと結衣子がいるわけですが、互いに「最終回付近で適当にあてがわれる恋人役」が不在であったことも大きかったのかもしれません。三宅くんに関して言えば本当に誰もいない状況。結衣子には元さやの久米川先輩がいますが、彼も京ちゃんに負けず劣らずのダメ男で、元に戻すにはちょっと厳しいという。なんというか、消去法で三宅くんが残りましたよってな、ちょっと残念な感じなんなんだろう…。ともあれ脱・かませ犬ということで、本当に嬉しいです。


〜でも表紙は…〜
 最終的に仁菜が選んだのは三宅くん。しかし表紙はこれなんですよねぇ…。しかも満面の笑み。もうね、これ見た時「やっぱり京ちゃんか…」と思ったわけですよ。いやいや、まぁネタバレしちゃったらマズいしね、うん。ネタバレ防止のための予防策かと思っていたのですが、三宅くんとつき合うことになって、めでたしめでたし後、裏表紙折り返しも…


隣のあたし10−2
 おいいいいいいいいい!そこは三宅君にして欲しかった…。結局彼氏になったのに、最終巻カラーで2ショットを描かれることはついぞなかった三宅くん。どこまでもかませ犬の匂いを纏い不遇っぷりを際立たせる三宅くんだったのでした。らしいっちゃらしいですね。


〜「スプラウト」がドラマ化らしいです〜
 さて、そんな中南波あつこ先生の作品である「スプラウト」がドラマ化との情報が飛び込んできました。ビックリです。一番最初に思ったのは「え、分量的に大丈夫?」ということなのですが。ヒロインは森川葵ちゃん(知らない)で、草平役はHey!Say!JUMPの知念くんだそうです。個人的には隣のあたしの方をドラマ化して欲しいです。って中学生の恋愛は色々と難しいのか…。なんだかんだ見ることになりそうなのですが、果たしてどんなドラマになるのでしょうか。楽しみというか、とりあえず興味深いですです。


■購入する→Amazon


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Tag [続刊レビュー] 2012.04.07
作品紹介→*新作レビュー*南波あつこ「隣のあたし」
2巻レビュー→近くにいる者が勝つという、シンプルな構図 《続刊レビュー》「隣のあたし」2巻
3巻レビュー→仁菜はこんなに成長してるってのに、京介は…《続刊レビュー》「隣のあたし」3巻
4巻レビュー→三宅君は期待以上の働きをしてくれたと思うんだ:南波あつこ「隣のあたし」4巻
5巻レビュー→よし、三宅君をヒーローにしよう!:南波あつこ「隣のあたし」5巻
6巻レビュー→お風呂上がりの女の子のいい匂いっぷりは異常:南波あつこ「隣のあたし」6巻
7巻レビュー→よし、これを最終回にしよう!:南波あつこ「隣のあたし」7巻
8巻レビュー→ついに訪れたこの時…:南波あつこ「隣のあたし」8巻
関連作品レビュー→南波あつこ「スプラウト」




1106121578.jpg南波あつこ「隣のあたし」(9)


上村が一番笑っていられるとこ行っていいんだよ
いいんだよ



■9巻発売しました。
 三宅から別れを告げられた仁菜。さらに、京介の自分に対する恋心を知り、動揺を隠せない。そんな中、新年を迎え初詣に出かけた仁菜は、三宅の“あるもの”を発見して…!?すれ違う15の冬。春の訪れは誰の隣で!?
 

〜こんなにも女々しい男達を見れる作品は稀ではなかろうか〜
 作中では受験が迫り物語は佳境に入りつつある中、肝心の男達は軒並み女々しさMAXな状態。いや、元々京ちゃんとか酷かったけど、それに引っぱられるように三宅も女々しさを増し、またここ最近登場回数の多い久米川も、京ちゃんに負けず劣らずなダメ男ぶりを発揮しています。それでも応援してあげたい三宅くん。自分から別れを切り出したのに、ついつい年賀状来てないか期待しちゃったりするそんな様子が女々しくも、どこか可愛らしいですよね(三宅に甘すぎる管理人の図)。それにヘタレたとは言え、頑張っている姿は見えていたので。別に手を引く必要なかったと思うんだけどなぁ。そんな三宅くんを見て、彼の友人たちは状況をこんな風に評価…
 
 
隣のあたし9−1
相手が悪すぎた っつー感じあるよな…
橘先輩だよ
男から見てもやっぱカッコいいもん
あの人…



 は?(憤怒)
  
 一応作中では後輩にも名が知れているカッコいい先輩。もちろんそういう設定はわかっているのですが、今回ばかりは読んでいて思わず「いやいや…」と言ってしまいました(笑)チャンスが巡ってきた今回も、少しは男を見せるかと思いきやどこか引き気味。前回笑顔で「言うよ」と伝え、次巻への期待を抱かせたっていうのに、9巻で結局言ってねーじゃねーか!(ダンッ) 
 
 なお今回長めに登場した久米川はさらにダメ男だったため、説明は割愛させて頂きます。てか結衣子ってやっぱりだめんずウォーカーなんですかね。結局離れられずにずるずると関係が続きがちな女の子に映ります。何気に本作で一番幸せになって欲しいのは、彼女かもしれません。


〜唯一のイケメン〜
 さて、三宅くん→ドヘタレ、京介→今回も見せ場なし、久米川→典型的ダメ男、と主要男性キャラがダメ男のスクラムを組んでくる中、唯一希望の光が見えていました。そう、京介の弟・圭介です。ずっと前から仁菜を気遣い元気づけてくれていた彼。その明るさと元気さは決してぶれることなく、いつもそこにありました。今回も仁菜を見つけるや否や、
 

隣のあたし9−2
おかしを持ってきてくれる


 プレイボーイ!これはモテ男の匂いがプンプンしますねぇ。女の子を見つけてすかさずお菓子持ってくるこの行動力と気遣い(?)。なお9巻にて三宅くんは仁菜に、やさぐれた笑顔をあげ、京介は重苦しい含みのある言葉をあげました。よし、こうなったらも圭介と付き合っちゃおうか!少女マンガとしてはきっと彼が王道の相手役だってば!そうすれば誰も傷つかない(マジ顔)


〜まさかの三宅くんルート復活説〜
 なんてまずありえない圭介ルートにちょっとだけ想いを馳せてみましたが、むしろ実現しそうな可能性が出てきたのは三宅くんのほうでして。前回手を引いたことで完全にその芽は消えたかと思ったのですが、「絵馬に想いを寄せて書いちゃう」という持ち前の女々しさが功を奏し一発逆転への舞台は整いました。あとは三宅くん自身が一押しできる勇気があるかどうか。今まではかませ犬として=絶対に叶うはずのない恋をするものとして、半分ネタ的に冗談めかして応援をしてきたのですが、最終巻だけはちょっと違う形で読み始めることになりそうです。「付き合える可能性がある者」として、その想いが成就して欲しいと素直に、そして心から思っています。これで三宅くんとくっついたら南波先生の信者になるレベルですよもう。本当、頑張って欲しいなぁ。。。


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Tag [新作レビュー] 2012.03.14
1106111573.jpgみきもと凛「きょうのキラ君」(1)


私は彼と365日一緒にいてみようと思います
生きていこうと思います



■肩にインコを乗せた変わり者のニノと、無意味な毎日を過ごす遊び人のキラ。家が隣同士なのに、話したことすらなかった二人…。けれど、ニノがキラのある秘密を知ったことから運命は交錯し、煌めく生の時を刻み始める…!2人が紡ぐ、天国に一番近い恋、第1巻登場!!

 「近キョリ恋愛」のみきもと凛先生の新作になります。描かれるのは、とある男女の365日の恋物語。物語の主人公は、教室のスミにいるような暗くて地味な高校一年生・岡村ニノン。クォーターで、しかも肩にインコの剥製を乗せているという出で立ちであるため、クラスにも馴染めず(当たり前だ)浮いたキャラとしてクラスメイトから距離を置かれていました。そんな彼女の隣の家には、同じクラスの全く正反対の男子・キラが住んでいます。クラスの中心的存在で、我が物顔でやりたい放題。お互い見知った間柄ではあったものの、この先クラスでは関わることなくいるのだろう…そんな風に思っていたのも束の間、ある日彼の秘密を知ってしまってから、二人の関係は一気に変化していきます。その秘密とは、彼があと余命1年しかないということでした…


きょうのキラ君
一時の感情で思わぬことを。最初は同情めいた感情が大きかったかもしれない。けれどもやがて、それは愛情へと変化していきます。


 「近キョリ恋愛」もそうでしたが、非常に濃いキャラで固め、割と勢いのままに突っ走る印象。不必要なリアリティは削いで、その分ドラスティックにドラマティックに物語を彩ります。ヒロイン・ニノンの肩に乗っている鳥の剥製は実は本物で、その子は実は人間の言葉が話せるという設定であったり、母親は無駄にコスプレ好きだったりと、これがどのように作用してくるのかわからない無駄っぽい設定もあり。余命1年という枠の中であがく、オレ様なヒーローと地味なヒロイン像であれば、少コミなどでありふれているものであるのですが、こういった他の部分での補強がある分、しっかりと差別化が図られているように思います。
 
 余命一年だからと言って、いきなり恋仲になるわけではありません。きっかけは同情や慰めに近いものであったと言った方が良いかもしれません。1年という期間設定は、短いようでいて、描きようによっては非常に長いもの。いかに濃度を上げて落とし込むかが重要になってくると思うのですが、メインキャラ二人は非常に行動的で、またインコも割と騒がしく動き回るので、画的にはとっても濃いです。終わり方を左右するのは、ヒーローの行く末にかかっているのですが、果たしてこちらはどちらなのでしょう。
 
 また本編とは別で、「近キョリ恋愛」のアフターストーリーが掲載されています。いわゆる「事後」ってやつなのですが、こういう空気感好きですね(笑)みきもと凛先生のファンが買うであろうという前提のもと掲載されていて、本編も“らしさ”が出ている作品と、みきもと凛先生のファンは納得の一冊となっているのではないでしょうか。


【男性へのガイド】
→この人の作品はとっても女性向けというイメージが強いです。ヒロインのはじけっぷりのベクトルであるとか、ヒーローのオレ様っぷりとか。
【感想まとめ】
→良くも悪くもみきもと凛作品。こちらのヒロインも人気が出そうです。割と飽和状態な題材だと思うのですが、しっかりと自分の色を出してくるのはさすがだと思います。


作品DATA
■著者:みきもと凛
■出版社:講談社
■レーベル:KC 別フレ
■掲載誌:別冊フレンド
■既刊1巻
■価格:429円+税


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Tag [続刊レビュー] 2012.02.26
作品紹介→*新作レビュー*すえのぶけいこ「リミット」
2巻レビュー→サバイバルはあくまでダシ、メインはあくまで人間関係:すえのぶけいこ「リミット」2巻
3巻レビュー→表紙も中身もドインパクト:すえのぶけいこ「リミット」3巻
4巻レビュー→犯人はだれだ!?:すえのぶけいこ「リミット」4巻
5巻レビュー→勝手に堕ちて、落ちて、落ちた:すえのぶけいこ「リミット」5巻




1106102195.jpgすえのぶけいこ「リミット」(6)



一緒に想いを
声を届けよう
あたしもついてるから



■6巻発売、完結しています。
 立上がる。何度でも、何度でも。もう逃げない…。罪を抱え、地に堕ちることを選んだ日向。盛重も憎しみの感情を捨てきれず、神矢も背中の傷に苦しむ。だが今野は、前へ進むことを決意する。全員で生きて帰る、強い想いを胸に…!
 

~完結しています~
 6巻発売、完結しています。完結巻は既に昨年に刊行されており、だいぶ遅れてのレビューです。始まった当初は6巻まで続くなんて思っていなかったですよ!びっくりです。すえのぶけいこ先生らしく、息つく暇を与えない壮絶な物語でしたが、なんとか終結を見せてくれて、面白かったとか良かったとかよりもまず、ほっとしたというのが個人的な感覚でありました。
 

~前に進むこと~
 こういったぶっ飛んだ内容のお話だと、割と描きたかったテーマが霧散してしまいがちな印象があるのですが、本作はこと最終巻の6巻においては、非常にわかりやすい形で何度も何度も描かれていました。それは「前に進む」ということ。これは日向が崖下に落ちそうになった際にも今野が放った言葉ですし、物語のラストもこの言葉によって閉められています。「限界」「極限」…作品のタイトルであるリミットが表すその意味は、これ以上前に進むことができないというニュアンスの言葉ですが、そんな状況下であっても諦めずに前に進んでいくことが大事なのだ、と。


リミット6
 それぞれにリミットとして感じるものは違います。けれども誰もが皆が抱えている。最後の「同じ海を泳いでいたのかもしれない」という言葉は、きっとそういうことを言いたかったのじゃないかな、と思います。例えば今回リミットが分かりやすい形で現れたのは、盛重さん。救助を目の前にして、父親による家庭内暴力の話をし、帰らないとまで言い出した彼女。「出口のない部屋」として描かれたその境遇こそがまさに彼女にとってのリミットでした。


~日常もまた究極のサバイバル~
 それに向き合い、その状況を変えること。一人だけの力でなくてもいい。支える人がいてくれる。その上で、前に進むために自分の想いを伝えること。タイトルの「リミット」が表すものは、今ある生命の危機というよりも、帰ってもなお待ち構える極限のことのように、個人的には受け取れました。今回のこの事故は、それが皆共有出来る形で提示され、それをきっかけに考えを変化させる契機としての役割を果たしました。やりかたとしてはある意味非常に乱暴ではあるのですが、だからこそわかりやすいし、物語としても上手く味付けがされて面白い。改めて上手いなぁと気づかされます。帯には究極のサバイバルストーリーとありますが、日常もまた究極のサバイバルなのかもしれませんね。6巻の表紙に描かれている今野は、これまでのサバイバルスタイルとは異なる姿で描かれていますが、それでもなお厳しい日常を生き抜く戦闘服のように映って仕方ありません(さすがに読みすぎ?)


■購入する→すえのぶけいこ

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