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Tag [新作レビュー] 2011.02.24
1102992498.jpg宇野真由美「婚圧ファイター」(1)


してやる
結婚を!



■30歳を目前に彼氏にふられたけれど、夢は専業主婦・ロストジェネレーションのさやか(もちろん未婚)。仕事一筋猫とマンションとバブルの匂いを感じさせるブランドものだけが手元に残り、がん検診におびえ、ひとり遺言書を書くもうすぐ40歳の多恵(やっぱり未婚)。三十路と四十路、いまだ婚活スタートラインの二人が、運命的に出会って目指すは理想の結婚相手!世間や家族の「結婚しないの?」に疲れた人に贈る、泣くより笑え!な婚活ファイターズ戦記!

 コーラス連載の、三十路&四十路コンビがおくる婚活コメディ。婚活をテーマにした作品は様々ありますが、こちらはお二人でのご活躍。一人目のヒロインは、三十路間近も、結婚間近と期待していたにも関わらず、ある日突然フラレてしまったさやか。もう一人は、バブルの匂いを未だ引きずり、ハードルは高いままに気がつけばがん検診に怯えるような歳になってしまった多恵。お互いが、30と40を迎え、自分の人生に絶望し、大酒をくらい道端で寝てしまったことをきっかけに、二人は出会います。起きてみれば、ヒドい有様で側溝で倒れる自分。そしてその横には、あれもう一人の女の人が。なんとなく同じ境遇であると悟った二人は、意気投合してそれからも度々会うようになるのですが…


婚圧ファイター
ニートの弟に心配されるレベル。え、30でそんななんですか…。


 30歳で結婚に焦るというのは、ある程度話にも笑いが生まれ良さそうですが、40歳という大御所投入。これは本気の現れか。一人ではなかなか婚活に踏み切れないものの、二人いれば怖くない。面倒見のよい四十路は、情けない年下を見てしっかりしなくてはと思い、逆に三十路は四十路を見て自分もまだまだいけるんじゃないかと思ったり…けど一番底にあるのは、お互いがんばって幸せになろうということ。基本的にはお馬鹿というか、単純で乗せられるとどんどん進んでしまう二人なので、物語は婚活にシフトした時点で驚くほど軽快に転がって行きます。お見合いパーティーに出席したり、婚活のためのセミナーに通ったり、ネタは尽きることはありません。NHKの深夜とかにドラマでやってたら不思議と見ちゃいそうな、そんなテイストのストーリーとなっています。
 
 幸せとは決して言えない女性二人が、それでも楽しく文句を言いつつ日々逞しく生きて行くというところで、なんとなく、直木賞にも選ばれた、唯川恵先生の「肩ごしの恋人」を思い出しました。あそこまで痛快ではなくとも、負のエネルギーを笑いに変える、見えないパワフルさというのが、なんとも。また物語を見ている感じ、婚活に力を入れれば入れる程、結婚から遠ざかっているように映るのが、なんとも面白く、そして悲しい。二人である以上、抜け駆けしづらい雰囲気ではありますが、その辺をどう描くのかも注目といったところでしょうか。自分はまだ20代の前半ということで、アラサーにも足を踏み入れていないのですが、気がついたら自分も…とかなっていそうで怖いところです。


【男性へのガイド】
→婚活コメディということで、男性は結構ダメ出しされるパターン多し。単純なコメディとして楽しむのであれば、面白いかと思います。
【私的お薦め度:☆☆☆  】
→婚活ストーリーはさほど珍しくもないものの、二人組で結構必死という様は失礼ながら面白いです。


作品DATA
■著者:宇野亜由美
■出版社:集英社
■レーベル:クイーンズコミックスコーラス
■掲載誌:コーラス(連載中)
■既刊1巻
■価格:457円+税


■購入する→Amazon

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Tag [新作レビュー] 2011.02.19
1102992500.jpg有田直央「ぼくらは4月を夢見てる」


そうかこれは
“あたたかい”だ



■空の上では神様が、大好きな女の子をひねもす眺めておりました。雲の下、日のあたる部屋にあるピアノを、女の子が弾くと、こころに花が咲いたような気持ちになります。でも最近、女の子はうつむいて携帯電話をいじってばかり。ピアノには見向きもしません。空も見上げてくれません。哀しくなった神様は、いてもたってもいられずに、一つの大きな“罪”を起こしてしまいます…

 「日本サンタクロース株式会社」(→レビュー)にてデビューされた、有田直央先生の新作です。青い表紙が目を引きます。デビュー作と同じように、こちらもまた、一風変わった設定を用いた、ファンタジーチックなストーリーとなっています。物語の主人公は、とある町を空から見守り、秩序を保っている神様。何千年も生きる神様の中、彼の年齢はまだ27年。精神年齢はまだまだ子供です。感情が生まれて7年、そんな彼が楽しみにしていたのは、下界でいつも女の子が弾いていたピアノ。その音色を聞くたびに、心がに花が咲いたような気持ちになっていたのですが、ここ最近はまったく音が聞こえず、見下ろせば彼女は俯いて携帯電話をいじってばかり。哀しくなった神様は、ひとつの大きな“罪”を犯すことにするのですが…


ぼくらは4月を夢見てる
自分の思いはなかなか通じない。相手を想うが故の行動でも、裏目に出てしまうことも。それでもそれを乗り越えた先に、あたたかいものが待っている。



 神様が犯す罪とは、携帯電話の電波を全く繋がらない状態にし、さらに自ら下界に降りて、その彼女・桜子の元に降り立ってしまうというもの。神様と言えど、自我が芽生えたばかりの彼は、若者っぽい見ためにすら中身が追いついていない、いわば幼稚園児のような精神年齢の持ち主。童心いっぱいに自分の想いを伝え、桜子の元に居座ることができた彼なのですが、やがてその勝手な行動は、大きな波を生み出し…というお話。心に傷を抱える一人の女子高生と、そんな彼女に恋をした、幼き神様の関係を描いた、ハートフルストーリーとなっております。
 
 神様という存在は基本的に変化のない存在で、今回のようなケースはいわば歪みのようなもの。精神年齢が子供であり、かつ「成長」というパターンが起こりえない特殊な存在である主人公は、見る人にとってはかなりイライラする存在かもしれません。身勝手な存在ってのは、それだけで結構疲れてしまうわけですが、ましてや彼は神様で、しかも見ためとのギャップまでありという。主人公自身は、過程の中での変化はあれど、最終的にはスタート位置に帰るも、その中で、彼と関わった少女が一人、前向きに進む心を持つことができるという、ちょいと変わった構図が生まれています。神様ベースで考えると、救いを見せつつもなんともやるせないお話になっているのですが、桜子ベースで考えると、なかなか素敵なお話。費用対効果というと語弊がありますが、一人の女の子をきっかけに、ここまで他人に多くの影響が出るというのは、ハリウッド映画のようでもあり、結構贅沢。垢抜けなくとも、全体的にウォームカラーが似合いそうな、当たりの柔らかい物語の雰囲気も素敵です。


【男性へのガイド】
→ちょいと不思議なテイストの物語。誰視点で物語を楽しむかによって、受ける感覚は変わってきそうです。
【私的お薦め度:☆☆☆  】
→サンタクロース株式会社が、割とストレートに感動を呼び起こすお話だったので、今回のように捻った形でのストーリーは意外。神様に賛否両論別れそうなところです。


作品DATA
■著者:有田直央
■出版社:集英社
■レーベル:コーラスクイーンズコミックス
■掲載誌:コーラス(連載中)
■全1巻
■価格:457円+税


■購入する→Amazon

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Tag [新作レビュー] [オススメ] 2011.01.26
1103001378.jpg稚野鳥子「家族スイッチ」(1)


彼女はとても強い目をしていて
だけど触ると壊れてしまいそうな
消えてしまいそうな
生身の人間じゃないみたいだった



■元俳優の父に、人気声優の伯父、兄たち弟たちはみなみなイケメン。自分も見ためは悪くない方だと思うけれど、今ひとつパッとしないのは、家族兄弟が皆々派手で変人だから。早くに他界した母の代わりに、家事全般の全てを請け負う三男の鷹司は、破天荒な家族に振り回されっぱなしの、苦労性。貧乏くじばかりの日々に、楽しくもストレスが積もっていたある日、突然鷹司の姉だという女の子が現れて…!?

 「クローバー」や「東京アリス」の稚野鳥子先生の新連載です。「クローバー」は不定期ではありますが、一応現在も連載中だったと思うので、並行連載となるようです。(追記:「クローバー」は完結しました)揃いも揃ってイケメンながら浮世離れした変人ばかりが集う、男所帯の玉木家が、この物語の舞台。母は早くに他界し、残された父に、なぜか同居している伯父、そして上は社会人で下は小学生の男四人兄弟。主人公となるのは、その中でも比較的地味で、かつ一番の常識人である、三男の鷹司となります。元俳優で常識知らずの父、人気声優でこれまた常識のない伯父、異常なまでの女好きで日毎食いまくりの長男、一切言葉を発しない次男、そしてIQ180の天才ながら生意気盛りの四男。そんな彼らのハチャメチャな行動の尻拭いを、いつもさせられる主人公。誰も家事をしないので、全部自分が。そんな苦労ばかりの彼の日常は、お婆ちゃんの法事に赴いたその日から、大きく変わることになったのでした。


家族スイッチ
高3の姉にあたるが、恐ろしく小さい。けれども一本筋が通った性格で、ちゃんと自分の意見は言う。不思議な魅力を持った子です。


 イケメンで個性派だらけの男家族。そんな彼らのハチャメチャな日常を、唯一の常識人である三男の視点から覗く。。。物語の始まりは、ごっちゃにのホームコメディという感じで、非日常が繰り返されるけど、それも悪くないよね、という落としどころの話が2話ほど続きます。そして、「あれ、表紙の子いつ出てくるんだ?」となったところでようやく登場。父と一時期離婚していたときに、母が違う男と作ったというその子は、高校三年生ながら少女にしか見えない姉・天留。祖母と暮らしていたということから、喋り方が女子高生らしからぬ彼女は、お約束のように玉木家で暮らすことになります。
 
 彼女の登場によって、男家族にバラバラに向けられて定まりのなかったフォーカスは、一気に一点に集中することになります。そのシフトチェンジは見事と言うほかなく、序盤に家族を描いたことで、以降特に特徴説明せずとの物語でキャラが活きるという効用もあり。当然のことながら、主人公は天留を強く意識するようになるのですが、どうにも彼女には、内に秘めた悩みがあるようで、この後の物語の進行に陰を落としてきます。そこに謎を残した次男や、天留と完全に血の繋がりのない四男などが絡み、物語は2巻へ。恋愛と家族的物語、双方の要素を混ぜ合わせた風合いの物語。1巻はまるまる導入という形になるのですが、非現実的現実をこれでもかと用い、華麗に舞台設定をしてしまうその過程だけでも十分に面白く、また先への期待も大きく抱かせてくれます。もちろんオススメで。


【男性へのガイド】
→男所帯ですが、苦労性の男の子が主人公ということで親しみやすく、また天留の登場は大きなプラスかと思われます。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→なんだかんだでスイスイ読んでしまうし、面白いし、好き。ちょっと情けない主人公にも感情移入しやすく、天留もカワイイです。


作品DATA
■著者:稚野鳥子
■出版社:集英社
■レーベル:マーガレットコミックスコーラス
■掲載誌:コーラス(連載中)
■既刊1巻
■価格:400円+税


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Tag [続刊レビュー] 2011.01.16
作品紹介→*新作レビュー* 勝田文「ちくたくぼんぼん」


1102992499_20110116023752.jpg勝田文「ちくたくぼんぼん」(2)


美しい鐘の音
これは恋した瞬間の音   



■2巻発売しました。
 善行に励むイワは、失恋乙女・央子をかくまうことに。塞ぎがちで自分のことをあまり話さない彼女の気持ちは良くわからなかったけれど、とにかく善行、彼女のためにとイワは走り回る。だが勝手に都一の部屋に入った央子ともみあって、大事なレコードを割ってしまう。絶望したイワは、三五に心中をもちかけるけれど…!?
 
 
~待望の第2巻~
 1巻発売は2009年末、およそ一年ぶりの新刊となりました。1巻発売時は2話のみの収録であるにも関わらず、がっしりと心掴まれ、年末のオススメ作品ピックアップでも取り上げてしまったりしました。で、今回の2巻なのですが、全て表題作「ちくたくぼんぼん」収録で、本当に本当に面白かった。こんなに素晴らしい作品が読めることが嬉しくなって、帰省の新幹線の中で思わず目頭が熱くなったという(笑)だからこのレビュー、結構気合いを入れて臨んでいるのですが、正直なところ、この作品の魅力を伝えきれる自信が全くないです。いつものレビューでも、魅力を伝えられている感覚は全然ないのですが、それでもなお、語りたい魅力が多すぎるので。。。さてさて、だいぶ前置きが長くなりましたが、内容に触れて行きましょう。
 


~時計に重ねる~
 この作品、タイトルにもなっているように、「時計」がメインモチーフとなっており、物語中では何かにつけて時計に重ね合わせて物事が語られます。三五の、イワの胸の鼓動から始まり、2巻ではその傾向がより顕著になりました。今回は大きな女の子・央子とのやりとりが序盤のメインコンテンツとなるのですが、彼女と彼女に思いを寄せる幼なじみの関係を、ミステリィ時計で表してみたり、央子の空中ブランコの様子を時計の振り子で表してみたり。また時計の鐘の音を、「恋をした瞬間の音」としたり、懐中時計を三五に重ねてみたり。「時間」と「心」と「関係性」を、「時計」という一つのモチーフに集約する、その上手さと美しさに、手法的な感動すら覚えてしまいます。無理矢理感もなく、物語として必然という持っていきかたがまたすごいというか。


~視点変化の秀逸さ~
 この作品の、この物語の何がすごいと感じるのか、まだまだ説明できるようなレベルに噛み砕けていないので、当然のことながら説明など出来るはずもないのですが、読んでいてすごいなぁと思ったシーンを例に、少しでも感じてもらえればなぁ、と思います。それが、イワがサーカス団の助っ人となって、央子の空中ブランコの様子を見守るシーン。コマ背景が黒塗りになって、4ページに渡って一つのまとまりとして描かれるのですが…
 

ちくたくぼんぼん2-1
 まずは1・2ページ目。央子の台詞から始まるこのシーンなのですが、2コマ目以降はイワのモノローグが語られ、モノローグ的な視点は彼女に移ります。以後3ページ目まで彼女のモノローグが綴られるのですが、2ページ目最後のコマは、ひっくり返っているように、画的な視点は宙を舞っている央子のもの。二つの視点が、異なるアプローチで同居していることになります。
 



ちくたくぼんぼん2-3
 そして3~4ページ目。2ページ目左下に施されたコマ外の装飾が、今度は3ページ目右上に当たる形で繋がりを演出。この左下と右上という配置がまた絶妙なんですよ。単純に視点の流れという意味での繋がりを持たせるだけでなく、先の画的な視点の移り変わりという意味で、2ページ目は央子視点のひっくり返っているコマにかかる位置で左下、そして3ページ目は再びイワの視点に戻る形で右上での配置。
 
 またモノローグのラストで三五と時計の事に触れ、央子メインであった物語から一気に転換。そして4ページ目は三五の視点へと転換し、左下のコマ背景を白抜きにすることで次のシーンへと繋げます。この流れの作りが、ただただすごいなぁ、と。そしてその中で違和感を放つ、4ページ1コマ目。実はこれも、先の空中ブランコのコマのように、上下が逆になっているんですよね。しかもシーンとしては、雨がしとしと降る港。雨が降るシーンを、敢えて上下逆で描くという。。。変です、すごく変なんです、違和感があるんですよ。でもそれがすごいと思えてしまう。多少の違和感があることで、よりこのシーンに深みが増す印象すらあります。


~コウモリと人間~
 物語ラスト、三五はその姿を消してしまいますが、これもまたとある存在と重ねられたシーンでありました。それは、1巻にて登場した、コウモリの三五。名前だけでもあからさまにその姿が重ねられていますが、怪我を負っている:病気を抱えているなど、その状況、行動なども被る部分が多いです。今回時計屋から姿を消した三五ですが、コウモリの三五も時計から飛び出し、その姿を消してしまいました。このままコウモリの三五に重ね合わせたら、もうイワの元には戻ってこないことになってしまいますが、帰る場所、帰る仲間のいるコウモリの三五とは違い、人間の三五は今の場所以外に帰る場所はありません。飛び出したという部分で重ねるのではなく、あるべき場所に戻ったという捉え方で、最後三五がきっともどってきてくれることを期待して3巻を待つのでした。ああ、今から楽しみで仕方がないです。多分3巻が出るのもだいぶ時間がかかるのでしょうが、それでもそれでも、いつまでも待ちたいとおもいます。


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Tag [新作レビュー] [オススメ] 2010.08.20
1102950683.jpgくらもちふさこ「花に染む」(1)


あの時
瞬時に塗り替えられた空気感を
上手く言えなかった



■比々羅木神社の息子・圓城陽大は、兄・陽向、従姉妹の雛と共に弓道に励んでいた。神社の隣の畳店の娘・宗我部花乃は、陽大の流鏑馬姿を一目見て心打たれ、弓道を始める。それまでは単なる「隣の神社の息子」というだけだったが、その日からは違う。そして今では、園城兄弟と共に、倭舞中学の弓道部で弓を引く日々を送っている。しかしそんな毎日は、ある日突然終わりを迎える。比々羅木神社の宝物殿から出火。瞬く間に燃え広がる炎の中、園城家の人々は、宝物と家族を守るために宝物殿へと飛び込んでいくが…

 くらもちふさこ先生の新作は、連載中の人気シリーズ「駅から5分」(→レビュー)に繋がる、もう一つの物語。神社の息子に生まれた少年と、その彼の流鏑馬姿に心打たれ、以来ずっとその姿を追ってきた少女の姿を、花染町を舞台に描いていきます。神社と、その隣の畳店。そこの子供として生まれた二人、陽大と花乃。お互いに面識はあったものの、花乃にとって陽大は、あくまで単なるお隣さんの息子という感覚。しかしある日、彼の流鏑馬姿を目にしたことで、その印象は一変。一瞬で心打たれ、彼女もその姿、そのとき感じた感覚を追って、弓道を始めます。入学した倭舞中学の弓道部では、陽大、陽大の兄の陽向と共に、弓を引く日々。メキメキと腕を上げた末、関東大会で団体優勝するレベルにまでなります。しかしそんな日々も、ある日突然終わりを告げることに。陽大たちのいる比々羅木神社の宝物殿から出火。宝物を守ろうとした母に、その母を助け出そうとした父、そしてそんな二人を追いかけた兄。ひとり引き止められた陽大だけが、結果として助かるものの、失ったものはあまりに大きすぎました。結局陽大は、生まれた町を離れ、花染町の親戚の元に引き取られることに。離ればなれになってなってしまった、陽大と花乃。しかし花乃の想いは、決して彼から離れることはなく、数ヶ月後、再び二人は出会うことになるのです…というストーリー。


花に染む
斜めに描くことで生まれる、緊張感と気合い、そして躍動感。非常に印象的で、ついしばらくの間眺めてしまいました。やっぱすごいな、と。弓を射る姿のカメラワークが、多種多様で、しかも全部素晴らしいという。


 中学生二人をメインに据えつつも、かなり状況的にはヘビーな物語展開。それでも暗く重苦しく展開するのではなく、緊張感のある空気感を持続させるという形に変換。独特の雰囲気を保った作品に仕上っています。「駅から5分」は短編形式で幾つもの物語が入れ替わりで続いていきますが、こちらは一つの物語で構成。舞台は同じ、物語は絡み合いつつも、味わいや魅せ方は全く異なったものになっているという印象を受けました。
 
 視点は終始、畳店の娘の花乃。彼女の心情、行動から、陽大とその周辺にいる人々を描き出していきます。中学生がこれほどまでにしっかりと考えて行動しているのかどうかはさておき、こういう関係、こういう雰囲気、こういう考え方をしているというのが、しっかりと伝わってくるのは大きな魅力。出発点である強烈な彼の存在・姿という軸をしっかり持っているため、揺れる心を描きつつも、ある意味安定・安心して見ていられるのは、こういったところに要因があるのためでしょうか。ただひたすらに、一つのものを追い求める少女に、その背中よりもあまりに大きいものを背負わされた、物静かな少年。どちらもこの上なく素敵。この二人がこれから、どんな物語を花染町で作り上げていってくれるのか、楽しみで仕方ありません。
 
 絵柄の基本は、やはり時代を感じるものであり、うちのブログを見てくださっている方達のことを考えると、おすすめするのはどうだろうという考えが頭をよぎります。けれども、やっぱり好きなので、結局はおすすめしよう、と。とりあえず、絵柄が苦にならないという方であれば、読んでおいて損はないかと思います。また「駅から5分」との兼ね合いですが、こちら単体で読んでも全く問題なし。「駅から5分」を読んでいると、より作品に味わい深さが出るという感じだと捉えておいていただければ良いのではないでしょうか。どちらを先に読むも良し。個人的にはこちらの方が、より印象的だったので、こちらを強くおすすめしたいところではあります。
 

【男性へのガイド】
→くらもちふさこというと、やはり「少女漫画」なわけですが、好きな人も当然いますでしょう?やっぱり読み慣れているほうがよいとは思います。
【私的お薦め度:☆☆☆☆☆】
→正直客層を考えると、強めプッシュは気が引けるのですが、好きなものは好きということで、こんな感じで。だって絶対2巻気になりますし、そして面白いに違いないし。


作品DATA
■著者:くらもちふさこ
■出版社:集英社
■レーベル:クイーンズコミックスコーラス
■掲載誌:コーラス(2010年3月号~)
■既刊1巻
■価格:419円+税


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かくかくしかじか
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シリウスと繭
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レビュー
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BEARBEAR
池ジュン子「BEAR BEAR」(1)
レビュー
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有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。
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