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Tag [続刊レビュー] 2010.09.16
作品紹介はこちら→麻生みこと「そこをなんとか」
3巻レビュー→菅原さんが極上の枯れセン要素を含んでいた件《続刊レビュー》「そこをなんとか」3巻



1102957382.jpg麻生みこと「そこをなんとか」(4)


萌えっ子
ブラボー……



■4巻発売です。
お金持ちを夢見て弁護士になるも、貧乏ヒマなしの改世楽子。そこに、著作権侵害の案件が!「勝てば一攫千金…」とウットリの楽子だったけれど、そう簡単には事は運ばず、案件は思わぬ方向へと転がっていく…。またかわいい弟に、「男の先輩からセクハラを受けている」と相談された楽子。難しいセクハラへのアドバイスとは。一方そんな中、デキる兄弁・東海林と、大手弁護士事務所のクールビューティー、中道の間には、昔ただならぬ出来事があったようで…!?


~セクハラって難しいですよね~
 相変わらずゆるゆるのままに、4巻。いいですねー、気楽に、そして楽しく読む事が出来る。自分には笑福亭仁鶴よりも麻生みことですよ、はい。今回の案件は、著作権侵害に、保険金請求、そしてセクハラの三本立て。どれも自分に関係あるような、ないような。中でも個人的に一番気になったのは、セクハラです。紆余曲折あって、結論としては「イヤじゃなければスキンシップ、イヤならセクハラ」という実にわかりやすい指標が提示されるのですが、それが難しいところ。怖くて結局遠ざけるワケですが、実際皆さん職場ではどの程度セクハラを意識しているのでしょうか。ウチの職場は女性が多く、パワーバランスも圧倒的に女性に偏っているので、セクハラなんてあってないようなものですよ。ある意味平和な部署でございます。


~すんなり終わらせないところが素敵~
 あくまで小さな世界で物語を着地させたいという、その気概が素敵。見所は、案件解決が生み出す人間ドラマと感動であると同時に、意地やプライド、卑しい心から発生するズレによって生じる、笑いであったりします。例えば著作権の回で、見事勝利するも、クライアントが出した結論が「ジムに行く!」という至極小さいことであったり、セクハラの回で、相談員がゲイ疑惑をかけられている男の元カノでありながら、恥ずかしくて真実を話せず事態はこじれるばかりという展開など、決して「いい話だなぁ」で終わらせないところが、なんとも素敵。だからこそ、この物語は味わい深い。現実の世界でも、個々人の小さな意地やプライドが、事態をわけの分からない方向に転がしたりするもので、ある意味リアルだなぁとすら感じさせてくれるのです。


~よく見ると変人しかいない~
 四角関係がぼんやりと出来つつありますが、この四人の関係を見ていて、仕事は奥山・城之内事務所の二人の方が強いけれど、プライベートに関しては圧倒的に楽子と東海林さんの方が力が上だなぁ、と感じさせられます。楽子と赤星の関係は見ての通りですが、中道さんと東海林も、互いに我が道を行くというタイプでありながら、中道さんの方が相手の事をよく見ている・気にしている感じがして、ギリギリのところで折れるのは、やはり中道さんなのかな、と。てか基本的にみんな自分の好きなようにやってますよね。相手に合わせて動いているのは、赤星くらい。けどあまり彼には肩入れする気になれないんだよなぁ。なんでだろう。それよりも不器用な中道さんや、偏屈な東海林さん、そして何よりフリーダムで明るく楽しい楽子が大好きなのです。あ、そうか、変人の集まりだから、普通の赤星くんはちょっともの足りなく写る。そういうことなのかもしれません。



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Tag [続刊レビュー] 2010.09.13
作品紹介→よしながふみ「大奥」6巻


1102949804.jpgよしながふみ「大奥」第6巻


…生きるという事は
女と男という事は!
ただ女の腹に種を付け子孫を残し
家の血を繫いでいくことではありますまい!



■6巻発売しました。
 将軍・徳川綱吉も歳を重ね、いよいよ後継者を選ぶ段階に入った。候補は二人、一人は甲府宰相である徳川綱豊、そしてもう一人は紀州の三代藩主・徳川綱教。どちらも聡明であり、家臣達からの信頼も厚い。そんな中、己の人生・存在を省み、心身を弱らせていく綱吉の姿を見て、右衛門佐は…。退く身の綱吉と、新たな将軍、そして彼女たちを取り囲む、家臣達の想い。益々目が離せない、男女逆転大奥、華麗に第6巻登場!!
 

~映画化~
 映画化も決定しており、10月1日には早くもロードショーとなる予定。水野役を嵐の二宮和也くんが務め、吉宗を柴崎コウさんが務めるということですが、水野役が二宮くんてのはちょっとイメージと違うような気もします。まぁ映画で原作のイメージをどうこう言うなんてのは、野暮なのでしょうけど。というわけで、映像化のタイミングに合わせた形で、6巻登場です。前回、綱吉編で哀しき末路を匂わせつつ終わったのですが、今回はその綱吉編が完結致しました。その綱吉編が、どこまでも素晴らしかった。ラスト近くのシーンでは、思わず泣いてしまいました。
 
 
~綱吉と右衛門佐のやりとりに思わず涙~
 月のものも来なくなり、もはや後継者を残すことが出来なくなった綱吉。将軍として政に精を出すのも将軍職の重要な役目ではありますが、最も大切なのは、直系の後継者を残すこと。そのことは、周囲の者も本人も、殊更強く意識していました。ゆえに、可能性がなくなったことによる絶望感は、相当なもの。残された政に関しても、悪名高い「生類憐れみの令」によって、庶民の生活を逼迫させるなど、救いとはなってくれませんでした。そして出てくる考えは…「どうして自分は生きているのだろう」というものでした。そんな彼女の姿を見て、右衛門佐の感情がついに爆発。ついに綱吉と右衛門佐は結ばれることになったのでした。その後の、右衛門佐の台詞が泣かせた…
 

大奥6
今まで子を生すため以外に女人と褥を共にした事のない私には
この夜だけが真の女と男の夜でござりました
あなたとこうなったのが
今のこの皺だらけの措いた体で本当に良かった…


 この一言で、この一晩で、お互いがどれほどまでに救われたものか。言葉では、右衛門佐が救われたように言っていますが、むしろ救われたのは綱吉の方。将軍として、女として結果を残すことができなかった今の自分を、全肯定で抱きしめてくれた。これ以上ない、救いの言葉です。そうか、こんな考え方もあるのか、と。その後綱吉は、父親からの呪縛から逃れるように、後継者を決めます。今までは、心の拠り所が父親しかなかった綱吉に、新たな心の拠り所が現れた瞬間でした。最後、二人の結末はあまりに哀しいものでありましたが、この瞬間、束の間の幸せが訪れていたのが、せめてもの救いだったのかもしれません。
 
 どこまでも将軍の姿を描きながら、どこまでも女としての生き方を描く。この二つが完全に物語の中で共生し、全く新しい物語を、違和感なく作り出す、やっぱりよしながふみ先生ってすごいなぁ、と6巻で改めて思わされました。だってめちゃくちゃ「大奥」なのに、全然「大奥」じゃないんですもの。自分にもっとボキャブラリーや表現力があったら、もっとこの作品の面白さやすごさを伝えられるのに、それができないのがどこまでももどかしい。とにかく読んで欲しいと、それだけです。
 

~物語は家宣編へ~
 物語は徳川家宣編へ突入。といっても家宣は、在任3年で他界と、任期は短いものとなっております。それでも、悪化した財政・治安の回復に尽力し、一定の功績を残した将軍として、歴代将軍の中でも名君と言われている人物。あくまで家継から吉宗へと渡す繫ぎの役目だとは思うのですが、その部分は蔑ろにせず、しっかりと物語の中に落とし込み、彩りを加えています。こちらの章でメインとなるのは、家宣自身よりもむしろ、その側近であった間部詮房と月光院、そしてそこがきっかけとなる、江島生島事件になります。いやはや、どういった形でこの事件を描き出すのか、今から楽しみですね。


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Tag [オススメ] [読み切り/短編] [名作ライブラリ] 2010.07.11
07195822.jpg中村明日美子「片恋の日記少女」


見てるだけでは
ものたりないのです
俺は



■読みきり6篇を収録。それでは表題作をご紹介します。
 探しても見つけ難いのに、恋とは突然訪れるものです   
 昨年亡くなった父の部屋で見つけた日記帳に書かれていたのは、あまりにも淡く儚い、一人の少女への想い。電車の中で見かける、勤め先の学校の生徒に、父は恋をしていたのだった。物理の教師で堅物の父からは、想像もできない内容に、その少女に興味を持ったたかしは、ダメ元で日記に書かれていた電車に乗ってみる。みどりの花のピン留めをした、その少女は、偶然にもたかしの目の前に…
 
 父と元・息子、父と娘の友達、姉と偽り男と会う弟…親子兄弟ジェンダーが入り混じった、ヒトとヒトとの多彩な関係性を、おかしくせつなく描いた作品集です。中村明日美子先生といえば、いまや押しも押されぬ人気作家。BL出身で、最近ではエロティクスFやモーニングでも連載をするなど、女性向けだけでなく、男性向け漫画誌にまで進出しておりました。しかし先日、ハードワークが祟ったのか、心身の状態を著しく崩してしまい、しばらくの間活動休止とのこと。復帰が待たれます。この作品は、そんな中村明日美子先生が、白泉社はメロディを中心に描いた物語を中心に収録されたもの。ちょっと変わった組み合わせで送る、なんとも愉快でなんとも切ない物語が展開されていきます。


片恋の日記少女
難しい言葉はあまり使わない。シンプルに、だからこそスッと心に届く。


 ジェンダーが入り交じり、ちょっと変わった組み合わせで物語が展開。表題作は、教員採用試験に落ちた青年と、父親の恋の相手であり教え子である女子高生という組み合わせで送られるお話。その他では、家を出て男から女になった主人公のもとに、ある日父親が訪ねてくるという「父と息子とブリ大根」。彼女にフラれたばかりの男が、大晦日の夜におっちょこちょいで彼氏との待ち合わせに遅れそうな女の子と出会うという「待ち人キタリ」。社会人の主人公が、中学生の娘の同級生で、デートクラブでバイトする少女となぜか夏祭りに行くことになる「娘の年頃の娘」。姉に変装した弟が、出会い系で出会った男とデートをする「とりかへばやで出会いましょう」。保健室のお色気教師と、ガリ勉メガネ男子のちょっとしたかけあいを描いた「原色メガネ男子標本」。
 
 収録作のうち、二つが女装・ないしニューハーフが登場。正統派の男女を描いたのは、「待ち人キタリ」ぐらいでしょうか。けれどもそれが、面白い。「ちょっと変」が、その語りの上手さから、しっかりと現実の中に組み込まれ、中を浮いたような物語になっていない。物語に投入される非現実的要素が、そのまま物語の魅力となって迫ってくるのです。それこそが、中村明日美子先生の真骨頂。そこから描き出す感情は、本当に普遍的で身近で、誰もが持っているようなもの。とりあえず読んでほしいです、はい。
 
 キャラクターがそれぞれ魅力的なのですが、特に男と女という構図で行くとしたら、圧倒的に女性たちが魅力的。物語の視点が、どちらにあるかとか関係なく。みんなどこか傷を心に持っていて、けれどもそれを隠すかのように、つとめて明るく、奔放に振る舞う。そんな彼女たちが、それぞれの作品の魅力を底支えしているように、私には映ります。そしてこの表紙。ええ、きっと色々な想像をしてこの作品を手に取るでしょう。そして読んでわかる、真実。私達もまた、父親やあの青年と同じように、してやられるわけです。そんな遊び心がある表紙も素敵な、「片恋の日記少女」オススメです。 


【男性へのガイド】
→男性視点の物語あり、女性が喜ぶような恋愛一本というわけでもなく、非常によみやすい作品かと。
【私的お薦め度:☆☆☆☆☆】
→いつかレビューしなくては、と思っていたのですが、このタイミングでできるとは。全力でオススメでございます。秀逸な読切り集。


■作者他作品レビュー
*新作レビュー* 中村明日美子「曲がり角のボクら」
中村明日美子「ダブルミンツ」

中村明日美子「同級生」


作品DATA
■著者:中村明日美子
■出版社:白泉社
■レーベル:花とゆめコミックススペシャル
■掲載誌:メロディ、未発表作品
■全1巻
■価格:619円+税


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Tag [続刊レビュー] 2009.11.08
作品紹介はこちら→麻生みこと「そこをなんとか」


07230497.jpg麻生みこと「そこをなんとか」(3)


今日もお茶が旨いですねぇ
久保田さん



■3巻発売です。
 相変わらずの下っ端生活を続ける楽子は、同期会で弁護士200人越えの大事務所に入った赤星と再会する。楽子の月給分の家賃の部屋に住む赤星の話を聞き、格差に愕然とするも、赤星はなにやら楽子が気になるようで…。しかし当の楽子は東海林の御用聞きに大忙し。ご近所ペットトラブルに始まり、不倫相手との婚約不履行に怒りを爆発させる依頼者に頭を悩ませ、さらには事務員の久保田さんにもトラブルが…!?

 案件を脱力しつつも解決していく様子は、1~2巻から相変わらず。いいですね、面倒くさそうな案件が来た際は、「私が解決してあげなくちゃ!」とはならず、正直に「うわー」と思ったり。でも受けたら受けたで段々と本気になり、気がつけば感動と笑いを…という構図が。そんな相変わらずの軽妙さを保ったまま、3巻では人間関係に深みと広がりが出てきました。


~新キャラ・赤星~
 まずは楽子の同期で、大手事務所に所属するエリート・赤星。常にエリートであった彼は、なぜか楽子に辛口。ムカつく…けど気になる。そんなラインから、一気に口説きの対象になっていきます。しかしやや鈍感で、赤星にまったく興味のない楽子は、赤星からのアプローチをことごとくスルー。楽子の興味は、もっぱら東海林さんに向いております。そうなってくると俄然気になるのが、東海林さんの同期で大手事務所(赤星と同じところ)に所属する美人弁護士・中道さんとの関係。何かありそうで、なかなかわからない。とりあえず気になることはチェックしておこうと、赤星を使って探りを入れるのですが、わからない。またそうやっていいように使われている赤星がまたカワイイのなんの。そんな4人が一堂に会する9話目は、それぞれの思惑が交錯し、ものすごく面白い展開になってます。やっぱりこの中だと東海林さんが一枚上手なんだよなぁ。


~3巻は菅原さんがスゴかった~
 さて、そんな素敵な新キャラ・赤星が登場した3巻ですが、3巻で一番輝きを放ったのは、新キャラでもヒロインでも東海林さんでもなく、古参の脇役・菅原さんでした。

 まずは12話目、不倫相手の婚約不履行に怒り心頭の女性からの案件を扱ったお話。不倫相手の、「妻と別れ結婚する」という言葉を信じたその女性は、妊娠したものの認知もしてくれず「堕ろしてくれ」という相手に怒り爆発。感情に任せ「どうにか訴えられないか」と事務所に駆け込んできます。紆余曲折ありつつも、楽子の奮闘で最終的に「こどもを認知してもらう」というラインに落ち着いたこの案件。しかしそこで菅原さんが依頼人に、一見穏やかで、しかしとても重たい言葉をかけます。
 
 「責任を持って育ててください」
 「胎児認知が受理されると
  妊娠12週目以降はもし胎児が死産した場合
  葬儀をしなくてはなりません」


そこをなんとか
 それに対し過剰に反応する依頼人。図星でした。子供が大事だったのではなく、好きな相手に向き合ってもらえない悲しさからの行動。そのことを、菅原さんは見抜いていたのです。それは数多くの案件をこなしてきたから…ではなく、とある人間との過去があったからでした。


~久保田さんとの関係~
 それが明らかになるのは、続く13話目、事務所の唯一の事務員でシングルマザーの久保田さんが、子供の親権を子供の父親争うというお話にて。彼女は学生時代、名家の息子と付き合っていました。やがて妊娠が発覚するも、釣り合いの取れない2人ということで、向こうの両親が大反対。その反動からか、久保田さんは生むことを決意。今に至ります。言ってみれば、不倫ではないものの先の案件の女性と状況は似ています。そんな彼女を救ったのは、久保田さんの当時の先生…菅原さんでした。
 
 教え子のピンチに、さも当然のように助けに入り、全力でサポート。久保田さんは経済的に理由で大学を辞めるものの、菅原さんは今の事務所立ち上げの際に彼女を呼び、その後も様々な面でサポートし続けます。勢いで生んだことの大変さも嬉しさも、身を以て体験している。だからこそのあの発言ですよ。知識でなく、経験から裏打ちされた重みのある言葉…最高です。そして今の久保田さんとの関係を見ても、男女とか師弟とか上司と部下とか、そんな関係は越えた部分で通じ合っていおり、そんなものにはとらわれない、すべてを包み込むような包容力を感じることができます。加えて今は妻に先立たれ独り身という辺も、ポイントアップでございますよ。この色々な意味での安心感と、若干の哀愁。これぞジジイの魅力だ!弁護士コメディではありますが、この「そこをなんとか」の3巻は、間違いなく極上の枯れセン漫画だったと言えます。あー、私もこんなおじさんになりたいなぁー。 


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Tag [オススメ] 2009.10.03
07154080.jpgよしながふみ「大奥」 第1巻


我らは先程の金魚鉢の中の金魚なのよ
何の役にも立たぬ大奥という金魚鉢の中でたた飼われていることが
我々の仕事なのだ



■5巻発売でございまする。
 真っ赤な発疹が全身に広がり、やがて死に至る疫病・赤面疱瘡。瞬く間に全国に広がったその奇病は、なぜか男子のみに発症する。その病が出現して以降、男子の人口は瞬く間に減少。男の子は子種を持つ宝として大切に育てられ、婿入りも裕福な階級のみに許される特権に、そして気がつけば、あらゆる家業が女から女へと受け継がれるようになる。それは武家とて同じこと。将軍職もまた、三代・家光以降女子の継ぐところとなる。唯一の天下人である公方様のみに許される最高の贅沢   それは男子の少ないこの世で、美男3千人を集めたと言われる女人禁制の男の城    大奥。

 各所で賞も獲得し、今更感もある作品ですが、新刊発売ということでレビューいたします。作者はいわずもがなの名手・よしながふみ。もう「よしながふみ」と言っとけばOKみたいな空気すら出来てる気もしますよね。とりあえず漫画好きに「よしながふみ」と言って悪い顔する人はいません。あ、なんか話が逸れました。さてそんな先生の描いた大奥ですが、ポイントは一つだけ、そう、男女逆転ものであるということ。女同士のドロドロの骨肉の争いで人気を博したと言っても過言ではない「大奥」で、敢えての男女逆転。この姿勢だけでもスゴいじゃないですか。しかもそれがもの凄く濃密で面白いってんだから、参ります。一応5巻まで続いていますが、将軍ごとで話が分かれています。吉宗編から始まり、家光編、家綱編、そして綱吉編へ。各時代に生きた将軍、正室・側室たち、そして側近たちの想いが、どれも丁寧に、深く深く描かれます。


大奥
まさに「ここでしか生きていけない」者たちを描いた、ここでしか読めない物語。


 個人的に印象深いのが、家光編。家光編では、将軍職が女子のものに変わるまでの様子が描かれているのですが、大奥に生きる男だけが描かれるわけではないのだな、と感心したというか。なんていうか男女逆転にすることでよしなが先生は、女性が感じる鬱屈感だとか不安・怒りなどを男という像を通してより繊細に、同時に荒々しく描き出そうとしているのかな、と思っていたのですが、なんてことはない、女性将軍からも、男的に生かざるを得ない
女の生き様・心情というものをこれでもかと描き出している。そこからはもうどっぷりはまり込んでしまいました。歴史物とかそういうものではなく、完全なSF。それも人間関係によって、その世界を深く広く見せていくという、特殊なタイプの作品だと言えるんじゃないでしょうか(SF漫画として見た時に)。

 よしなが先生というと、「西洋骨董洋菓子店」や「フラワーオブライフ」、「きのう何食べた?」などから受ける、ややコメディ的なノリの強い作品を描く(もちろん前2者はやや重めのテーマが設定されたりしてましたけど)というイメージが強いのですが、この作品に関してはそういう要素は薄め。とにかく真っ正面から「人間ドラマ」を見せてくれます。もう何描いても、良い作品作っちゃうでしょ。これがよしなが先生の代表作かはわかりませんが、とりあえずよしながふみの神髄は存分に味わうことの出来る一作になっていると思います。なんか魅力をこれっぽっちも伝えきれていないような気もしますが、とにかくオススメでございます、ハイ。


【男性へのガイド】
→これは読める。というか、漫画好きなら読んでおくべき。
【私的お薦め度:☆☆☆☆☆】
→話題的にも、内容的にも、オススメしない要素が見つからない。


作品DATA
■著者:よしながふみ
■出版社:白泉社
■レーベル:JETS COMICS
■掲載誌:メロディ(2004年8月号~連載中)
■既刊5巻
■価格:円+税

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