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Tag [続刊レビュー] 2010.08.25
作品紹介→*新作レビュー* 都戸利津「群青シネマ」
関連作品レビュー→都戸利津「環状白馬線 車掌の英さん」



1102949795_20100825225454.jpg都戸利津「群青シネマ」(2)


そうやって人はね
夢を見るんですよ



■2巻発売。完結しました。
 高校3年の夏、映画の自主制作を意気揚々と進めていた、朝日、たまき、弥方たち。しかし、小さな行き違いから、気持ちがバラバラになり、映画の制作中止の危機!?過労で倒れた朝日、英国行きが決まったたまき、そして実家に戻された弥方…そんな彼らを繋いだのは、たった一人、かけがえのない存在である、水野先生。突然彼らの前に現れた水野先生は、再び3人を映画制作に向かわせた…!


~完結しました~
 2巻で完結ということで、意外とあっさりと終わってしまいました。しかし物語のほうは素晴らしい終わり方。2巻だから、もの足りないということは全くなく、大満足での終了となりました。やはり水野先生はすごい。彼の一言があって以降、バラバラだった3人の心は一つになり、そのままの勢いで突っ走ってしまった。しかも彼は、表立って何かをしたわけではありません。裏で少しだけ、彼らに道を作ってあげて、あとは言葉で、あくまで本人たちが能動的に動けるように言葉をかけてあげる。その言葉は、直接的な、結論となるような言葉ではありません。あくまで彼らのヒントになるような、何気ない『道標』。そしてその言葉に含まれる説得力は、誰の心にも響く普遍的な事実認識。立派なことは言わずに、立派なことをする。こんな大人に恵まれた3人は、本当に幸せです。


~キレイなまとめ~
 最終的には、彼らの映画制作の過程そのものが、シネマになるというまとめ。予想できたといえばできたまとめ方ですが、本格的に取り組んでいたぶん、何か具体的な作品をしっかりと残した上で展開するのではと考えていたので、個人的にはこのまとめ方はしてやられた形。「皆で過ごした思い出が、最高の映画なんだよ」みたいな状況。言葉にすればクサいことも、作品として真っ正面に、そして少しの時代感を盛り込めば、こんなにも爽やかな物語になるのです。これはもう見事と言うほかありません。
 
 さて、ここでもう一度水野先生のお話。彼は朝日を焚き付ける際に…
 
楽しいところ
成功するところだけ
都合のいいところだけを寄せ集めて
思い通りの世界を描く
 
 と伝え、映画作りのヒントを与えました。朝日に伝わったそのメッセージは、「失敗を切り落とし、望むシーンを繋いでいく、まるで映画のよう」という捉え方がなされました。そして映画制作を経て、発表。しかし水野先生率いる大学の面々が選んだのは、「失敗を切り落として望むシーンを繋げた」フィルムではなく、ふざけ失敗しとても良いところばかりとは言えない、NGシーンの寄せ集めとなったフィルムでした。最初はそう伝えておきながらも、最後には失敗もまた良しという着地点。未来視点と、過去回帰での視点の違いとはいえ、その気づきを共に生み出した水野先生は、やっぱりカッコ良過ぎると思うんです。こんな大人になれればいいなぁ。


~逆算して作られてるの?~
 まとめ方と良い、水野先生の言葉の選び方と良い、なんとなく着地点を想定しながら、逆算して作られた作品なのではないかという感じを受けます。とにかく出来上がったときの形がキレイ。それは1巻完結の「環状白馬線 車掌の英さん」でも同じことで、最後の最後で本当の感動を見るという、珍しい作風の持ち主だと言えるでしょう。次の作品も本当に楽しみ。素敵な作品を、どうもありがとうございました!


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Tag [続刊レビュー] 2010.07.18
作品紹介→*新作レビュー*モリエサトシ「白磁」
関連作品紹介→モリエサトシ「ラブ シック」



1102940625.jpgモリエサトシ「白磁」(2)


そうだった
ぼくが好きになったのは
あの純粋で健やかな君



■2巻発売、完結しました。
 病気で光を失った生花の、彷徨って焦点を結ばない瞳…。明春に全てを委ねるようになった生花の白い肌に、全てをぶつけられる快感は、明春の感情の発露であった絵への執着を失わせてしまう。変化する環境。掴んだと思った幸せ。買われると思った自我。人はどうしてこんなに弱いのか、人はどうしてこんなに苦しいのか。運命は、あまりに残酷で…!?


~完結。素晴らしかったです~
 1年以上続刊を待ちわびていた「白磁」が、2巻の発売をもって完結いたしました。完結自体は結構前にしていたことは、モリエ先生のブログで存じていたのですが、単行本発売まで時間がかかった!しかし2巻も素晴らしい内容。読んだときに受けた衝撃を、どのような言葉で表そうか、色々と思案したものの、これはちょっと難しいかな、という結論に。もうね、だれかに伝えようなんて考えず、纏まらない気持ちのワルい文章をダラダラと並べようと思ったわけですよ。


~エロいけど、それだけじゃない~
 そもそも万人受けするような内容ではないですし、物語は終始二人だけの世界で完結しています。それはあまりにも不健全で、少女漫画的にもいかがなものかと思わせるのですが、あまりに無垢で純粋で幼い二人が構築するその世界は、同時にとても美しく、言いようのない力を持って自分を取り込んでくるのです。どちらの視点にも、共感という意味での介入の余地があまりないにも関わらず、その二人の作り出す世界にのめり込んでしまうというのは、あまりない経験で、だからこそこんなに興奮するわけで…。エロティック…だけどああいうエロとは違うのさ!エロい目じゃないほうの目で見たエロってのを、二人の関係の中に、なんとなく垣間見たような気がしました。


白磁2
 こんな、男性向けエロ漫画にありそうなシチュエーション&台詞回しでも、なんだかとても美しく純粋であるように映るから、不思議。


~内面・魅力を象徴する格好~
 物語の終盤にて明春が、「やっぱりぼくの好きな彼女はこれ(セーラー服姿)なんだ」と言っているのですが、これには本当に納得。彼にとっては、セーラーを着た生花こそが、最も彼女の魅力を映し出している姿なのです。
 明春が生花の外見でこだわっている部分といえば、その美しい白い肌。彼女の内面を映し出すようであり、彼女との繋がりを確信できる部分です。そんな白い肌を、最も美しく映えさせることができるのは、やはり他でもないセーラー服。学生という、穢れなき純粋さと若さの象徴(現実とは別として)。濃紺と、透き通るような白の対比。この美しさは、ブレザーなどでは表せません。また、彼女の髪は黒髪ロングで、その肌の白さを映えさせるにはうってつけ。このことは、1巻の冒頭にて語られているのですが、最後にこういった形で反映させてくるとは思っていなかったので、出てきたときは「おお…」と思わず唸ってしまいました。そしてラストも、その姿で締める。さすが、モリエ先生わかってる。


モリエサトシ「白磁」2巻
なーんて、私服姿の生花もかわいらしいわけですが。こちらはこちらで、色みを持った柔らかな印象を与えてくれて素敵です。


 またその純粋さを格好で表しているのは、何も生花だけではありません。明春は、一貫して白シャツを身にまとい、創作活動を行っています。白いシャツもまた、彼の純粋さないし、純粋さに憧れる気持ちを表しているようで、良いですよね。汚してダメになるので、量産型で安い白シャツを…ってことなのかもしれませんけど(笑)


~締め方も、ベタながら素敵でした~
 最後は実にベタでしたが、感動できたので良し。二人だけの世界に固執していた明春が、生花のために恐怖に打ち勝ち外の世界へと足を踏み入れる姿は、更なる物語の広がり(ふたりのこれからが、明るいものになること)を示しているようで、本当に素敵だったと思います。とりあえず、今年の作品の中でも、個人的に5本の指に入るくらいお気に入りの新刊となりました。と言っても、決して万人受けするとは思えないのですが。それでも好きなのだから、私はそれを素直につたえるだけです、はい。
  

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Tag [続刊レビュー] 2010.07.01
作品紹介→*新作レビュー*中村世子「ニブンノワン!王子」



1102916274.jpg中村世子「ニブンノワン!王子」(2)


あの時
鳴っていたのはどっちの音
うるさかったのはどっちの音?



■2巻発売です。
 お姫さまに憧れる平凡な女子高生・月子と、半人半犬な異国の王子・ジン。二人は現在、紆余曲折あって、(仮)婚約中。が、ジンからの突然のキスに、月子の心臓は暴走気味。ジンとのキスを、どう消化して良いかわからず、その時のことを思い出しては、ドキドキして悶絶するのでした。それに対して、何一つ変わったところを見せないジンに、月子は…!?さらに、心乱れる月子の前に、ジンの弟・シビが現れ、お妃候補が他にもいると伝えるが…!?


~ばか、もう知らない~
 ジンからのキスで、取り乱しっぱなしの月子。他のことに集中したくても、キスのことが頭から離れず、赤面ばかりしてしまいます。そんな月子に対し、ジンは平然。そんな彼の態度を見て、月子は苛立ちと絶望を覚えます。そしてとった行動が…


二分ワン2
ジンのバカ
もう知らない



まさかの突き放し。しかも捨て台詞が「ばか」ですからね。何度か書いてますが、出す言葉がなくなった上での、必死さからの汚い言葉って、本当にかわいらしくて素敵なんですよ。まぁこの場合は、自分自身への絶望も少し入っているので、事情は少々異なるのですが。


~それだけじゃないんです~
 しかし子供っぽいばかりではありません。中盤からは、ジンの婚約者として、相応しい人間になろうと、懸命に努力をする月子の姿が見られるようになります。キスひとつでいっぱいいっぱいの女の子が、王子に相応しい妃になれるよう、努力する。しかもただの憧れや背伸びで言っているのではなく、ちゃんと彼の背負う重責を理解した上での行動です。その直前の6話では、こんなモノローグが描かれていました
 
けど
王子様のおヨメさんになるには
好き以上の何かが必要なんだ
いつまでも守られてるだけじゃ
ダメなんだ

 
 そこにあるのは「好き」や「憧れ」を越えた、「覚悟」。ついその直前まで、子供らしい振る舞いをしていた彼女とは、まるで別人のよう。その前後でのギャップから、私は一層彼女に心惹かれるのです。けれども覚悟をしただけで、そう易々としっかりと振る舞えるわけではありません。彼女のジンへのご奉仕は、失敗ばかり。挙げ句頑張りすぎたのか、熱まで出して、逆にジンに介抱されてしまいます。そんな状況に落ち込む月子でしたが、ジンのフォローもあり、二人は再び良き雰囲気に。そしてその後の、月子の言葉がもう本当に可愛くて、ニヤニヤでした…
 

ニブンノワン王子
じゃあ
手ぇ握ってて

 

 ここで子供っぽい感じ!子供っぽい→大人らしく覚悟→とっても子供っぽい。下げて上げて最後にずどんと下げるという、この切り替え。反則も良いところですよ。最後の最後でこういう面を覗かせる月子に、ジンがご執心なのも良くわかります。そして気になるのが、このシーンのあと。手を繫いだまま一緒に眠った二人でしたが、最初のラブ握りから、朝起きたときは普通の握りに変わっているんですよね。これどういうことなんだろうという。眠りの中、無意識で繫ぎ合っていたのか、はたまた手がほどけそうになる度に、ジンが握り直していたのか。真相は定かではありませんが、最後まで一緒に手を繫いで眠るなんて、素敵じゃないですか。中村先生は、「未だに自分で描いている感じがしない。二人の世界すぎるからでしょうか。」とあとがきで書かれているように、とにかくこの二人の間には、誰も割り込めないような雰囲気というのがあるんですよね。そしてそれが目に見える形で現れたのが、例えば今回の手を繫いで眠っているところだったりするのかも。さてさてこれから、さらにどんなニヤニヤな展開を見せてくれるのか、楽しみで仕方ありません。
 
 
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Tag [新作レビュー] [オススメ] [読み切り/短編] 2010.04.22
1102894441.jpg羅川真里茂「朝がまたくるから」


穏やかに…
穏やかであればいいな…と
そう願っています



■読切り3編を収録。それでは1話目に収録されているお話をご紹介。
 和菓子屋で働く鈴が恋したのは、バイク屋で働く青年。自転車がパンクして困っていたところを、彼が助けてくれたのです。会ったその日から、彼のことで頭がいっぱいの鈴は、以降事あるごとに彼の元を尋ねるように。しかし鈴の熱意とは裏腹に、彼の態度はとても素っ気なくて…。しかしそこには、とある理由があったのでした…。
 
 「赤ちゃんと僕」、「しゃにむにGO」の羅川真里茂先生の短編集です。表題作を始め、“罪”をテーマに3編のストーリーが描かれています。表題作「朝がまたくるから」は紹介したので、残りの2編をご紹介しましょう。
 
 2番目に収録されているのは、「半夏生」。ヒロインは、売れない駆け出しのカメラマン。将来が見えず行き詰まっていたある日、同じマンションに住む少年が、しばらく見ない間に驚くほど成長していたことを知ります。そして後日、その姿がなんとなく頭から離れない中、彼と思わぬ形で再会。再会した場所は、ファッションショーの会場。そして彼は、とても美しい女の格好をしていて…というお話。
 
 3番目は「冬霞」。虐待を受け劣悪な環境の家に閉じ込められたまま育った幼い兄妹の前に、ある日見知らぬ男が現れる。他にすがるものもない二人は、差し出された手を掴み、男と共に外の世界へ。彼に連れられ各地を回り、やがて絆が。この3人が行く末は、そしてこの男の正体は…?というお話。


また朝が
テーマは“罪”。文字通りの“罪”もあれば、“罪悪感”という意味での罪もある。


 どれも“罪”がテーマに描かれていますが、全てタイプとしては異なる物語になっています。表題作「朝がまたくるから」は、“罪”と“罰”を真っ正面から描いた作品で、単純な物語というよりかは、幾分か社会的なメッセージが含まれているような印象を受けました。続く「半化粧」は、条例違反という罪は犯しているものの、むしろテーマとしての“罪”は本人の中にある心情的なもので、そこから内面を描き、物語を展開していきます。そしてラストの「冬霞」は、“罪”はあくまでスパイスという位置付けで、核となる部分は罪とは正反対の、本当に切なく優しい感情(味方によっては“罪”というテーマがビシっとハマりますが)。帯にあるように、それぞれタイプは違うものの、どれも「どこまでも切なく、たまらなく優しい」物語たちに仕上っています。
 
 個人的に推したいのは、2話目「半夏生」と3話目「冬霞」。「半夏生」は、見違えるように成長した歳下の男の子に溺れていく女性を描いたお話なのですが、相手役の少年の成長の段階の踏ませ方が本当に絶妙で気持ち良かったです。最初は外面的な成長があって、ストーリーを展開させる契機になり、その後外面と内面のアンバランスさを生かす形で物語を構成し、そして最後に内面的な成長を描きまとめる、その隙のない構成ったらすごいですよ。短編で、一分の無駄もなくこの段階を詰め込めるっていうのは、なかなかできる芸当じゃないと思うんですけどどうでしょ。とりあえず手に取って読んでもらえれば。また女装させた少年に跨がって(=本番)、喘ぐ姿を写真で収めるという、花ゆめらしからぬエロティックなシーンも個人的にツボでした。


冬霞
3話目「冬霞」。こうして寄り添わなくては生きられないときもある。個人的にはイチオシ。


 そしてなんといっても「冬霞」。余計な説明はいらない、ただ「読め」と、それだけです。見知らぬ男が目の前に現れ、彼についていき日本を回るという、前の2話に比べるとややファンタジックな内容なのですが、それを承知で、「だからこそ描ける感動」というものを描いてきています。物語展開は、どちらかというと予想がつかないものではあるのですが、それでも読んでいて王道感を感じてしまうのは、迷いなく整然と描かれているからなんでしょう。読んでいて本当に気持ち良かったです。こういう感覚で物語を読んだのはあまりないですね。物語的には「出来過ぎ」なのかもしれないのですが、描き方に迷いがないぶんむしろそれが心地よさと感動に繋がっているという。いや、完全にやられました。


【男性へのガイド】
→羅川真里茂先生という時点で説明不要な気もします。ただ1,2話目は女性向けの感が強いので、そこだけはご注意を。
【私的お薦め度:☆☆☆☆☆】
→読みはじめたときは「そんなでもないかな…」とか思ってたのですが、2話3話とどんどん引き込まれていきました。“罪”というテーマで描かれてはいるものの、決して暗く汚いとっつきにくいお話とはなっていないので、ご安心を。むしろ「冬霞」なんかは万人にお勧めしたいお話でございますよ。


作品DATA
■著者:羅川真里茂
■出版社:白泉社
■レーベル:花とゆめコミックススペシャル
■掲載誌:別冊花とゆめ,花とゆめplus
■全1巻
■価格:619円+税


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Tag [新作レビュー] [オススメ] 2010.01.21
1102828568.jpg都戸利津「群青シネマ」(1)


だからっ
撮るんだよ映画!!
俺たちで!!
映画作ろう!!



■1961年、夏   。担任だった水野先生が東京の研究室へ行ってしまってから3か月。栄朝日・里見たまき・弥方京一郎の成績優秀仲良し3人組は、受験生だというのに相も変わらず悪戯を繰り返し、一緒に過ごせる最後の夏を全力で楽しんでいた。「大好きだった水野先生を、楽しく驚かしてやろう」そう目論んだ3人が興味を持ったのは、資料室にあった8ミリシネカメラ。これを先生のいる大学の映研がやっている自主制作映画祭に出せば、驚かせられる。そう思いついた3人は、そのシネカメラで映画の自主制作を始めるが…!?

 前作「環状白馬線 車掌の英さん」(→レビュー)がもの凄く素敵なお話で、発売を心待ちにしていた本作。その内容は、1961年の瀬戸内沿いのとある町にある進学校を舞台に繰り広げられる、男子3人の青春物語でした。メインで登場するのは、明るく元気に真っ直ぐに育った・栄朝日、成績はダントツで優秀だが同時にかなりずる賢い・弥方京一郎、そして裕福な家庭に生まれ育ち小説家を夢見る・里見たまき。皆成績は優秀なものの、かなりの悪戯好き。3人でつるんでは何か悪戯をはたらき、その度教師たちから叱られているのでした。そんな3人が信奉しているのが、かつて担任だった水野先生。面白い物事を教えてくれたり、自分たちを驚かせて楽しませてくれた彼が、3人は大好きでしたが、先生はその後東京の研究室へ。そこで彼らは遠く離れた先生に、楽しませてくれたお礼に自分たちもびっくりさせてやろうと、何かできないかと画策しはじめます。そんなとき目に止まったのが、偶然忍び込んだ資料室の8ミリシネカメラ。これを使えば先生を驚かせられる。そう思いついた3人は、先日入賞したたまき小説を脚本にし、映画の自主制作を始めていくのですが、それが思わぬ方向に流れはじめて…というストーリー。


群青シネマ
初めて経験する感動、興奮。どんなに大変で、上手くいかないことがあっても、一気に吹っ飛ぶ。


 3年生で、一緒に過ごせる最後の夏休み。悔いの残らないように、全力で今を楽しみたい。そんな3人が自主制作映画に挑戦。これだけ見ると、爽やか一辺倒の青春物語のように見えますが、それだけではありません。比較的恵まれた家に育った弥方とたまきのふたりは、今だけでなく将来のことも考えており、それが物語に微妙に影響してくるように。弥方には許嫁がいたり、父親のあくどい商売による悪い噂があったりとしがらみが多く、また彼自身も将来の自分の身の振り方をかなり深く考えています。またたまきも、小説家になりたいという夢を抱えるも、声楽家の母にはそのことを伝えられないまま。映画製作と限られた時間・予算という過程を通して、そんな彼らの進路、思惑が徐々に明らかになり、物語は進んでいきます。悔いがないよう全力で楽しみたい、けれど思い通りというわけにはいかない。そんな一生懸命さともどかしさが同居した、この時代、この年齢ならではの物語が描かれています。
 
 8ミリフィルムっていうのは今ではあまり馴染みがないですが、1960年~70年代あたりにかけて一気に隆盛をきわめたようですね。比較的扱いやすいものだったらしいですが、それでもなんの経験もない学生が簡単にいい画を取れるほど甘くはなく、失敗もします。またフィルムは高価ですし、現像代もバカになりません。それでも工夫をしながら良いものを全力で作り上げていく。そういった光景というのは見ていてやっぱり気持ちがよいです。現代ではこれがアニメ制作に変わるんですかね。映画よりも、「空色動画」とかそういった系統の活動の匂いを感じました。

 同じレーベルで全力で青春!というとあきづき空太先生の「青春攻略本」(→レビュー)を思い出しますが、あちらに比べてこちらは地味。また映画製作というひとつの固定されたモチーフで物語が展開されるため、こちらの方がよりストーリー性は強いように感じます。「車掌の英さん」でも、最後に完璧に近い形でしっかりと物語を形作ってきた先生ですし、この作品もかなり期待できるんじゃないでしょうか。続きをよむのが楽しみです。
 

【男性へのガイド】
→男の子視点なので読みやすいと思いますよ。腐サービス的な側面も薄いのではないかと思いますし。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→ちょっと地味かもしれませんが、やっぱり面白さは出してくるんですよね。今どきではない青春ストーリーを堪能したいという方に。


作品DATA
■著者:都戸利津
■出版社:白泉社
■レーベル:花とゆめCOMICS
■掲載誌:別冊花とゆめ(平成21年8月号~連載中)
■既刊1巻
■価格:400円+税

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かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
東村アキコ先生が贈る、美大受験期の自伝漫画。東村アキコ作品らしい勢いの良さだけでなく、急転してのシリアスな締めなど、一冊に笑いと感動が詰め込まれた贅沢な作品。




王国の子
びっけ「王国の子」(1)
レビュー
稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描く“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリー。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある一作。




シリウスと繭
小森羊仔「シリウスと繭」(1)
レビュー
2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




トーチソング・エコロジー
いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(1)
レビュー
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BEARBEAR
池ジュン子「BEAR BEAR」(1)
レビュー
高校生には到底見えないロリっ子ヒロインが好きになったのは、遊園地のクマの着ぐるみ。着ぐるみの中身は同じ学校の子で、結局付き合うことになるものの、その後も変わらず相手はクマの被り物をしているという、シュールな光景が繰り広げられます。なんとも奇妙な相手役、かつなんともかわいらしいヒロインの、初々しいやりとりに終始ニヤニヤ。




かみのすまうところ。
有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。
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